会話における「こそあ」の使い方
指示語には大きく分けて、現場指示と文脈指示があります。以前、日本語文法の基礎でも:指示詞「こそあど」を取り上げましたが、今回は少し違った視点で指示語の「こそあ」を見ていきます。
文脈指示の「こそあ」は指す対象が目の前にはありません。基本、「あなたの話=そ」「私の話=こ」「どちらも知っている話=あ」で使い分けられれば十分です。
ただ、ときどき誤用が見られるので注意が必要です。例えば、先日、学生と話していたときのこと。「昨日、友だちと飲みに行きました。あの人は大学のとき、ルームメイトでした。」(私の心の声:ん、あの人って誰だっけ?そんな人、あたしゃ知らんぞ・・・。)
この学生は、話し手と聞き手から遠くにいる人について話しているので、「あ」を使ったのでしょうね。正解は、「昨日、友だちと飲みに行きました。その人は大学のとき、ルームメイトでした。」ですね。
聞き手は話し手の指示対象を知らないので、この場合は「そ」を使います。このようなケースの場合、学習者は「あ」と「そ」を間違えることが多いように思います。
会話における「あ」の用法
「あ」を使うケース①
回想の「あ」:話し手と聞き手が知識を共有している過去の出来事や事物の場合
A:あのころが懐かしいな。 B:ほんと、よく朝まで飲んだよね〜。あいつ、元気かな。あの同窓会以来、しばらく会ってないね。
(Aの記憶にもBの記憶にも若いころの遠ーい記憶が残っている。おそらく三人組だったのでしょう。)
A:あの件、よろしくね。 B:あ、あれですね。了解です。
(以前AとBで話した案件。秘密の話をしているようにも見えますね。人に聞かれたくない言いにくい話の場合も「あ」を使うのかもしれません。仮説ですが・・・)
「あ」を使うケース②
何かを思い出して、独り言を言う場合も「あ」が使われます。
「あのワンピース、ステキだったな。あー、買えばよかった。」
聞き手が知らなくても独り言っぽく「あれ」を使うこともあります。
A:「あー、なんだっけ? あれ、あれ、何て名前だっけ、あのお掃除ロボット・・・」
B:「あー、ルンバね。」
会話における「こ」「そ」の用法については、ブログ記事をご覧ください!
会話における「こそあ」は、現場指示の「こそあ」とは異なる点があります。学生の誤用から色々なことを気付かされます。日本人は何気なく感覚で使っている「こそあ」、なかなか複雑な一面がありますが、ちょっと深堀りしてみると面白いです。