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「ホームズはお好きですか? 名作のパスティーシュを読む」~英語多読のための読書ガイド [ミステリー]~

英語学習誌🎄『多聴多読マガジン』🎄連載記事「多読のための読書ガイド」からのスピンアウト! 多読のプロたちによるおすすめの良書(英語の本)を紹介するコーナーです。


ミステリー編 ~2024年12月号~

執筆:河出 真美 (梅田 蔦屋書店 洋書コンシェルジュ)


ホームズはお好きですか? 名作のパスティーシュを読む


パスティーシュとは、先行作品からモティーフを借用して作られた作品のこと。たとえば、誰もが知る名探偵シャーロック・ホームズには多数のパスティーシュが存在します。

今回はそんなパスティーシュを2つご紹介します。

まずは、Sherlock Holmes & the Australian

退屈するホームズの元に殺人事件の知らせが。

その裏には復讐の物語が隠されていた。

これまで語られていなかった事件、という趣の正統派のホームズ譚で、舞台も時代も原典と同じ。

シリーズへの愛が感じられる一編です。


お次は A Scandal in Brooklyn

もちろん“A Scandal in Bohemia”=「ボヘミアの醜聞」を意識したタイトルです。

そう、本編で活躍するのは、ホームズではなく、「ボヘミアの醜聞」でホームズを出し抜いたアイリーン・アドラーなのです。

舞台は現代。極秘の実験を行う施設で起きた殺人事件の謎を、頭脳明晰なアイリーンが解きます。


ホームズのパスティーシュは他にもホームズの妹が活躍するEnola Holmesシリーズや、ホームズが娘(!)と共に謎を解く Sherlock Holmes and Lucy James シリーズなど、いろいろな設定のものがあるので探してみても楽しいです。


(1) 『Sherlock Holmes & the Australian』

YL 6.0
著者 Ben Stevens
出版社 Nanbanjin
総語数 7,840 語

ワトソン博士はもちろん、レストレード警部やベイカー街遊撃隊のウィギンス少年など、正典に登場する様々な脇役が顔を出すのが楽しい一編。

シリーズ化されて25巻まで刊行されていて、本編のような短編もあれば200ページを超える長編もあります。

最新作ではヴィクトリア女王の命を狙うロシアの暗殺者が登場します。


(2) 『A Scandal in Brooklyn』

YL 5.5
著者 Lauren Wilkinson
出版社 Amazon Original Stories
総語数 14,420 語

正典ではホームズが唯一認めた女性として登場するアイリーン・アドラーを主役にするというアイデアが素晴らしい一編。

非常に優れた記憶力と知性の持ち主であるアイリーンだけでなく、語り手を務めるその友人トミー、アイリーンの家族同然の存在シンウェルなど、脇役陣も魅力的でぜひシリーズ化してほしい作品です。


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