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うつについてのあれこれ①| 京都・四条の心理カウンセリング カウンセリングオフィスSHIPS 認知行動療法・ブリーフセラピー

 こんにちは。カウンセリングオフィスSHIPS代表です。京都 四条烏丸でカウンセリングルームをしています。オンラインカウンセリングもしていますので、全国からアクセス可能です。

 当オフィスは、ブリーフセラピー、認知行動療法を中心にしたアプローチで、プラグマティック(実用主義的な)支援を掲げてカウンセリングをおこなっています。

さて、本日はうつについて、思いつくままに覚書的に綴っていこうと思います。

はじめにー重要なお断り

 これから、今日のようなテーマで、症状、病気、問題等について書くこともあるとは思いますが、読んでいただく前に重要なお断りがあります。

 それは、どのような症状、病気、問題も、こころと人間関係にまつわる内容は個別性が非常に高く、ケースごとに対処法も異なるということです。つまり、問題の原因や解決法というものは安易に一般化できるようなものではなく、「原因はこうです」「こうすれば治ります」といった対処法をお伝えすることは本来は難しいものなのです。

 いや、世の中には、HOW TOを教えてくれる本やサイトにあふれています。「こうすれば治ります」と私も断定的に言い切れたら格好いいのでしょうけど、臨床において誠実であろうとするなら、やはり安易に言い切ることはできません。
 たとえば、元うつ病だったAさんが何らかの方法でうつ病を克服されたとしても、その対処法を別の方にそのまま当てはめることはできません。あくまでも、その対処法は、元うつ病だったAさんにのみに通用するスペシャルメソッドであるのです。「私はこうして克服したから、それを世の中に広めたい。あなたも、私と同じようにすれば治ります。」といった発想、経験則で対人支援を行うことはリスキーである、と戒められているのはそのためです(世の中にいっぱいいますけどね)。
 ですので、これから書いていく内容も、概ね一般論的な内容にとどめますが、それでも、すべてのうつがそうであるだとか、すべての人に当てはまるということを主張したいわけではありません。「私はそんなことないけどなあ・・・」というような感想を持たれたとしても、それは間違っていません。そのうえで、読んでいただければ幸いです。

うつと不安のちがい

 「うつ」と「不安」の違いって曖昧なようで、よく尋ねられます。
 うつも不安も併存するんですが、スマホにたとえるとするならば、うつはバッテリー切れでスマホが動かない状態です。

 電池が切れて、エネルギーがだせなくなっています。なので、元気が出ない、やる気が出ない、意欲がわかない、集中できない、気分が落ち込む、といった症状がでるのですね。

 反面、不安は色々なアプリ(心配事)が頭のなかで沢山動いていて、他のアプリ(現実的な他の活動)を開く余裕がなくなっているような状態といえます。アプリもずっと動きっぱなしだと電池の消耗も激しいので、うつが併存してくることもあります。

うつの治し方

休息の仕方を思い出す 

 うつは基本的にバッテリー切れですから、充電が必要です。脳の充電は、睡眠(休息)によってのみ得られます。
 ですが、長期にわたりうつであったり、しばらく放置してしまっていると、そもそも休息することを体が忘れてしまっていたり、睡眠が回復しなかったりして、時間だけ確保して休めるようにしたからといってすぐに休息が図れるようになるとは限りません。まず「休み方を思い出す」といった対応が必要になります。カウンセリングで一緒にやる前提で書いていますが、大丈夫です、必ず思い出せるようになります。

不眠の改善と行動活性

 休み方を忘れてしまっている状態として、代表的なものが「不眠」です。入眠困難(寝つきが悪い)、中途覚醒(夜中に起きちゃう)、早朝覚醒(明け方に起きちゃう)、浅眠(眠りが浅くて起きても寝た気がしない)といった状態像があります。お薬の力も役に立つことがあります。

