#現代ファンタジー小説
花散る雨、里に恋しなりゆく(1)【短編】
壱. はるうららサクラサクラ
はらはら、と舞う桜は美しいと、人は言う。澄んだ青空の下、日だまりに包まれながら、名残惜しそうに散ってゆく儚い姿こそが、日本の春の情景だと、更に大人は言うだろう。
――咲くのは一瞬、終わるのも一瞬。吹雪いて一息ではなく、雨に打たれ続け……散り逝く。そんな刹那的な花が、今のサクラだ。
古都、京の春。雪解けが終わりを迎え、陽射しが強くなり、冷えきった空気が過ぎ去
花散る雨、里に恋しなりゆく(3)(完)【短編】
終.はなちるさとで永久に
「……また、話しても、ええの?」
――……いや、もう声はかけられない。そもそも、今回は本当に特例だ
「……そ、か」
こうなるかもしれないと、どこかで覚悟はしていたが、どうしようもない名残惜しさ、寂しさがわき上がり、ちりちり、と胸の奥を痛ませる。
――そんな顔をするな。姿は見えないだろうが、私はいつもこの辺りに居る
「……桜の事はもう願わへんけど……話し
花散る雨、里に恋しなりゆく(2)【短編】
弐.あめあられ桜雨
忘れたくなくて、少しでも思い出に関わっていたかったのだ。唯一の理解者がいなくなった現実の受け入れ方、どんな風に心を落ち着かせたらいいのか、今でもわからない……
「おばあちゃん……ほんま急やったんよ。元気そうやったのに…… 病気が見つかった時は、もう手遅れやった……」
自分自身でもずっと操り切れなかった何かが、口にしていく度に暴れ出す。小さな心の中に収まり切らないモノ