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狐の神様


変われるものなら変わってあげたい
子狐の頭を撫でながら母狐はいつもそう思っていた
狐の子は重い病にかかっていた
ある夜、看病に疲れた母狐が
子狐に寄り添って眠っていると
親子の枕元に神様が現れた
母狐は起き上がって目をぱちくりさせた
おぬしの願いをなんでも叶えてあげよう
ただしふたつだけじゃ
そう言われると母狐は言った
私の願いはふたつとありません
私とこの子を入れ替えてください
母狐は拝むようにしてそう訴えた
神様は杖をひとふりした
なにも起こらなかった
できないのでしょうか
母狐は不安そうに尋ねた
もう変わっておる
母狐は、はっとした
いまの母親はさっきの子供じゃ
いまの子供はさっきの母親じゃ
神様は不愛想に言い放った
子狐は眠りながらも苦しみの色を浮かべている
それを見てさっき子狐だった母狐はやっぱり
変われるものなら変わってあげたいと思った
願いごとはあとひとつじゃ
母狐は我が子の手をぐっと握った
私とこの子を入れ替えてください
神様は杖をひとふりした
なにも起こらなかった
でも母狐はなにも言わなかった
いまの母親はさっきの母親じゃ
いまの子供はさっきの子供じゃ
そう言うと神様は煙のように消えてしまった
あとには母狐の気高い顔の輪郭だけが残った
しかし神様はひとつ嘘をついていた
神様に願いを叶える魔法なんてなかったのだ
母と子の寄り添う洞穴の入口に
今年はじめての雪が降りはじめた




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