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僕たちは
もう何度も同じ夢をみた


テーブルの向こうで
あなたがはにかむ
おしゃべりに夢中で
コーヒーは冷めちゃったね
向こうに見える車のライトが
やさしく部屋の中に入る

また眠る

深い森の奥
湖面の小舟に揺られ
あなたは唇を少し開いて
静かに寝息を立てている
古代からめぐる水が
どこまでも深い青をたたえる

また眠る

雨はまだ降っている
湯気の上る路地を
傘もささずに俯いて歩く
角から猫が現われて
溝にそって走っていく
僕たちはその先を見つめる

また眠る

小高い丘がいくつも連なり
その横腹には隙間なく墓が並ぶ
遠くにはとてつもなく高い塔
僕は無縁墓が好きだなと言うと
あなたは聞こえないふりをした
僕たちは黙って坂を下りる

また眠る

高速に乗ると次々と車を抜いた
あなたは山と僕を交互に見て
トンネルに入るたびに声をあげた
こんなスピードなのに
小さな花を見つけてる
眠いと言っていたくせに

また眠る

あなたからメッセージ
昨夜の月の話
窓辺に来た鳥の話
わがままな猫の話
僕がごはんを頬張ってた話
どんなに好きかって話


僕たちは
同じ夢を何度も見た

くりかえしくりかえし
くりかえしくりかえし

もう夜が来る
夢は来るだろうか





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