ショートショート1『晩年を知る』
40歳になった。
私たちはとある小学校に集められて、その時を待ちながら自由に過ごしていた。
私は小学4年生の頃に転校してきた、江藤みき子ちゃんと一緒に「2年2組」の教室で、小さな椅子に座り、小さな机一つに向かい合って談話していた。
実に25年振りの再会である。
「私たちの晩年って、どうなるんだろうね。」
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「ええ!マジかよ!」
驚く声は男性だった。
同じく男性に話し掛けられていた。
「4月21日の方ですよね。あなたは害虫駆除の業者になります。」
「うおぉーー!!俺、虫大嫌いなのに!!!」
「今の仕事クビにでもなるのかな。」
私はみき子ちゃんにコソっと耳打ちした。
「ショックだよね、ちょっとあっちに行ってみようか。」
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「お~い、晴香~!2月12日生まれ!あんたはロコっていう名前の犬を飼ってるけど、それが娘ば産む。名前はナスエ。なしてナスエかって?再婚するからよ。そう、ワシと。え?あんたは初婚よ。ワシ?ワシは茄子農家!だからナスエって名前にするの!」
女性は信じられない、という顔で、おじいさんの前に立ち尽くしていた。
「わお、未来から結婚相手が来るとは驚きだね。」
40歳になると、私たちは未来から来たという人たちに晩年を告げられる。
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みき子ちゃんと渡り廊下で過ごしていると、女性二人がやってきた。
「あなた5月4日の方かしら?」
私たちは違います、と答えると、
「どこにいるのかしら。早く私の美のノウハウを教えないと。」
「きっとすぐ見つかりますよ。」
美容家とその秘書らしい。まだ未来でも出会えていないのだろうか。
ふたりはパタパタと廊下を過ぎて行った。
「6月13日の方ですか?」
遂にみき子が声を掛けられた。
「あなたはあそこに貼ってあるコンクールで賞を取ります。」
男性は壁に貼ってあるポスターを指さす。
ポスターには、『めざせデビュー!熟年バンドコンテスト』と大きく書かれていた。
「みき子ちゃんすごい!」
「きゃあ!私、楽器なんて弾いたことないよ!?」
「これから何か練習するんだよ!」
「ギター?ベース?ドラムかなぁ!?」
彼女はとても喜んでいた。
「7月26日の人ぉ~!」
「はい!」
「はい!」
自分の誕生日が呼ばれて返事をすると、近くにいた女性も返事をして小さく手を挙げていた。
「あぁ~、あなたじゃない!え!わ~!!あなたあなた!」
白ギャルだった。
「え、ヤバ~い!!」
白ギャル2人組は、私の顔を見て、ヤバいヤバいと歓喜の声を上げている。
「あなたの晩年わぁ~!」
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目覚ましが鳴った。
… 夢だったのか。
私は、主人とふたりで仲睦まじく暮らしている。
私の晩年は、白ギャルに関係あるのだろうか。
主人にこの話をすると、「忘れないうちに文章に残しておけば?流行るかも。」と言われ、覚えているうちにノートに記した次第である。
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世にも奇妙な夢の物語 『晩年を知る』
実在の人物等とは一切関係ありません。
2024.08.08