「居心地の悪さ」を目標にすると、成長につながる ーハーバードビジネスレビュー論文よりー
こんにちは。紀藤です。ハーバードビジネスレビューの2024年5月号の記事に『目指すべきは学びではなく居心地の悪さ』というタイトルの論文記事がありました。
しばしば「コンフォートゾーンから抜け出しましょう」などとアドバイスをされることがありますが、より一歩進んで「居心地の悪さを明確な目標にする」ことで、やる気の向上が見られたという研究です。
なるほど、確かに「居心地が悪いかどうか=成長の証である」と証明する研究結果があるならば、越境して不慣れな状況に自分がいたときに、それを前向きな兆候として捉えられる可能性が高まりそうだと感じます。
ということで、今日はこの論文について、ご紹介させていただきます。
それでは、どうぞ。
今回の論文
1分でわかる本論文のポイント
研究者らは、5つの実験を行った。最初の実験では、即興劇団の訓練生数百人に、「少人数の即興練習」に参加してもらった。
セッション中の目標を、半数のグループ(実験群)には「気まずくて落ち着かない気分になること」と告げた。残りのグループ(対照群)には「新しいスキルを身につけるのを感じること」だと告げた。
その結果、実験群のグループメンバーは、他のグループに比べてより長く練習し、より大きなリスクを取った。
その他の実験テーマ、たとえば「表現力豊かな文章を書くこと」「新型コロナウイルスについて知ること」「銃による暴力について学ぶこと」「対立する政治的信条について聞くこと」など、自己成長の他の側面についての実験でも同様の結果が得られた。
研究者らは「人はネガティブな経験を機能的なものと解釈しなおすことで、そうした経験を呼び起こす課題(居心地の悪い経験)に積極的に取り組むようになる」との考察した。
とのことです。
研究の概要
以下、研究の概要をまとめます。
研究の背景
自己成長は、本質的に遅延する利益(例:えば、自信の向上など)と即時的なコスト(例: 不快感、居心地の悪さ)との間に葛藤を伴います。
このため、多くの人は成長プロセスにおけるモチベーションを維持するのが難しいです。不快感を軽減する従来の方法には、感情の再評価や外部的な報酬の付与がありましたが、これらは主に短期的な不快感の抑制に注目しています。
本研究では、不快感(居心地の悪さ)を避けるのではなく積極的に求めることで、成長プロセスの動機付けを高める新しいアプローチを提案しています。
研究方法と結果
本研究は、以下の5つの実験で構成されました。
それぞれの実験の参加者は、アメリカ在住の成人で幅広い年齢層を含みます。以下の実験にはそれぞれ200~600名が対象となりました。
1.少人数の即興練習: 「不快感を求める」指示を受けた学生は、演技中のリスクを取りやすく、より長い時間演技に集中しました。
2.表現力豊かな文章を書くこと: 深く感情的なテーマについて執筆する際に、不快感を求める指示を受けた参加者は、目標達成感が高く、再度執筆したい意欲を示しました。
3.新型コロナウイルスについて知ること: 不快感を求めた参加者は、パンデミックに関する不快なニュースに対してより積極的に取り組みましたが、無関係なニュースには影響が見られませんでした。
4.対立する政治的信条について聞くこと: 自分と対立する政治的意見を読む際に、不快感を求めることで、より高い関与が見られました。
5.銃による暴力について学ぶこと: 銃暴力に関する個人的なストーリーを読む際に、不快感を求める指示を受けた参加者は、自発的にその経験を成長のシグナルと見なし、多くの情報を取得しました。
まとめと感想
少なくない人が「学ぶことは大事だとわかっている(長期の利益)」「でも、外の世界に出ると自信を失うのが怖い(短期の利益)」という間で揺れます。
そして、現状維持バイアスにより、外に出ることを躊躇して、時間が過ぎていくということも少なくないのでしょう。しかし、今回の結果は、「居心地の悪い経験は、成長しているサインだ」と思えれば、人はその居心地の悪さをやる気に変えることができる、という人の可能性を感じさせる内容でした。
外に出て、自分の小ささを知る。
その居心地の悪さを薪木にして燃やし、成長を続けていきたいものだ。
そんなことを思った次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!