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なんの音?

その日、すぐには帰りたくなくて
時間つぶしにちいさな森の中にある公園へ
ふらっと立ち寄ったときのはなしです。

ぱらっ…ぱらっ…
日は傾いていますが空は晴れています。
ぱらっ…かさっ…ぱらっ…
すこし大きな雨粒が降ってきたような音がします。

ぱらっ…かさっ…ぱらぱらっ…かささっ…
聞きおぼえのある、そうでもないような音が
ぼくのまわりで、ないしょ話のように聞こえてきます。

雨は降っていません。

公園のまわりには大きな木がたくさんあって
まるでドームのように枝をのばし覆いしげっています。
天窓のように真上だけすこし空いていて
夕焼けに染まりかけていた空がのぞいています。

すこ〜し さむい風がふいて 
枝が大きくゆれて
わいわいとおしくらまんじゅうのようにせめあって
そろそろ帰りなよとぼくに耳打ちします。

ぱらっ…ぱらっ…

またです。聞こえました。
ほら、聞こえたでしょ?

足元には落ちはじめた枯れ葉と
たくさんのどんぐりがころがっています。
そうです。
どんぐりの落ちる音をぼくは聞いたのです。
すごい発見だ!

だってどんぐりの落ちる音を聞いたことがある人って
どれだけいるでしょう?
ぼくはちょっぴり自慢気にお家に帰ろうと決めました。


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