繰り返す「困った行動」に困ったら <ABAで発達支援>
こんにちは。公認心理師・臨床心理士の江原です。
何度怒られても繰り返す、お子さんの困った行動。
「毎回泣いて嫌な思いしてるはずなのになんで続けるの?」
そんな風に思うこと,ありませんか?
今回はそういった状況を引き起こす、良くあるパターンとその対応概要を解説します。
◎困った行動が繰り返される「あるあるパターン」5選
今回ご紹介する「あるあるパターン」は以下の4つ。
①注意や説教を本人は、「注目された」「関わってもらえた」「退屈な話を中断できた」みたいに捉えている
②怒られれば後悔はするけど、やってる時の楽しさ、ワクワクが魅力的過ぎる
③怒られても,他にどうしたら良いかわからない
④頭ではどうすべきか分かるが、できる気がしない
(⑤やっている自覚・記憶がない)←今回は説明省略
以下,それぞれを解説していきます(⑤は今回は省略)。なお,全部読むとそれなりに長いので,気になるところだけご覧いただく形でも大丈夫です。
【①注意や説教を本人は、「注目された」「関わってもらえた」「退屈な話を中断できた」みたいに捉えている】
いわゆる「注意引き」や、本人なりのコミュニケーション開始のきっかけになっているパターンです。
これへの対応の基本は以下の記事にまとめた「こっちの水は甘いぞ作戦」
https://note.mu/cp_ehara/n/n1b00f83de467
要は不適切な行動はサラッと対応して深追いせず、代わりに,まだマシな行動には丁寧に対応したり褒めたりする,といったものです。
例えば食事の準備中いつもワーワー言ってしがみついてくるお子さんを考えてみましょう。
叱ってみたり,無視してみたり色々試したけれどよくならない。なんなら,「無視を試した時はむしろひどくなった(その理由と対策は上記記事の中で少し解説しています)」なんてことも多いかもしれません。
そういった場合,例えばまた今日も「ねぇねぇねぇ」と言いながら足にぶら下がってきたならどうしましょう?
一つの方法としては,それ自体はあまり相手にしない一方で,突然「これちょっと持っててくれる?」などごく簡単なお手伝いを投げかけて、やってくれたらそれに感謝を伝えたり大げさにリアクションしたりする,なんて方法があります。
もちろん,しばらくするとすぐに同じようなことをするかもしれませんが,基本は同じ対応で,何か他のモアベターな活動に促してみます。違うお手伝いでもいいですし,無意味に料理工程のメモを取らせてみたりとかでもいいでしょう。
とはいえ,色々声掛けしてみても,喜んでやってくれるものもあれば無視してワーワー言い続けてるものもあるかもしれません。その場合はワーワーは相手にせず,またしばらくしたら(少なくとも5秒くらいは間をあけてから)他の声掛けをします。
この,「こっちの水は甘いぞ作戦」は,これをやればその日に一発解決,なわけではありませんが,この路線を続けていくことで徐々に,好ましくない形での注意引きの回数が減る可能性は大です。なにより,ただ無視したり叱ったりするのと違って,お子さんがパニックになるなどの「副作用」が少ない,というメリットがあります。
【②怒られれば後悔はするけど、やってる時の楽しさ、ワクワクが魅力的過ぎる】
例えば水イタズラなどで、あとあと怒られて嫌な思いもしてるけれど、やっている瞬間の楽しさがとても魅力的でやめられない、というパターン。特に自閉的な傾向や知的な遅れがあったりすると陥りがちなパターンかもしれません。
②のパターンへの対応方法の詳細については、話し始めると長くなるので簡単に概要だけ説明しておきましょう。詳細は別の機会とさせてください。「早く知りたい」という方がいればコメント等にてお知らせください。
なお,対応方針はやる内容の危険さや執着の強さによっても変わります。とりあえず,あまりヘビーなものでなければポイントは以下の通り。
①最低限のルールを設定する
例:どうしてもやる時は外の水道。室内のはだめ。
②回数や時間を設定する
例:10回まで。あと○分。あと○回。
③十分に予告する(多すぎ,少なすぎに注意)
例:「10回までだよー」「あと5回ねー。4,3,2,1」
④決めたルールや予告をしたら,あとはそれに則って有言実行
例:③の予告を十分やって,決めた回数が終わったらちゃんと止めきる。「もうおしまいだよー」と言うだけで結局ダラダラとやれてしまうと逆効果。
(参考:「叱り方のコツ」https://note.com/cp_ehara/n/n63c760d4246c)
⑤普段は禁止。何か課題などを頑張ったときのご褒美として活用
