Merle Haggardのスタイルこそカントリーのお手本だ
Merle Haggardはカントリーシンガーでありながら、名曲を多く残しておりギターも上手いし、フィドルも上手い。彼の遺したヒット曲の多くは様々なミュージシャンにカバーされている。
彼のキャリアは輝かしいもののようにも見えるが、若い頃は何度も刑務所に入っていたらしい。そこで、カントリーバンドをはじめ、ジョニーキャッシュなどを聴いて腕を磨いたとどこかで読んだことがある。
若い頃に父親を亡くしてかなり苦労もしたようで、彼のヒット曲”Mama Tried"などは、そういう状況で随分と苦労した母親に宛てて書かれている。カントリーミュージックの多くはシンプルなラブソングか、失恋の歌と相場が決まっていたところを、こういう「おふくろさん」系の歌をヒットさせ、カントリーミュージックに一つのジャンルを築いたと言っても過言ではないだろう。
そういう功績もさることながら、私は彼の歌の中でも”Misery And Gin"という失恋の歌が好きだ。失恋した男が悲しみを抱えながらバーでジンを飲んでいるという内容の歌なのだが、これがまたなかなかMerle Haggardに合っている。
実はこの曲Merle Haggard自身のペンによるものではないのだけれど、Mere Haggardの素朴な歌声とバンドのサウンドと相まって何度聴いても名曲だと思う。
クリントイーストウッドの映画「ブロンコ・ビリー」の中で、マールはガード自身が映画の一場面に登場しこの曲を歌うシーンがある。主役のクリントイーストウッド等は、この曲を聴きながらバーで酒を飲み、喧嘩するというシーンだ。「ブロンコ・ビリー」はシリアスな映画ではなく、コメディータッチなのだが、Merle Haggardの音楽がそのコメディーの中にも少しだけ哀愁を加えている。クリントイーストウッドの映画らしい演出であると感じた。
そのシーンでMerle Haggardは50年代製と思われるブラックガードのテレキャスターを抱えており、これがまたよく似合っている。Merle Haggardといえばタバコサンバーストに白バインディングが入って、ゴールドパーツのテレキャスターを愛用しているのだが(Fender製なのかどうかはよくわからない)テレキャスターはこの人の為にあるのではないかと思わせられるほど似合うのだ。
カントリーミュージックのギタリストは、テレキャスターを持つ人が多いが、Merle Haggard以降に出てきたカントリーシンガーでテレキャスターがメインの人は多かれ少なかれ彼のスタイルに影響を受けているのだと思う。
カントリーミュージックといえばこうであるべきというスタイルを持つMerle Haggard。これからも、じっくりと聴いていきたいと思う。
そういえば、昨日店に来た近所の女性が「何聴いているの?ああ、Merle Haggardね。カントリー好きなのね」と言っていた。
私は、この南千住に住んでいる方で、声を聴いただけでMerle Haggardだとすぐにわかる人がいるとは思っていなかったので、少しだけ驚いた。
この極東の地でも高い知名度を誇るMerle Haggard。恐るべし。