
雲と空
公園の駐車場に車を停める
低い太陽で空が輝いている
散歩に連れられた犬の息は白く
飼い主は毛糸の帽子を被っている
時間を潰すサラリーマンが
車を降りて背伸びをしている
たぶん直帰はできないだろうが
帰る場所があるのは良いことだ
辺りが赤く染まり始め
公園を出る車も増える
遠くの雲が美しい
特に空との際のあたり
海から上がった水蒸気と
後ろに拡がる果てしない宇宙
どんなに近く見えても
ほんとうは恐ろしく遠い
幸せよと言った君の言葉が
鋭い棘を孕んでいることに
僕は気づかなかったんだ
馬鹿で有頂天だったから
君が雲で僕が空で
君には物語がある
ざわめきも湿り気もある
僕には乾いた虚しさしかない
それなのに僕は
君を抱え込もうとした
何千年分の光の隔たりを
本気で越えられると思った
空が一瞬だけ青さを増す
端からオレンジ色に侵食され
そのうち闇にも負ける
微塵の慈悲もないその距離
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