例:「苦手なお集まりなど頑張ったら,(①②のルールの範囲で)一緒にやろうね」とする。
【③怒られても,他にどうしたら良いかわからない】
自閉傾向や全般的な遅れのあるお子さんでよくあるパターン。
「なぜしてはいけないか」のような【ダメな理由】は何度も示される一方で、本人が「これなら出来そう」と思える代案、つまり【何ならOKかの具体的な提案】が十分に伝えられていない可能性があります。
特に発達特性に凹凸や遅れのある子でかつ低年齢の時期などでは、「なぜやってはいけないか」を理解させることばかり豊かにしてもあまり良くならないことがあります。
むしろ、「どうしたらよかったかな?」というのを一緒に考えたりロールプレイで練習したり出来る方が現実的でしょう。
例えばお友達と遊びたいけど声掛けがうまくできなくて押したりぶったりしてしまう幼児さんでは,なぜ押してはいけないかなどをどれだけ丁寧に説明してもあまり改善しません。むしろ肩をトントンするのはどうか,などをお子さんと一緒に作戦会議して,本人も乗り気なやつを先生が友達役になったりして一緒に練習してみる,なんてのが良いかもしれません。
もう少し年齢が上がってくると,気持ちが上手く言えずに物や人にあたってしまう,などもこのパターン③になっているものがよくあります。ただ,こちらは一朝一夕でどうにかなることばかりではないかもしれません。
また,本人の成長を待つ部分も大きくなります。私達にできることは,本人の話を聞きながら,暴れるという行為で伝えたかった本当の気持ちを少しずつ言葉に置き換える手助けなどかな,と思っています。
【④頭ではどうすべきか分かるが,できる気がしない】
③と違って、ダメな理由だけじゃなく「そういう時はこうしたら良いよ」という代替案も示されているものの、そのハードルが高すぎるので結局できない、というパターン。
例えばADHD傾向があり衝動性が高い低年齢のお子さんに「言葉で言えば良いんだよ」と言い続けている、なんてのがよくある例かと思います
他にもよくある高すぎなハードルの例として,「そういう時は先生を呼ぶ」「わからない時は分からないっていう」などがあります。
もちろん,これらの対応そのものが悪いという話ではありません。あくまで本人にとって,それが現実的にできそうなものであればその提案はGoodですし,そうでなければもう少し別の方法を考える必要がある,ということです。
ちなみに,先程の衝動性が高い低年齢の子の例でいうと,ADHDの特性を考えると,なにか小手先の関わり方でトラブルをゼロにするのは残念ながらなかなか難しい部分があります。どうしても本人の脳の成長を待つ必要が出てきたり,必要に応じてお薬を活用したりすることを検討することも良い選択となるでしょう。
その上で,例えば,「深呼吸(しんこきゅう)」と書いたカードに好きなキャラクターの画像なども貼ったものを本人や先生が持っておいて,トラブルになりそうな場面ではそれを見て一旦落ち着く練習をする,なんてのはよく使います。
もちろん,別室でクールダウンする,雑巾や布など投げても危なくないものを決められたところに投げつける,新聞を破るなどして落ち着く,なんていうのもありかもしれません。
要は,ADHDのお子さんが気合や我慢,やる気だけで衝動性を完全コントロールするのは極めて困難なので,まずは自分や周りに危害がなるべく及ばないように「まだマシ」なクールダウン法に誘導するのです。
その上で,脳の発達とともに多動・衝動が少し落ち着く子が出てくる小学校高学年から中学生以降などには,徐々にそうした方略も不要になるように練習していけると良いかなと思います。
ちなみに,ADHDのお子さんで最も大事なのはいかに【怒られの悪循環】から抜け出させるかということです。これはいわゆる二次障害を予防する上での最重要課題と言えます。
ADHDのお子さんはどうしても怒られてばかりになりがちなので,以前の記事,「平和なときこそ花束を」作戦なども活用しながら,いいところ見つけをしたり,問題とされている場面についても,本人と一緒に取り組むような枠組みを整えて周囲が自然と褒めやすい環境設定を整えたりすることが重要です。
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以上、今回は「何度叱られてもやまない困った行動のあるあるパターン5選でした。
②の対応や⑤は省略しちゃいましたが、とっても大事なテーマなので、知りたい方が多そうであればなるべく早く書きますのでお知らせくださいー!
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