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旅と視野、つまりはマーケティング

旅行でも出張でも地方に足を運ぶさいには、ローカル線や路線バスをよく使っている。
ひとりで旅に出るときには、いわゆる観光地と言われるような場所よりも鄙びた温泉や山間部の史跡に行くことが多いため、バスなんて1時間に1本あれば上等なんてこともままあるが、時間が限られている場合をのぞきレンタカーを選ぶことはほぼない。
車窓のむこうの風景を楽しむことも目的ではあるが、
そこに暮らす人々の生活に溶け込む錯覚を起こすことで、偏りがちな自分の思考をリセットさせるためでもある。
……
マーケターという仕事上、ある程度フラットなものさしで対象や状況を分析する必要があるのだが、昔はよく解釈に私見が乗りすぎていると上司に注意を受けていた。
(昔と言うのはちょっとうそ、今でも意識をしないとかたよった解釈をしがち)
結果の最大活用には、頭上からのぞき見るような俯瞰の観点が不可欠であるが、始終パソコンとにらめっこする日々が続きすぎると、どうしても思考は凝り固まり生活者をフラットに見ることができなくなる。
そんなときには旅に出るのだ、なるべくそこに暮らす人に馴染めるような旅に。
誰かを壁打ちに頭の整理をしたり、散歩中やカフェでなんとなしに他人の会話に耳をすませたり、話題のスポットで世の中の流行を追いかけたりでもいいのだが、一番は自分が普段生活しないところに行って、その場にいる人と同じ景色を感じることが個人的にはいい刺激になる。
地方出身者であるにもかかわらず、東京にいるとどうしても便利でものと情報に溢れた都市の生活を基準としてものごとを考えてしまう。
ターゲットがそこに合致すれば、うまくプランが機能することもあるがそうでないことのほうが多いし、売上の拡大にはもっと広い視点を持つことも大切だ。
だから、今の生活圏とは違うところに行って、自分と他者の価値観、ものの見方のギャップを認識する。
ーそれと単純にいろんな乗り物に乗る旅が趣味。

ある夕方は地元の高校生の会話をほほえましく聞き、偏見の少ない柔軟な頭から発想される考えに触れて初心に戻る。
それにしても、若い世代の興味関心はベースはどこの地域もいつの時代もほぼ同じなようだ。地方のほうがちょっとだけ純な感じはするけどね。
平日のお昼の地方の電車は、年配の方々がまばらに乗っている。
途中の駅でふらっと乗ってきたご婦人が、前から乗っていたご婦人に
あらっ久しぶりなどと話しかけるシーンをたまに見るのだが、たいてい二人とも降りる駅がバラバラ。
地方の駅なんて下手すれば一駅違うだけで旧制市町村では隣の町なんてこともざらであろうに、2、3駅先の駅で一人は降りたりする。
話題は持病や近所の小売店と知り合いの話、どんな知り合いなんだろう…と謎は毎回深まる。誰か教えて。
働き盛りの年代の方々と乗りあうのは、やっぱり夜に近い夕方の時間で、乗車中に聞ける話題はほぼないけれど、人が多く降りるような駅でなんとなく人波に押されて一緒に降りてみたりする。
乗り換えの駅だったりするので、駅前も比較的お店が立ち並んでいて、つかの間、その街の住人気分だ。
本当はみんながどんな買い物をしているかカゴの中を見たい気持ちもあるけれど、さすがに失礼かつ不審者すぎるし、平日の夕方なんて生鮮以外はたいてい指名買いなので気軽にショッピング。
地方スーパーの中規模店なんかがあれば、ぐるーっと回ってみたことのないお菓子とかヨーグルトなんかカゴにいれつつ、仕事に関係する商品の値段なんか見たりする。
旅に出ると肌で感じるのはこの価格受容性の温度差だ。
営業部門から聞くのと自分で感じるのとでは、やはりまったく違う。
いまのままのジャーニーだと全然だめだなと、理想と現実は違うことに毎回打ちのめされる。
やっては変える、やっては変えるのがマーケティングであり、そこが楽しくもあるのだが、たまに果てしない気持ちになる。
そして、果てしねーとつぶやく。
……

とまあ、現実に引き戻される瞬間もあるけれど、個人的には視点を変えて、視野を広げて思考をリセットする、休みの日のリフレッシュ方法だ。
書を捨てよ、町へ出よう、ならぬ
パソコンを捨てよ、旅へ出ようってね。

さいごに、別に常時、人の話に耳をそばだてる嫌なやつではないですからね!
聞こえてくる声をさらっと聴いてるだけですので、詳しい内容までは聞いてないし覚えてないです。(本当です)



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