タイトル「これが普通の女子高生の日常なのか」
■登場人物
先宮しおり(17)村山女子校二年生。
中田望(17)村山女子校二年生。
菊田茜(17)村山女子校二年生。
猿渡正敬(23) 村山女子校教員。
◯村山女子校・二年の教室内(夕)
教室内は静か。
黒板に「補習」と書かれている。
教団の横で猿渡正敬(23)がパイプ椅子に腰掛け、本を呼んでいる。
中田望(17)、席に座り、机に置かれている問題用紙と苦い顔してにら
めっこしている。
猿渡「どうした?見つめ合ったりするだけでは終わらないぞ」
望、頭を掻きむしる。
望「猿渡、一問もわかりません」
猿渡「教科書とか見て、調べて、やってみろそれでもわからないなら私に質
問しろ。あと、私のことは先生と呼べ」
望、問題用紙の隣に置いてある教科書を凄いスピードでパラパラとめ
くり、手を挙げる。
望「読みましたが、わかりません」
猿渡「中田、舐めているだろう」
望「舐めていますん」
猿渡「それを舐めているんだよ。まぁいい、何がわからない、言ってみろ」
望「何がわからないかわかりますん」
猿渡「はぁ、お前な…」
机の上に置いてあるスマホ画面に通知がくる。
望、ふと通知画面を見る。すると顔が青ざめる。
猿渡「おい、スマホ見ている暇はないぞ」
望、涙をポロポロと溢れてくる。
猿渡、困惑する。
猿渡「おい、中田、どうした?」
望、ボソッと言う。
望「星野…とガッキーが…」
猿渡「えっ?何だって」
望「星野源五郎とガッキーが結婚しちゃった」
猿渡「はぁ?」
望、机に突っ伏す。
望「あたしの星野が…キズモノになった…」
猿渡「おい、大丈夫か?だが、今はそんなことより補習をだな…」
望、バッと立ち上がる。
望「あたし、心が滅多刺しになったので帰ります」
望、バックを持って、教室を走って出ていく。
猿渡「おい、待て、中田。おい、カムバック」
猿渡、走って、追いかける。
◯同・廊下(夕)
望、全力で走る。
女子生徒達が驚き、道を開ける。
望「うぉおお、星野なんて星野なんて。もう、あたしには米津だけだああ
あ」
後ろ、猿渡が追いかけてくる。
猿渡「おい、止まれ、中田」
◯同・玄関前・外(夕)
下校中の女子生徒達がガヤガヤ歩いている。女子生徒達のブレザーの
胸には「林女」と書かれたパッペンが付いている。
先宮しおり(17)と菊田茜(17)が並んで歩いている。
茜「あー、今回もいい曲だな、高所得P様」
茜、悶えるように身体をくねらせて、イヤホンを耳につけて、楽曲を聴いて
いる。
そう、と素っ気なく返事する、しおり。
しおりは何か熱心にスマホを凝視している。
茜「しおりも一回でも聴いてみろよ、ハマるから」
茜、左耳につけているイヤホンを取り、無理やりしおりの右耳につけ
ようと する。
しかし、興味ないと言い、そのイヤホンを払い除ける、しおり。
茜「ふん、いいやい。聴きたくなっても聴かせてあげない、ふんだ」
茜は取り外したイヤホンを再度左ミミに付けようとするが、しおりの
スマホ画面に禿げあがったおっさんの画像が見えて、吹き出す。
茜「はぁ?なんでハゲのおっさんの画像なんて見てんの?しおり」
スマホ画面を茜の方に向けて、自慢するしおり。
しおり「涼木宗男」
茜「なぜに」
茜は腹を抱えて笑う。
しおり「将来結婚した時に子供の名前をどうしようかと思って探していた
ら、宗男がビビッときた」
しおりは無表情だが、声高らかに饒舌に語り出す。
未だに腹を抱えて笑う茜。
茜「私なら子供に宗男なんて名前つけたくない。頭が光りそう。てか、しお
りは結婚するイメージがなかったから、そんなこと考えるなんて意外」
大声で笑い転げていたが、突然思い出したように我に返る茜。
茜「そういえば、静かだと思ったらあいつがいないな」
しおり「ついさっきまで望みたいに笑っていた人に、静かと言われてもね」
茜「そうそう、望、望がいねえ。あいつ、どこかでまたロリでもいじめてい
るのか」
しおり「望なら、補習。さっきワセダに引きづられて連れていかれたわ」
茜「またかよ。あいつ、進級大丈夫か?」
また、茜はゲラゲラと腹を抱えて笑い出す。
茜「ねぇ、あいつの間抜けな勇姿を見に行こうぜ」
しおり「興味ない」
茜「いいだろう?」
茜はしおりの腕を引っ張り、校舎に連れていこうとする。
無抵抗に引きづられるしおり。
相変わらず、スマホ画面に映る涼木宗男に夢中。だが、突然足を止め
る茜。
しおり「どうしたの?」
茜「こっちからで向かわなくてもよくなった」
しおり「どうして?」
笑いながら、校舎内に指を指す茜。
茜「だって、向こうから近づいてきているから」
全速力で校舎内から走ってくる望。何か泣いているようだ。
望「うおおお、あたしの…あたしの…星野源吾郎が、カッキーと結婚したあ
ああ、こんな時に補習なんてしてられるかあああ」
泣きじゃくり走り去る望を呆然と見つめる茜。
茜「なんだ、あいつ」
望の顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。すると、望の後ろから全速力で
迫る猿渡。
猿渡「こらあああ、中田。補習はまだだぞ。それにお前はカッキーの足元、
いや足の爪にも及ばないぞ」
望は猿渡のツッコミを無視し、更に加速し、戯言を言い出す。
望「ふんだ、まだ私には米津玄米がいるんだ、待ってろ、米津ううう」
望の発言を聞いて、吹き出す茜。
望は校門を飛び出し、走り去っていく。
そして、その後ろを追いかける猿渡。
茜は暇つぶしを見つけたように嬉しそうにはしゃぐ。
茜「おもしろそう、見ものだ。追いかけようぜ、しおり」
しおり「いや、私は…」
茜はお構い無しに話を遮り、しおりの腕を掴んで、一緒に走り出す。
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