ラーセン ハナコ

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マガジン

  • 北欧に学ぶ健康増進の基本制度:デジタル化から自転車文化まで

    デンマークの福祉制度の基本になる考え方。デジタル化、ウエルビーイング、アートと共創、自転車、街づくりなどのテーマの記事を集めました。

  • デンマークの働き方とウェルビーイング

    働き方のメンタリティ、新しい働き方の探求、共創と協働を後押しするプレゼン法、ファシリテーション術などについて書いています。

  • デンマークの若者とデジタル時代のメンタルケア

    デジタル技術がメンタルヘルスケアに与える影響とその対策。 デンマークの若者が直面するメンタルヘルスの課題や取り組みなどなど。

最近の記事

共創、協働の公共サービスづくり

私の働く健康福祉局、パブリックヘルスセンターでの取り組みの一端を紹介します。他組織との協働でサービスの開発や提供をしていること。公共サービスをつくっていく中で、ユーザ中心の考え方が生きていることを伝えたいと思います。 1. ニコチン予防対策:教育・文化機関との協働 若年層のニコチン予防活動では、パブリックヘルスセンター単独での取り組みにとどまらず、市内の教育機関や文化・スポーツ施設とも協働しています。たとえば、文化・余暇局が管理するスポーツ施設や図書館で、禁煙エリアの設定

    • 市民が創るウエルビーイングな街。

      先日、デンマークの健康都市ネットワーク「Sundby Netværket」が主催するウェビナーに参加しました。このウェビナーのテーマは、ウエルビーイングエコノミーとWHO(世界保健機関)の欧州部が推進している「健康都市」の取り組みとその成功事例でした。都市開発や公共政策の決定において、市民がどのように関与し、その力を発揮できるかについて再考する貴重な機会となりました。 ウェルビーイングエコノミーと市民参加 「ウェルビーイングエコノミー(Wellbeing Economy)

      • 健康デジタルサービスの取り組み

        デンマークではデジタル化が進んでいると前にも書きましたが、健康分野では、どのような政策に後押しされているのか、またどのような具体的例があるのか、を紹介します。 政府、地方自治体連合、地域連合共有のデジタルヘルス戦略 2018-2024年 医療、福祉、健康の業務を行っている地方自治体や地域の指針として、政府と連合団体の策定したデジタルヘルス戦略があります。これによると、2024年までに、全国で安全でつながりのある医療、健康ネットワークを整備することを目指しています。この戦略

        • 働く人の健康、どうはかりますか

          私は自治体職員として、学校や会社での健康とウエルビーイングを支援する部署で働いています。今回は私の職場をはじめ、デンマークの様々な企業や組織での活動の基本となる、健康の評価の仕方について少し書いてみたいと思います。 仕事のパフォーマンス評価 デンマークの職場では、最低年1回、MUS(上司との1対1の評価面談)があります。この面談は、単に仕事のパフォーマンスを評価するだけでなく、従業員のウェルビーイングをチェックする機能も兼ね備えています。デンマーク人は、子供の頃から口頭試

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        • 北欧に学ぶ健康増進の基本制度:デジタル化から自転車文化まで
          7本
        • デンマークの働き方とウェルビーイング
          6本
        • デンマークの若者とデジタル時代のメンタルケア
          3本

        記事

          ファシリテーションの仕事

          今週は、他部署でのチームビルディングの仕事を依頼されました。私はデンマークに来てから、チームビルディング、ファシリテーションのスキルを学んだのですが、自分の考えていることを説明したり、見える化したりすることに長けているデンマーク人の同僚にいつも関心しています。ファシリテーションは、その言語化、視覚化、振り返りのお手伝い。現場からその具体的な内容をレポートします。 ワークショップの概要 8時半から14時までのプログラム。会場は社外。新生の5人のチームで、普段、同じ部門では働

          ファシリテーションの仕事

          デンマークの若者達はどうしてメンタルをやられているのか

          のびのびと育つ環境。一方でのひずみ デンマークの教育といえば、日本に比べて、自由で柔軟。そんな中で育つ若者はストレスや心の病は少ないだろうとイメージすることも多いと思われます。近年、デンマークの教育やパブリックヘルスの現場で問題視されている若者の心の不調について、調査や個人の経験を交えて、紹介します。 統計でみる若者の心の不調 デンマークでは、若年層のメンタルヘルスの悪化が問題視されています。 4年に1度行われる全国的な健康調査、デンマーク国家保健委員会の2021年の結

          デンマークの若者達はどうしてメンタルをやられているのか

          日本×デンマーク お仕事手帳    働き方について

          最近、日本のメディアを見ていると、働き方改革の話し合いがかなり定着してきたと感じています。その反面、実際の政策はうまく機能していないようにも思えます。私自身がデンマークと日本の両方で企業や組織の一員であった&ある経験から、働き方について今の職場を例に少し考えてみたいと思います。 デンマークで機能している施策 デンマークで働いていて、基本的な制度がきちんと機能して、個人の時間や家族の時間に、仕事を持ち出ししすぎない、働きすぎない自動制御になっていると感じることが多々あります

          日本×デンマーク お仕事手帳    働き方について

          日本×デンマーク お仕事手帳 その3

          デンマーク式プレゼンの仕方最近仕事で関わっているプロジェクトの1つにデンマークの小学生、中学生に向けた健康調査があります。ここのところ、その結果の概要を伝えに、まったく知らない他の局や課、団体に招かれ発表する、という業務を引き受けています。45分や60分のプレゼンの時間を与えられた時、どうするか。デンマークの職場で求められるプレゼンは日本でのプレゼンともちょっと異なる気がしていて、おもしろいので、ここにまとめてみました。 パワポ1ページにつき1つのメッセージ プレゼンの黄

