微うつとは

 絵本作家ヨシタケシンスケさんは「微うつ」歴50年とか。自分の気分の上下を自覚しているので、うつ気分を飼い慣らして生きてきたという。けれど、今年春に初めて心療内科に駆け込んだそう。
 その兆候は昨年からあったという。

 「昨年、ひとりになった途端に、理由なく落ち込みのスイッチが入るようになりました。  例えば、息子を塾に迎えに行く車のなかで、急に涙がこぼれる。疲れているとか、イヤなことがあったとか、食べ過ぎて胃もたれしているとか。理由を探しても思い浮かぶことが見あたらないのが、怖かったです。ちょっとしたきっかけで、心がドミノ倒しのようにダメになる」

 わけもなく涙がこぼれるのは、クリニックに行くべきシグナルかもしれない。

 自分も「微うつ」を飼い慣らしているタイプだと思う。ポジティブを演じるのがかったるい。そういうキャラを求めがちな業界にいるのがつらい歴35年。途中までは頑張ったけど、もう「微うつ」を抱えて何年になるか分からない。

 クリニックに行くまでではないが、「微うつ」を抱えて生きる人は実は結構多いのではないかと思う。いい時はいいので、何となく生きられる。だが実は爆弾を抱えている場合もあるだろう。

 ヨシタケさんは希死念慮があったことから、クリニックのドアを叩いた。叩けるだけよかったと本当に思う。

 自死した知り合いがいる。彼らは直前まで普通に仕事をしていた。きっと本人にはクリニックに行くべき、治療に向き合うべき兆候が分かっていたと思うのだ。それでも生き延びる方向へは向かえなかった。実は微うつと自死は近いということを知っておきたい。

 「今やることって、息をしていることが一番大切なのです」とヨシタケさんはいう。本当、それでいいはずなのだ。なのに生産性とか効率とか、そういう圧にやられて死に向かう必要などない。

 そういう渦からは隠れてしまおう。生きようよ。



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