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管理職のためのコーチング大全!必読の一冊を紹介 ~読書レビュー『管理職コーチング論』#1~
こんにちは。紀藤です。本日より、ある専門書を数回にわたって読み解いていきたいと思います。今回取り上げたい、注目の一冊は「管理職によるコーチング』の唯一無二の専門書である、こちらの書籍です。
本書では、「管理職によるコーチング」とは、「そもそもどのようなもの(定義)なのか?」「どういうメカニズムでどんな効果をもたらすのか?」 「具体的に、パフォーマンスを上げている日本の管理職は、何をどのように行っているのか?」などを理論的に紹介しています。
世界の管理職のコーチングの論文を渉猟し、また、日本の実証研究を踏まえて、学術的な観点から、説得力を持って紐解いた一冊です。
私が学んだ、立教大学大学院 経営学専攻リーダーシップ開発コース(LDC)において、「マネジリアル・コーチング論(管理職のコーチング論)」として、めちゃくちゃ勉強になった授業が、ぎゅっと詰まっているような本です。本日は、本書の全体像と特徴について、概要をお伝えいたします。
それでは、どうぞ!
管理職の「コーチング」は意味があるのか?
「コーチング」という言葉が知られて、久しくなりました。
その言葉は、企業における「1on1」として管理職と部下の間で行われるようになったり、成長を願う人が個人的にコーチングをお願いするなど、自己研鑽の手段としても活用されるなど、その裾野は広がってきています。
曰く、日本では約7割の企業がコーチングを何らかの形で導入しているそう。アメリカのコーチングの市場規模は日本の50倍、人口が同じだとしても16倍もある、だからまだまだ日本は成長途上でこれからだ!という話で、コーチング界隈で賑わっていました。確かに、その通りです。
一方、2000年初頭からコーチングが日本に持ち込まれ、約20年。こんな話も、しばしば聞きます。
「一時期、会社でコーチングのセミナーとか人事主導でやったけど、あれ、どこにいったんだろう?」・・・と。
もちろん、管理職の中には、コーチングを取り入れて活用している人も、間違いなくいます。しかしながら、そういう人は「もともと成長支援に前向きな管理職」だったりします。実は、企画側が意図した、ぜひ実施をしてほしい「人よりもタスク重視の管理職」には一向に届かない、なんてケースも散見されます。
そして、実施をしない人の、脳内には「ある疑問」があるようです。それは
「コーチングって、意味あるの?」
(ほんとうに、業績や成果に繋がるの?)
という疑問です。
コーチングを深く理解するための一冊
ただ、本書『管理職コーチング論』を読んでいくと、このテーマに世界中の数々の研究者が検証している軌跡を知ることができます。
読むことで、管理職コーチングが部下を支援するための重要な手法であるという視点を理論的なアプローチで獲得でき、コーチングにおいてどのような行動や態度を取ると効果的なのか?についても、網羅的に理解することができます。
以下、本書の目次を引用いたします。
<本書の概要>
部下の能力をどうすれば伸ばせるのか。職場において管理職やマネジャーが部下の職務遂行をサポートする活動である管理職コーチングのプロセスを実証調査の定性的・定量的な分析から明らかにすることで、上司と部下のより良い関係構築のための方策を浮かび上がらせる。
【主要目次】
はじめに:上司と部下の幸せな関係づくりのために
■序章 管理職コーチング研究の課題と枠組み
0.1 問題意識 0.2 研究の枠組み 0.3 本書の構成 0.4 想定する読者 0.5 小括
<第Ⅰ部 管理職コーチング、経験学習・リフレクションに関する先行研究>
■第1章 管理職コーチングに関する先行研究
1.1 コーチングとは 1.2 管理職コーチング研究の全体像 1.3 管理職コーチングの定義 1.4 管理職コーチングの行動 1.5 管理職コーチングの先行要因 1.6 管理職コーチングの成果 1.7 管理職コーチングの媒介要因 1.8 管理職コーチングの調整要因 1.9 小括
■第2章 経験学習・リフレクションに関する理論
2.1 デューイの経験理論 2.2 行為の中の内省 2.3 批判的内省 2.4 コルブの経験学習理論 2.5 ギブスのリフレクティブサイクル・モデル 2.6 ALACTモデル
2.7 3つのモデルの比較 2.8 経験学習・リフレクション研究の課題 2.9 リサーチクエスチョン 2.10 小括 補論
<第II部 経験学習・リフレクション支援に関する分析>
■第3章 経験学習・リフレクション支援の成功事例・失敗事例:定性分析1
3.1 研究方法 3.2 分析結果 3.3 リフレクション支援における成功・失敗パターン 3.4 リフレクション支援における成功・失敗パターンのまとめ 3.5 小括
■第4章 部下育成能力の高いマネジャーの育成行動:定性分析2
4.1 研究方法 4.2 分析結果 4.3 結果の概要とストーリーライン 4.4 経験学習・リフレクション支援の具体例 4.5 小括 4.6 定性分析1と定性分析2の比較
■第5章 管理職コーチングの効果:定量分析1
5.1 4つの心理的状態の選択理由 5.2 管理職コーチングと部下の心理的状態 5.3 管理職コーチング行動の尺度の開発 5.4 研究の方法 5.5 調査項目 5.6 分析結果 5.7 発見事実 5.8 小括
■第6章 部下の性別による管理職コーチングの効果:定量分析2
6.1 先行研究 6.2 研究方法 6.3 調査項目 6.4 結果 6.5 発見事実 6.6 小括
■第7章 結論:成果を生み出す管理職コーチング
7.1 発見事実の整理 7.2 理論的インプレケーション 7.3 実践的インプリケーション 7.4 本研究の限界と今後の課題
まとめ
「コーチングの技術のための本」はたくさん出ています。
そこには「傾聴」「質問」「フィードバック」などの技術を語った本や、近年では、管理職の1on1に焦点を当てた具体的なコーチングの進め方(話題の選び方など)も取り上げて、本屋のコーチングのコーナーも市場の成熟を感じつつあるものになってきました。
一方、人生全般を扱うライフコーチング、管理職が部下に行うコーチング、エグゼクティブを対象にしたコーチング、同僚など横のつながりで行うピアコーチングなど、様々な種類があるものの、それらが明確に分かれていない複雑さも感じます。
そうした中で、本書は「管理職コーチングの世界地図」を提供してくれる一冊だと感じます。ということで、具体的な話は、次回よりまとめてまいります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!