【第50回 ミーム演劇教室 稽古日誌 2022.5.24開催】「蝶も確かにいる、リチャードもいる、という異次元の不可解な混淆が見えたときに「世界」を感じて心動かされるんだ」

最近は、前年度のように毎週通し稽古を行なっていくのではなく、ウォークなどの基本動作の訓練を通して作品のクオリティーを高めていくような稽古の仕方をしています。
今回は、ウォークの訓練のときの先生の指摘を主にとりあげていきたいと思います。

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先生(意訳)
「ウォークができていない。寺原はいつも鏡で自分の姿を逐一見てしまっているから、頭部から演技を統括する意識が抜けず、固まっている。それだと「人が歩いている」とは見えない。
鏡を見るとき(稽古場には大きな鏡があります)も「見る」んじゃなくて「見えている」、言い換えれば、普段歩いているときの、自然と視界に風景が入ってくるって意識の状態にしなきゃいつまで経っても観客には演技を管理しているお前が見えるだけだ。

頭が固まっているのが不自然なのは、首より下の動作と連動していないからだ。動作は全身が連動する。
たとえば、肩を上げて歩いているキャラクターを作るとき、「肩を上げる」ことの理由、根本を作らなければキャラクターを作ったことにはならない。ここで言えば、「肩が上がる」ことの理由として考えられるのは、「筋肉の収縮(拘縮)」か、「背骨の変形」だ。たとえばここで背骨の変形で行くなら、右の肩が上がるとき、右側への背骨の変形が考えられる。するとその影響で右側をかばうために左足の使い方が、障碍がない人の使い方と比べて変わってくる。どう変わるかは設定する病変によって異なる。このように、あるひとつの動作は全身と連動し、動作には必ず理由がある。キャラクターを設定するときには、今作っているリチャード三世も同じことだが、その理由をきちんと作ることだ。
そういう工夫、また工夫のできる意識の状態になっているとき、ナチュラル・ウォークへも工夫ができるようになる。お前(=寺原)、O脚に見えるよな。それを見せないようにするには、足をわずかにクロスさせるように出す、とかそういう工夫が必要になってくる。
そういう工夫を施すと決めたら、キャラクターの意思とは別にある種「必要な説明演技」として、意思とは別のところで無意識に管理できるようにする」

上記の点は作品の終盤で行われる、「リチャード三世の姿勢(右側への脊椎側湾症+左足不自由)」+「蝶と出会うストーリーの動作」+「動作とは関係のない『リチャード三世』の台詞発語」を、すべて同時に行うといったときにもつながる指摘でした。
また、「蝶はリチャードの動作とは全く異次元の動作で軽い昆虫としての動作を模写しなければ見えない。蝶も確かにいる、リチャードもいる、という異次元の不可解な混淆が見えたときに「世界」を感じて心動かされるんだ」(意訳)、とも。

演者としてやっていて、すごいところに踏み込んでるなという気がします。それは、上記のような姿勢、動作、言葉がそれぞれ分離したものを全体的に統括する意識の持ちようは、一人格を保とうとしてはできません。そうした、多人格(あるいは無人格)的な状態で動作する人間から見えるものは何なのか? 意識とは何者なのか? 日常私たちも自分の人格の不統一を感じることはままあることのような気がしますが、そうした「人を人たらしめているもの」にメスを入れて、その正体をこのような非常なマルチタスクから浮き上がらせようとしているのではないか、と。

以前にも稽古日誌で書いてはいました(https://note.com/coya2581/n/n928abd6e8b1a)が、今ようやっとその本体を実感し始めています。

2022.5.24
寺原航苹

[ミーム演劇教室]
毎週火曜日15:00〜17:00
新宿ダン⭐︎スタ3
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受講──1,500円/回
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小屋+kop 主宰 寺原航苹
080-8295-8919(寺原携帯)
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