デンマークのヘルス事情 ヘルステック 青少年のメンタルヘルス
青少年のメンタルヘルス向上、テクノロジーを使った改善策の構築と模索。コペンハーゲン市で2023年4月に行われたネットワーク会議のミニレポートです。
世界的で問題とされている心の病や、メンタルヘルスの不調に対する、治療、予防策をデジタルデバイスを使っていかに改善するか、の会議に参加してきました。会議で発表された3つの事例を紹介します。
社会福祉の充実したデンマークでは治療は全額税金で賄われています。が、近年問題なのは医療従事者の不足と、治療待ちの期間が長期化している事。心の病も例外なく、デンマ-ク保健当局の昨年の報告*ではこの10年の間に、若者が精神医療専門医に往診してもらえるまでの待機期間が、平均で22週から38週(約9か月)に伸びていることが問題になっています。
デジタル精神医学の取り組み
こういった背景を受け、2013年から、南デンマークの国立精神医療病院の一部としてデジタル精神医学センターが設立されました。センターでは、デジタルデバイスを使った、精神医療に関する治療、予防、促進プログラムの開発、研究、提供を行っています。
センターは青少年の不安障害の予防、マインドフルネス瞑想のオンラインプログラム、マインドヘルパー、を、また、不安障害の治療用のオンラインプログラム、クールマインド、を開発。オンデマンド、オンラインで提供しています。その中のマインドヘルパーには年間120万もの人が訪れ、クールマインドには年間300人の若者が治療を受けられるようになっています。
研究機関として、効果、エビデンスの構築も活発にされています。
VR(仮想現実空間)の取り組み
民間の企業の参画も活発に行われています。
KHORAという、仮想現実、拡張現実の製作会社では、近年、社会・医療分野での共同プロジェクト、プロダクトに手をいれています。開発例の一例として、仮想現実空間を使って、不安障害、統合失調症、出産後うつ、摂食障害などの病の治療。具体的にはVRの眼鏡を使い、仮想現実の中でトレーニングを行うことにより、実際より安全な環境の中で、患者さんの実生活の不安や悩みの克服を目指しています。医療従事者やリハビリ、社会、児童福祉の専門家のツールとして役立っている例が報告されました。
ソーシャルスペースの取り組み
NPO団体である、ソーシャルスペースでは、自治体と提携して、青少年向けの精神病治療、メンタルヘルスサポートの相談窓口、相談サービス、を1つにまとめた、アプリDiTiを提供しています。手軽にダウンロードできるアプリで、悩んでいる若者自身が、自分に向いたサービスがどこにあるのか、どこに電話すればよいのか、がわかりやすく調べられたり、チャット機能をつかって質問したりすることもできるようになっています。アプリは広報、情報拡散の目的にとどまらず、どの地域に住んでいる、どの年代が、どの時間にどんなサービスにアクセスしたのかの統計を自治体に返し、そのデータを利用して、自治体がプロモーションを行うなど、プロアクティブなデーター利用を自治体へのサービスの1つとして取り組んでいます。
このように、医療でも治療の分野だけでなく、予防の分野においても、さまざまなテクノロジーが活用されていれています。
問題もまだまだありますが、個人的にはこれらの動きは頼もしいし、期待は高いと思っています。引き続き、デンマークの動き、日本の動き、世界の動きを追っていきたいと思います。
写真: Tech & Trivsel - Netværksmøde om mental sundhed - Danish Life Science Clusterより
引用: *Bedre mental sundhed og en styrket indsats til mennesker med psykiske lidelser, 2022, Sundhedsstyrelsen
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