 「不眠」を治そうとするとき、多くの方は、早めにベッドに入って寝るようにしたり、飲食を控えたり、どれだけ眠れたか・眠れなかったかを事細かに記録したりして、いかに眠るかを考えがちです。それは当然なのですが、そうして「眠ろう、眠ろう」とすることが不眠に対して悪循環になっていることがあります。眠ること、眠れていないことばかり頭にあって「眠ろうとすればするほど眠れなくなる悪循環」とでもいいましょうか。

 この悪循環を切っていくために重要なポイントは、「いかに眠るか」ではなく、「いかに起きているか(いかに活動するか)」というところに注意を払うということです。活動と休息はワンセットであり、よい活動があるからよい睡眠も得られます。”眠れないから昼間の活動が乏しくなる(眠れさえすれば動けるのに)”と考えがちですが、治すときには”昼間の活動が乏しいから眠れなくもなる(上手に活動することで睡眠もとりやすくなる)”という方向でのアプローチを考えるのが大切です。行動活性化ともいいます。

ネガティブ思考について

 うつに対して、なぜカウンセリングが有効かというと、上記の行動活性等のアプローチによって生活リズムの安定と回復が図れるということもありますが、もうひとつは思考の柔軟性の回復が図れるという効果があります。

 うつ病というのは、意欲がわかなくて気分が落ち込んで元気がなくなってしまう病気ですが、認知(思考)面の特徴としてとらえると、「視野狭窄の病」と言い換えることもできます。

 視野が狭くなってしまうというのは、例えば、職場のAさんに挨拶したのに無視されたといった出来事があったとき、うつの人は「なにか私が悪いことしたから怒っているんだ」「そうだ、きっとあのとき私がそっけない態度を取ったから、怒っているんだ」「いつもそうだ。私はいつも知らないうちに相手を怒らせるし、誰ともろくに付き合えない、人に嫌われる人間だ」「私なんか誰も必要としていないに違いない」「もう人生を終えても、誰も悲しまないだろう…」といった具合に考えがちです。

 一方、元気な人は「なにか悪いことしたのかな」「嫌われているのかな」とも考えるでしょうが、ほかにも「声が小さくて、気づかなっただけかな」「忙しくて考え事していたのかもしれないな」「プライベートでなにかあって虫の居所が悪かったのかな」といったことも浮かびます。これらは可能性にすぎません、本当かどうかはわからないものです。しかし、この本当かどうかわからない、可能性にすぎない様々な推測が、推測であるということにも気づきながら浮かぶかどうかが「思考の柔軟性」というものです。うつ病は、この思考の柔軟性が低下していて、結果、マイナス方向の推測をどんどん進めていって、やがて「こうに違いない」と確信めいた思考を強めてしまいます。これを回復させるのが認知療法などに代表される認知的なアプローチです。

ポジティブシンキングではない

 ネガティブ思考を改善しようというとポジティブシンキングかなと思われる方もおられるかもしれませんが、そうではありません。
 さきほどの例で、「相手が気づいてなかっただけだ」「私は嫌われるようなことはしていない」「なんなら、相手が私に照れていただけだ(まったくシャイなんだから)」などとポジティブに考えるのは、ひとつの可能性として考えるのならいいでしょうが、あくまでも可能性にすぎません。
 だって、本当に嫌われている可能性だってあるからです。

 思考の柔軟性とは、実際のところは相手はどう思っていたのかといったことを追究して本当の真実にたどり着こうとしたり、ポジティブに考えてごまかしたりすることではなく、ポジティブなこともネガティブなこともすべてをあくまでも可能性にすぎない推測として色々浮かべられることをいいます。
 どんなことが浮かんだっていいんです。ああとも考えられるし、こうとも考えられるし、そして私にはいまそういう考えが浮かんできているなあと眺められるようになることです。マインドフルネスのあるがままというのは、そういうことです。

今回はこれくらいにして、次回は「仕事には行けないけど、遊びはできてしまう問題」「感情の扱い方」「マインドフルネス」などについて書いてみようと思います、たぶん。

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