オカルトにおける観測問題
人類の伝統的な自然観である有機体論的自然観における観測上のルールを明確化しました。本稿の内容は以下の記事に加筆したものです。
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有機体論的自然観における観測上の規定
有機体論的自然の内部に観測者自身が含まれる場合、観測者は観測対象と不可分な一体の存在としてとらえられます。これは、観測者がただ外から自然を眺めるのではなく、自然そのものの一部としてそこに在るため、観測の意味が根本的に変わってきます。以下にその影響を説明します。宗教・哲学上におけるアニミズムの融即律、神秘的合一、無我、悟り、無為自然、純粋経験の境地なども以下のプロセスによってもたらされると考えられます。
1. 主観と客観の区別の曖昧化
観測者が観測対象の一部として存在すると、主観(観測者の視点)と客観(観測対象)が明確には分けられなくなります。観測行為そのものが観測者に影響を与え、逆に観測者の存在や意識が観測対象に影響をおよぼすため、観測と被観測が相互に絡み合った一体性が生じます。観測が観測者と観測対象との相互依存的な作用として成立します。
2. 観測の相対化
有機的自然では、観測者は観測対象と同じくその一部であり、絶対的な観測視点が存在しないため、観測結果は観測者の立場や視点に依存します。このため、観測の結果や理解は観測者が置かれた位置や条件に依存する相対的なものとなります。観測者はひとつの有機的なシステムとして、関係性のなかで対象を理解し、またみずからもその理解の枠組みに影響されることになります。
3. 全体性の理解の必要性
観測者が自然内部の一要素である場合、全体性の視点が不可欠です。観測者と観測対象、またその関係性を全体として見ることで、初めて意味のある観測や理解が可能になります。特定の対象だけに着目する部分的な視点では不十分であり、観測者はつねに自身と自然全体をひとつのシステムとしてとらえる必要があります。これにより、観測者はみずからの行動が環境におよぼす影響や、環境が自己に与える影響を、全体のなかで理解することになります。
4. フィードバックと適応の発生
観測者が有機的自然の内部に含まれる場合、その存在自体が自然環境の一部として影響をおよぼし、同時にその環境からフィードバックを受けます。このフィードバックによって、観測者は自然環境との相互作用を通じて適応的に変化します。観測者が観測を重ねるほど、その観測の結果がふたたび観測者に影響し、自己や環境を変容させる循環的なプロセスが生じます。
このように、有機的自然の内部に観測者が含まれることで、観測者は観測対象と切り離された存在ではなくなり、観測そのものが自然との相互作用に基づく、自己変容的で循環的なプロセスとして機能します。これは、観測が単なる「対象の理解」ではなく、「観測者自身を含む全体の理解」へと拡張されることを意味します。