読みたかった児童書『サンタクロースっているんでしょうか?』 子どもの質問に答えたある新聞社のお話とその続編を読んで。
以前から読んでみたかったクリスマス関連の児童書。
1897年ニューヨーク・サン新聞社に手紙を送った8才の少女と、9月21日の社説で愛情を込めて返事した記者についての2冊。
『サンタクロースっているんでしょうか?』
子どもの質問にこたえて
訳/中村妙子
絵/東 逸子
発行所/偕成社(1977年)
『サンタの友だち バージニア』
「サンタはいるの?」と新聞社へ投書した少女
著/村上ゆみ子
絵/東 逸子
発行所/偕成社(1994年)
永遠の問い「サンタさんって本当にいるの?」
子どもなら誰でも通るふしぎであり、
親にとっては正直聞かれたくない質問ですね。
バージニアがこの手紙を書いたのは8才、日本でいうと小学2,3年生…兄姉がいる学校のお友だちから現実的なことを吹き込まれ、衝撃を受けるお年頃。
新聞社に質問してみたら?と言ったパパさんに「上手に逃げましたね!」と思っていたけれど、続編『サンタの友だちバージニア』に、テレビもラジオもなかった頃だと書かれていたのを読んで、そうだった!まだ蒸気機関車や馬車が走っていた時代、NYにビルが立ち並んでいなかったのどかな時代を想像して、絵本『ちいさいおうち』の情景を思い出しました。
そして新聞社にお手紙を出すということが、NY警察の検視官・外科医だったバージニアのお父さんの、誠実で子どものためとなる答え方だったんだと分かりました。
そのおかげでバージニアが書いたお手紙はサン新聞社に届き、世の中の子どもたちの疑問をも解決することになりました。社説として書いた記者さんの丁寧で素敵な答えは、『サンタクロースって、本当にいるんでしょうか?』で知ることが出来ます。
この社説は毎年クリスマス前になると掲載され、当時アメリカで知らない人は居なかったとか。
「そう、バージニア、」と言われると、
合言葉のように
「サンタクロースはいるのです」
というフレーズが口から出てくるくらい、みんな知っていたんですね〜。
真心と愛がいっぱい詰まった文章を読むと、その後たくさんの子どもたち親たちに受け継がれたのが納得します。
お返事を書いた記者とは
『サンタの友だちバージニア』を読むと、当時社説を専門に書いていたのは、チャーチさんという58才の男性だということが分かりました。子育て経験のある女性かなと思っていたので、ビックリです。
初めは社説にこんな子供の手紙を取り上げるなんて…と渋い顔をしていたことや、それでも真摯に向きあってこの返事を書いた様子が伺えて、チャーチさんの書いたお返事が、また更に愛と思いやりに満ちたものだと感じました。
サンタクロースがいないと言ったバージニアの友だちのことを、目に見えるものしか信じようとしない疑りやさんなのでしょうと言い、でもサンタクロースを見た人は誰もいないと真実を告げた上で、目に見えない世界のこと見ることが出来ない不思議を子どもたちに想像させ、信じる心や夢見る気持ちが、この世の中や生活を楽しいものにしている大切なこととして丁寧に伝えました。
でもこの有名な文章を書いた人が誰かということは、実は後になって(チャーチさんが亡くなってから)知られることになったそうです。
バージニアのその後
本を読むのが好きだったバージニアは勉強を続けたいと、その頃女性は結婚して家庭に入るのが一般的だった時代に大学へ進みました。その後小学校の教師になり、結婚して一人娘を授かりましたが夫と別れ、NYの実家に戻り更に修士号博士号まで取得し、教頭や校長を歴任しながら69才まで小学校の先生として働いたそうです。
この『サンタの友だちバージニア』は、娘の7番目の子ども(バージニアの孫娘)であるパットさんが息子ニコラスに語りかける形でバージニアの81年間のことが書かれています。
あの手紙によって、サンタさんを信じる心を持ち続けた少女が、その生涯を通じて子どもたちに愛と思いやりをもってその心を伝えていったなんて素敵なお話です。
子どもの心を愛と思いやりで包んだ新聞社のチャーチさんだけでなく、バージニアにもその心が受け継がれていく、そして年月が経った異国の地でも読み継がれている。心あたたまるお話だからだと思うのですが、きっと本質だからでもあるのでしょうね。
目に見えることだけを信じるのではなく、目に見えないものも同時にあるということを知っているだけで、人生は豊かになる。大人になってもその心は大事にしたい、忘れたくないステキなお話でした。