ビックファイブとVIA(性格の強み)の関連を示した論文
こんにちは。紀藤です。先日、性格モデルの「ビックファイブ」についてその歴史や内容について解説をいたしました。
その中で、性格の強みとビックファイブの相関を研究した日本の調査がありました。2005年頃のポジティブ心理学が盛り上がりを見せ始めた頃の論文となります。
今日はその論文からの学びをご共有させていただければと思います。
それではどうぞ!
今回の論文
1分でわかる論文のポイント
ポジティブ心理学の発展に伴い、人間の強みや幸福感に注目が集まっています。
本研究では、ポジティブ心理学の一環として開発されたVIA-ISを日本版として作成し、その信頼性と妥当性を検証する試みを行いました。
研究の内容は、大学生778名を対象に、主観的幸福感尺度、一般健康調査票、NEO五因子検査(ビックファイブ)などと併せて実施しました。
結果わかったこととして、VIA-ISの内部整合性や再テスト信頼性が高いこと、幸せな人ほどVIA-ISスコアが高いこと、健康な群でのスコアが特に高いことが確認されました。
また、VIA-ISサブスケールとNEO-FFIサブスケール(ビックファイブ)における一貫性のある関係が示されました。
という内容です。
研究の概要
ちなみに改めて「VIAーIS」ですが、これは「人間の特性としての長所」に関する尺度としてピーターソンとセリグマンらによって開発された質問紙です。
開発にあたって、アリストテレス、プラトン、旧約聖書、孔子、老子、武士道、コーラン、ベンジャミン・フランクリン等の200以上の哲学書や経典を元に「人間の長所」を整理しました。
その結果、それらに共通して主張されている「知恵、勇気、人間性、正義、節度、超越性」などがあるとし、普遍的側面の6つの領域として抽出。さらに、6つの領域の中に「24の性格の強み」が含まれるとしました。
この調査票のVIA-ISの日本語版を作るというのが本論文の主な目的です。
Methods (方法):
具体的には以下のようなステップで研究を行いました。
翻訳プロセス: 日本人研究者による翻訳、逆翻訳、原版開発者の確認を経て項目を作成した。
参加者: 大学生778名(男性308名、女性470名)。
評価: 主観的幸福感尺度、一般健康調査票、NEO-FFI五因子検査(ビックファイブの項目する性格検査ツール)を併用した。
信頼性評価: Cronbachのα係数と再テスト法を用いた。
妥当性検討: 主観的幸福感や健康状態との関連を分析。
Results (結果):
その結果、以下のようなことがわかりました。
信頼性の高さ:
内部整合性(Cronbachのα係数)は.740~.880の範囲で高く、再テスト信頼性も良好。
性差について:
男女共に「感謝」が最も高得点、「精神性」が最も低得点。
女性は「感謝」「親切」「愛」「平等・公平」で高得点、男性は「自己コントロール」「判断」「独創性」「勇敢」で高得点。
主観的幸福感との関連:
幸福感が高い人は「熱意」(r = .481)、「希望・楽観性」(r = .468)、「感謝」(r = .454)などで高いスコアを示した。
健康状態との関連:
健康な群は「社会的活動障害」「うつ傾向」で低いスコアを示し、「感謝」「寛大」「好奇心・興味」と正の相関を示した。
NEO-FFI(ビックファイブ)との関連:
VIA-ISサブスケールと人格特性(ビックファイブ)の間に有意な関連が見られた。例えば、外向性は「熱意」「ユーモア」と、開放性は「好奇心」「独創性」と特に関連性が高い。
VIAとビックファイブの関連について
さて、本論文の中で、ビックファイブにある5つの特性「神経症傾向、外向性、開放性、調和性(協調性)、誠実性(勤勉性)」と、VIA-ISの「24の性格の強み」を分析しました。
その結果、以下のような正の相関が示されています。
これはピーターソンとセリグマンによる2004年の研究における予測を支持する結果となっていました。
まとめと感想
ビックファイブもHEXACOなどの性格モデルと、性格の強みのVIAの相関などは、それぞれ関連し合っていると、感覚では感じていました。
ただ、実際の研究でこのように「どのサブスケールと関連しているのか」が相関係数として示されると、よりそれらの事実がはっきりとわかり、理解が進むように感じました。
またビックファイブは多くの研究が行われており、年収や健康との相関も示されているものも見つけています。気になって仕方ない「年収」のような関心の高い項目と、性格の強みの繋がりなども見えるとより面白そうだな、と感じている次第です(また後日、ご紹介させていただきます)
最後までお読みいただき、ありがとうございました!