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『シビル・ウォー アメリカ最後の日』

鑑賞日時:10/6(日)8:25〜
映画館:新宿ピカデリー

 近未来の米国は内戦の末期状態。政府軍とカリフォルニア州&テキサス州連合軍との武力衝突は激しさを増している。超法規的権威を誇示する政府軍側米大統領に単独インタビューを決行するべく、リー(キルステン・ダンスト)をはじめとするベテランジャーナリスト3人と未熟カメラマンのジェシー(ケイリー・スピーニー)はニューヨークからワシントンD.C.へ向かう。

 ワシントンD.C.到着まではロードムーヴィーの様相を呈し、到着後から終盤打って変わってホワイトハウスダウンの地上戦が大スペクタクルの緊迫感と臨場感で高揚感が激しく、音響の凄まじさとも相まってかなり楽しめた。

 内容が盛りだくさんで長くなってしまうので、的を絞って私にとって一番強烈な印象に残ったところだけ紹介したい。ここからはネタばれであり映画館鑑賞後に喫茶店で記憶を頼りにメモにまとめた内容なので若干記憶違いがあるのはお許しいただきたい。

 中盤あたりで知り合いの二人のアジア系ジャーナリストと合流した一行は旅の途中ジェシー・プレモンス扮する得体のしれない赤いサングラスの兵士と出くわしてしまい、ジャーナリストの一員ジョエル(ワグネル・モウラ)はこの兵士と交渉を開始する。(交渉直後すでに捕らわれていた一人のアジア人ジャーナリストが射殺されている)

ジョエル「誤解があったようだ。我々は米国人のジャーナリストだ。米国人だ。」

兵士「米国人?わかった。どんなたぐいの米国人なのか?中米?南米?」

3人はそれぞれの出身州を答えた。すると兵士は言う。

兵士「フロリダ、ミズーリ、コロラド…100%米国的だ。それが米国人だ。」

兵士はやや後方で恐怖に震えているもう一人のアジア人ジャーナリストにも同じように問う。

兵士「はっきりとした英語でしゃべろ。どうだ?どこだ?」

アジア人ジャーナリスト「…ホンコン」

兵士「ホンコン?…おう、チャイナ!?」

バン!(銃声音)の響きの瞬間、アジア人ジャーナリストの身体は崩れる。

兵士「おう、チャイナ!」



 Qアノン信者のサイコパスだと確信させる兵士の蛮行の衝撃的なシーケンス。ジェシー・プレモンスの演技が気味が悪くてとても恐ろしい。

 このひたすら当事者性もなく突き放した場面はまさにリベラル思想を自称する持主でないと描けない。アレックス・ガーランドとは何者なのか?(もちろん過去作品は面白い)欧州人らしい寓話表現(分断)と捉えるか現実現在の問題提起としてなのか?米国人ではない私は素知らぬふりしてやり過ごすか、それとも立ち止まるか?少し引っかかったのは事実だ。

 ちなみにリベラルとは私の理解ではこういうことだ。たとえばフェミニストの女性同士での会話があったと仮定する。

「私たちフェミニスト同士で価値観は一緒。でもあなたはアジア人よね。ごめんなさい、あまり好きじゃないの」

と、こんな具合を想像してしまうのだ。とかくリベラルな態度には要注意なのである。(過去の映画祭や各賞受賞式におけるハリウッドの俳優陣の振舞いを思い出してみよ。)

 話を作品に戻すと、シビルウォーでは脚本も手掛けたアレックス・ガーランド監督は米国人ではなく英国人。これは大変重要で面白い。

 個人的に飲み込みづらいエクストリームに表現された場面はあるものの、ラストの市街戦の迫力の映像と音響がすばらしく、鑑賞後感がとても良好だった。必見の価値あり。

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