ナスとぼく
スーパーマーケットへ行くと
いろんな野菜やくだものが
わいわいがやがやあつまっている
リンゴはリンゴでも
色やカタチはみんなちがう
ジャガイモはジャガイモでも
おこった顔もあれば笑った顔もある
お客さんはなるべく美人なリンゴを
ハンサムなジャガイモをえらんでいく
ちょっと不細工なナスは
いつまでもごろんと取りのこされている
となりのナスがえらばれていくのを
横目に見ながら
きっとどのナスも立派にナスの味がするし
どんなトマトもじゅうぶんにトマトだ
見た目でえらんでいく人だって
味のちがいなんてわからないくせに
ぼくはさびしそうにころがっている
不恰好なナスがあれば、ついえらんでしまう
カゴのなかでナスは照れているように見える
ぼくがナスなら、こんなぼくをえらんでくれて
やっぱりうれしいとおもうだろう
それに、うれしいナスははりきって
お鍋のなかでおいしいエキスを
たくさん出してくれるかもしれない
ぼくが、ぼくをえらんでくれたひとに
はりきってしまうように
不恰好なナスとぼくは似たもの同士だ
お鍋なかでナスがぷっくり顔をだした
「ぼくをえらんでくれてありがとう」
ぼくのつくるカレーは
ありがとうの味がするよ
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