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忘れられない

星野富弘さんの、忘れられない詩がある。

がくあじさいの絵とともに
綴られたその言葉は、
暮らしの一瞬を
どんな宝石より美しい時に変えた。

結婚ゆび輪は いらないと いった
朝、顔を洗うとき
私の顔を きずつけないように
体を持ち上げるとき
私が痛くないように
結婚ゆび輪は いらないと いった

今、レースのカーテンをつきぬけてくる
朝陽の中で
私のもとに来たあなたが
洗面器から冷たい水をすくっている
その十本の指先から
金よりも 銀よりも
美しいしずくが 落ちている

『四季抄 風の旅』より
富弘さんが描いた がくあじさい

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        星野富弘さんは元々体育の先生で、
  指導中に大怪我をして
  首から下を動かせなくなってしまい、
  美しい絵と詩を口で加えた筆で描き続けた
  詩人・画家です。
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人を想う気持ちは
大切に想うその人の手を、
金よりも銀よりも美しいものを生み出すものに
変えてしまう。


この世界は、
そんな小さな魔法にあふれている。


小さな頃、大切な人がつくったものが
他のどれより素敵だと思っていた。

もうおぼろげな セピア色の思い出

思い返すと、
ふとした瞬間、瞬間に

金よりも銀よりも、
美しい時間が流れていたことに気づく。

出会ってくれた人に

笑いかけてくれた人に

その出会いを見守ってくれたこの世界に


ありがとう


と伝えたい。


大切な日々の瞬間を
胸の奥深くに 残していきたいと願う。


6月、白い紫陽花がブーケみたいに咲いていた。



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