社会人クリエイターの為の修正フィードバックがより伝わるテクニック
制作物へのフィードバック(以降FB)は難しいですよね。私もなかなか伝わらず沢山苦しみました。結局は「ええいもう自分でやってしまえ」となって徹夜になることもありました。
ただ、それも規模が大きくなると限界があるので、ある程度体系立ててまとめてみようと思います。同じように苦しんでいる方の役に立てたら嬉しいです。
そもそもお互い認知スタイルが異なることを理解する
認知特性という言葉をご存知でしょうか。
認知特性は個々の人が物事をどのように記憶し、理解し、表現しやすいか、という「やり方」を指します。
厄介なことに「人それぞれ違う」という特性があり、例えば、「文字ばかりの説明だと理解できない」という人がいる一方で、「グラフだけでなく、文章でも説明してほしい」という人もいます。これは個々の思考や認知の「好み」とも言えます。
学生時代を思い出してほしいのですが、やたら文字量が多い先生、とにかくしゃべくりで盛り上げて説明する先生や図も使ってくれる先生など、色々なスタイルがありましたよね。
結局のところ好みといえばそれまでなのですが、自分が理解しやすいスタイルの学習法のほうがストレスは感じず理解も早かったように思います。
認知スタイルには6種類ある
具体的には、以下の6つのタイプが提唱されています。
この記事を読んで頂いているということは、伝えづらい相手や説明の分かりづらい相手がいるんだと思うので、その人を思い浮かべて以下を眺めてみていただきたいです。
その方はどのタイプっぽいですか?
学術的な説明や診断は専門家に委ねますが、これらの認知特性をゲーム制作プロジェクトのアセット制作の現場に落とし込んでみると、ディレクターからのフィードバックをある程度体系化することが出来ます。
それぞれのタイプへの伝え方
視覚優位者:写真(カメラアイ)タイプ
具体的なビジュアル(スケッチ、写真、イラスト)を具体的に修正をしてほしいところになるべく明確な指示を入れると伝わりやすいです。
このタイプの方は、受けた情報を静止画で捉えるのでたとえ動的な映像であっても、モーションの一コマであっても、止めた絵で伝えると理解をしてもらいやすい傾向にあります。
視覚優位者:三次元映像タイプ
簡易的な3Dモデルやラフなブロッキングモーションやラフなアニメーションを用いて空間的な視覚情報を提供すると伝えやすいです。
空間認識や時間軸への捉え方が優位なため、静止画においてもライトの当たる角度、描かれている空間の図面や情報などが必要になります。
これが無いと制作出来ないわけではないのですが、理解がしきれないため、正しく理解をしようと足らない情報の中で四苦八苦させてしまいます。
言語優位者:言語映像タイプ
詳細な説明と共に、文章やキーワードを視覚的に提示することで、具体的なイメージを形成することが出来ます。
言語や説明を映像化するのが得意なタイプなので、比較的スムーズにアウトプットされますが、伝える側と受ける側の完成映像に齟齬があるとどこまでも噛み合わず、最後まで伝わらず苦しむタイプです。
割り切って任せてしまって、完成までのステップを細かく区切ってフィードバックするとズレを都度に補正できるのでスムーズです。
言語優位者:言語抽象タイプ
アイデアやフィードバックを概念図やフローチャートなどの抽象的な視覚ツールで提示すると理解してもらいやすいです。
概念的な図での理解が得意なので、アウトプットに対して具体的なフィードバック指示を入れることが逆効果になる場合があります。
求めている修正やアイデア自体をあえて概念化し、抽象的に伝えると納得してもらいやすいです。
一見無関係そうな映像やエフェクト制作だとしても、例えばレイアウトであったり画面構成に関しては一定の制作ロジックがあるので、ロジックを概念的に図式化したり、モーションであれば演技内容の流れを図式化して伝えるなど工夫することが出来ます。
聴覚優位者:聴覚言語タイプ
口頭での説明やディスカッションが効果的です。ただし、ペースは人それぞれなので自分のペースで理解がしやすいように、動画に口頭の説明を入れて、あとで反復して確認出来るようにしておくと、より良いです。
例えば、ツールの使い方などの説明は口頭でのナレーションが入っている動画などが効果的なタイプです。
聴覚優位者:聴覚&音タイプ
音楽やサウンドエフェクトを使ってアイデアを伝えると良いです。また、このタイプの人はリズムやメロディを情報処理に利用するので、リズムやメロディのある説明が伝わりやすいです。
例えば、映像制作の成果物へのFBだとして、口頭で伝える際、擬音で伝えると意外に理解をしてもらいやすいものです。
周囲からみるとちょっと不思議な光景ですが、
「ここでグッと溜めて・・・」 間 「どかーん!」「バラバラー!だよ」
で割りと理解してもらえます。
自分の得意な伝え方と相手のタイプを見極める
聴覚優位者:聴覚&音タイプで説明した擬音全開の伝え方は、例えばテキスト化し修正内容をリストで管理するようなタイプの相手にはミスマッチになります。
聴覚優位者:聴覚言語タイプのフィードバック担当者が、視覚優位者:三次元映像タイプと言葉だけで会話することは不可能に近しいです。
お互いとてつもないストレスを感じることでしょう。
せめて実物や内容を情景や映像として捉えられるサンプルが無いと話が噛み合いません。
「どうにも伝わならないな、あいつあほなんちゃう…」と負の感情に支配される前に「まぁそもそもお互いタイプが違うのだ」と理解をして歩み寄ることが良いクリエイティブの第一歩です。
まとめ
今回のものは一例ではありますし、チームメンバーの特性やプロジェクトの要件によると思います。また、これらのタイプは排他的なものではなく、一人の人間が複数のタイプを兼ね備えることもあるので、これらのガイドラインとして頭の片隅にいれつつ、チームメンバーとのコミュニケーションの中で「どんなやり取りが仕事しやすい?」など気軽に会話に折り込むぐらいの感覚です。
あまりガチガチに仕組み化するようなものでもないのですが、例えばパートナー企業を1人格として捉えた場合「その企業に対して理解してもらいやすいやり方」があるのも事実です。
社会人としてクリエイターを生業にしている以上、避けては通れない壁なのは間違いないので、FBを行う側は柔軟に使い分けつつ、受ける方も理解できない場合は受け方を変えてみても良いのかもしれませんね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。この記事が、もしも何かの役に立てたり考えるきっかけになれたら、スキなどリアクションを気軽にいただけると嬉しいです!