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漫画「チ。地球の運動について」に描かれた金言。〜言葉を扱う資質について〜

『チ。-地球の運動について-』は、魚豊による日本の青年漫画。『ビッグコミックスピリッツ』にて、2020年42・43合併号から連載中。 「15世紀のヨーロッパを舞台に、禁じられた地動説を命がけで研究する人間たちの生き様と信念を描いた」フィクション作品。(Wikipediaから引用)

漫画のシーン

原作4巻、第22話の冒頭のシーンから、セリフだけを引用させていただく。

修道士であり研究者でもあるバデーニと、決闘を代行する代闘士という生業で驚異的な視力の持ち主オクジー2人の会話で、オクジーが文字の読み書きを習いたいと言い出し、バデーニがそれを諫めるシーンだ。

バデーニ:
「ハァ。
君は分かっていないようだな。

大半の人間が言葉を読み書き出来ないのはいいことなんだよ。」

オクジー:
「!」

バデーニ:
「文字というのは特殊な技能。
言葉を残すのは重い行為だ。

扱うには一定の資質と最低限の教養が要求されるべき。

誰もが簡単に文字を使えたらゴミのような情報で溢れかえってしまう。

そんな世の中目も当てられん。」

セリフを読んだ瞬間、衝撃が走った

まさにこれだ!!
今の世間の状況を絶妙に言い得ている!


誹謗中傷が溢れる世の中

文字は特殊な技能であり、言葉を残すのは重い行為である。
それら言葉や文字を扱うには、一定の資質や教養が必要ということ。

現代は、民主主義の原則により、表現や言論の自由は保障されている。

インターネットが普及し、誰もが自由に自分の言葉を発して公開することができるようになった。

これまで紙の上だけで扱われていた文字の情報はインターネット上に爆発的な増大を見せている。

しかしこのようにして、誰もが簡単に言葉を残すことができるようになったことで、それこそバデーニが言うようにゴミのような情報で溢れかえっている状況は否めない。

更に、ヘイトスピーチ、フェイクニュース、SNSでの誹謗中傷など、人を貶め、傷つけるような言葉や文字が世間には氾濫している。

人を自殺に追い込むような酷い言葉が液晶を一枚隔てた世界に潜んでいる。

ニュースを見るたびに鬱々とした気分になる。


言葉=刃物

「特殊」とは、普通とは質的に違うこと。性質が特別であること。

言葉や文字を刃物に置き換えてみる。

例えば子供に刃物を使わせるときは、きちんと使い方を教えて、危ない時は注意して、誤った使い方をしないように指導するはずだろう。

上手に切れないときは、刃物の持ち方を変えたり、押し引きの動きを加えるように教えたりするだろう。

刃物を使うには、持ち方や使い方などの一定の知識が必要で、より上手に使うにはそれ相応の技術も必要とされる。

人に向けて使うと傷つき、或いは死に至る危険が伴うものだと理解する教養も必要とされる。

刃物は日常生活の様々な場面で用いられ便利な物である一方で簡単に人を殺めることもできる物でもある。

言葉を使うこともそれと同じであり、大人も子供も含め、社会全体がそのような意識を持つことが必要ではないだろうか。

同時に、あまりにも幼稚で悪意に満ちた言葉や振る舞いに対抗する術も社会全体で共有することも必要ではないだろうか。


負けないスキルと声を上げて伝えること。

人を傷つけることが好きな人。
悪意を持って人を傷つける人。
善悪の判断がつかず、容易に人を傷つける人。

こういった人々から自分を守る技術を誰も教えてはくれない。

どうしたって弱い人が暴言や悪意に晒され傷ついてしまう。

自己責任、個人主義だと言ってしまえばそれまでかもしれない。

でも社会全体で連帯し、共有し合い、繋がる力がまだまだあることを信じたい。

言葉を残すことは重く、発するには責任が伴うことだと、社会全体で共有し合うことができると信じたい。

まずは、声を上げること。
誰かに伝えること。
伝え合い、共有すること。

それこそ、人類が社会性を持ち、テクノロジーを発展させ、世界が繋がることを願った理由の一つなのだから。

自分を守るのもまた言葉であり、時として自分を勇気づけ鼓舞してくれる。

誇りや自信を持たせ、肯定してくれる。

人を傷つける言葉は回り回って自分に返ってくる。

言葉は言霊であり、力を持つもの。

言葉を扱う技術を社会全体で高めていき、中傷や悪意に対して、上手に躱したりいなしたり自分の身を守れるようにしよう。

或いは傷つけてくる悪意に対して、声を上げて連帯し(勝たなくてもいいから)負けないようにしよう。

傷つけ合い恨み合う、負の連鎖はもういい加減やめてほしいと切に願う。

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