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nowhereman220
私はひとり春を待つ 創作400字
ああ、また降ってきたね。
大きくて重いぼた雪が。
寒さに堪える私のすぐ側で君は怯えたようにうずくまって震えている。
そんな私たちを雪が襲う。
痛いほどに冷たい雪がどんどんと体温を奪っていく。
雪を凌げる所なんてどこにもなくて、安心だってどこにもなくて逃げられない私たちはただ耐え忍ぶ。
そうしているとまた、長く苦しい夜が来る。
一寸先は闇で君の姿が見えなくって。
君の声も遠のいていって。
夜が苦しい。
寒さが痛い。
ぼた雪は粉雪に変わってはらはらと私を包む。
もがいてももがいても抜け出せなくて、むしろ深く沈んでいく。
雪に呑まれていく。
呼吸が苦しい。肺が痛い。
君はどこ?
口を開けると次から次へと雪がなだれこんできて、声を上げることすらできない。
ただ冷たい暗闇でもがき続けるだけ。
疲れ果て冷えた全身の痛みが痺れに変わった頃、また夜が明ける。
私を包んでいた雪が溶ける。
でも、君がいない。
そっか。君の冬は明けたんだね。
君には春が来たんだ。
そっか。私をおいていったんだね。
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