          日本×デンマーク お仕事手帳 その3

          自治体から市民に向けてのウェビナー

          デジタルポストへの手紙 デンマークでは、近年、若年層での電子タバコの使用が急増しています。 中学校3年生での2023年秋に行われたコペンハーゲン市の調査でも、ニコチンの含まれる電子タバコの利用がタバコの利用を上回る結果が出ました。 これを受けて、コペンハーゲン市在住の12歳から17歳までの子供を持つ保護者全員約36000人宛に、健康福祉担当市長から、注意を喚起する手紙をデジタルポスト(注:公的機関と市民をつなぐ通信プラットフォーム。15歳以上の国民の94%が利用)に送る、

          自治体から市民に向けてのウェビナー

          2023年NOTEで学んだこと

          今年も残すところあと3日。私は2023年5月から毎月1回のペースでノートで記事を書き始めました。本来この場で記事を書こうと思った目的とを照らし合わせてみて、この8か月間どうだったのかちょっと振り返ってみたいと思います。 自分の仕事で興味のあることを絞り込んでいこう。 デンマークでの職場や職域で起こっている些細な出来事を、日本語のフィルターに通したら、自分のできることや深めたい分野が明確になるのではないか、という思いでノートを始めました。実際、職場で話し合われている様々なテ

          2023年NOTEで学んだこと

          自転車大好き コペンハーゲン市

          日常感覚の自転車 コペンハーゲン市では自転車での移動が大変普及しています。市内の主要道路および脇道まで自転車専用レーンが完全に整備されている状態。自転車に乗りなれてさえいれば、何処も自転車で行けてしまい、日々、住民ととして便利さを実感しています。デンマークの地形ならではの山坂がほぼない、そしてコペンハーゲン市ならではの市内が小さい(約90㎢)ことを利用した、大変理にかなった移動法だと前から思ってはいたのですが、今回は市を挙げての本格的な取り組みの一面をご紹介します。 自転

          自転車大好き コペンハーゲン市

          芸術。文化。健康増進

          職場を通じて、音楽演奏や絵画鑑賞など、芸術、文化的な活動が、健康増進の起爆剤になるといった内容のカンファレンスに参加してきました。自治体のネットワーク団体主催で、予防、健康増進、メンタルヘルス、ウエルビーイングといった領域で活動している自治体職員や、研究者が集合し、実際の活動報告や研究結果が発表されました。自治体事業の立ち上げから運営まで、住民との共創プロセスを取り入れる、あるいは取り入れようと努力する、ことが盛んなデンマーク。今回の発表でも、健康事業分野の中で、このプロセス

          芸術。文化。健康増進

          デジタル教育事情

          デンマークは世界で最もデジタル化が進んでいるといわれています。今回はその裏側にある、とくに若年層のメンタルヘルスへの影響とその対策について、コペンハーゲン市の活動を主にレポートします。 デジタル化の背景と実績国連から2022年に出された、各国のデジタル化の度合いを比較したレポートでは、デンマークはフィンランドに次ぐ1番目の席。日本はちなみに14番目。そしてデンマーク政府の2022年によるデジタル化推進政策提言書によると、ソーシャルメディアの使用からデジタルディバイスまでを批

          デジタル教育事情

          日本×デンマーク お仕事手帳 

          心理的安全性についてもう、かったるい と、言っていたのは元日本の会社の上司。彼女の会社の採用現場では、職場の心理的安定性を指標に、企業の懐の大きさを測ってきたり、会議の中では、組織に心理的安定性がないから、大事な意見の交換ができないと部下に言われたり、と、このワードが足かせになる感じることが多いらしい。 言葉の一人あるき? 言葉の流行りは両国に共通しているらしい。日本の本屋でも、タイトル文字を大きくみたし、デンマークの職場でも、このテーマが主題となった講演会などに行って

          日本×デンマーク お仕事手帳 

          日本×デンマーク お仕事手帳

          働く人のメンタリティの違い 日本とデンマークでの働き方の違い。どちらがいいというわけではないのですが、普段から面白いと思っていることを、自分の経験からまとめてみました。 上手くいかない時、責任はどこにあるのか。 私の日本の経験では、仕事がうまく回らないと、その原因を自分、同僚、チームの能力や頑張りの足りなさに求める風潮を感じながら仕事していました。それはそれで、自分やチームの目標、向上意識に繋がったり、とても具体的な改善事項の洗い出しに繋がったりしていました。一方、デンマ

          日本×デンマーク お仕事手帳

          北欧式ウエルビーイング コペンハーゲン市での取り組み

          自治体で健康増進や予防医療の政策、事業の話し合いをするとき、キーワードになっている言葉がいくつかあって、ウエルビーイングもその一つです。国、自治体などの共同体レベル、職場や学校などの組織レベル、個人レベル、取り組み方はいろいろな切り口で話すことができるのですが、今回は私の職場、コペンハーゲン市を1つの職場と見たときに、実践されている取り組みと、職員としての私の考えをレポートします。 ウエルビーイングとは何か。 WHO(世界保健機構)の2021年の定義によると、ウエルビーイ

          北欧式ウエルビーイング コペンハーゲン市での取り組み