視覚障害者の日常―バスできつかったこととありがたかったこと
都営バスで少々きつかったことと、じんわり深くありがたかったこと。
〇きつかったこと
都営バス、停留所に止まる時、「〇〇行です~」と言いながらドアを開けてくれる運転手さんと、言わない運転手さん、いますよね?
そして、私は自分が乗っている時には、「〇〇行です~」と運転手さんの声、聞こえることが良くあるのですが…
自分が外側、つまり停留所で待っているときは、ほとんど聞こえない!運転手さんが言わないだけか、それとも、アナウンスしているのだけれど扉が開く前に言っているから結局外に聞こえていないのか…そこはよくわかりません。
しかしながら、都営バスはひとつの停留所に何種類ものバスが来るため、待っている目の前に停まって扉が開いても、視覚情報がない者にはそれがどこ行きのバスが来たのかわかりません。
そのため、とりあえずステップを白杖で確かめ車体の扉脇を手で探して、のそのそっとひとまず乗り込みます。
この時、必ずしもまさに真ん前で扉が開いているとは限りませんし、白杖と手で探る分、僅かな時間、手間取ることもありますが(晴眼者から見るとね)、よいしょよいしょっとバスの中に入って運転手さんのところまで直進してから、
「〇〇、行きますか?(もしくは「〇〇行ですか?」)」と尋ねます。
ちなみにこのとき、車に乗り込まずに入り口から叫んでも良いのですが、こちらもマスクをしていて声は飛びにくいし、運転手さんの声がひどく小さくて耳を近付けても聞き取りづらいくらいの場合も非常に良くあるため、聞き返したりしているとなおさら時間をかけてしまうことになるため、乗り込むことにしています。
今回もそうしました。
そして、「行きません」と、さくっと答えられたので、「わかりました。ありがとうございます。」と言って、後ろを向き、また扉脇に手を伝わせ、白杖で車体の端を確認し、白杖でステップ下の道路と歩道を確認し、降りて点字ブロックのところまで行き、またくるっとバス(道路)のほうを向く、という動きをするのです。
やはり晴眼者から見るとかなりもたついた作業です。バスも乗る人がいなければ早く閉めて行きたいでしょう。
それに、私自身も、これはなかなか段差があったり両手(白杖の手と空いた方の手の両方)と足で探る連動作業でもあり、更には方向をこまめに変えるという作業でもあり、やはり焦ると逆にぶつかったり引っかかったりバランスを崩したり方向感覚を失ったりするので、あまりささっと行うことはできません。
その上、バス停で他の人も待っていたりすると、バスからもう一度降りて歩道に降りるときに待っている人と接触する危険性もありますので、やはり慎重に白杖で探ることになります。
しかも……これはもしかしたらですが、運転手さん、扉を開けるときに「〇〇行です」と言っているのかもしれません。
実際、ちょくちょく扉が開きながらぼそぼそっと「…きです」と聞こえることがあるのです。だからつまり、扉が開く前に言い始めているために扉の外側で待っている人たちの側には聞こえていないのではないかとも思うわけです。
そうしましたら、運転手さん側も「アナウンスしている(つもり)」なのに、乗り込んできて「〇〇行ですか?」とか聞かれて、「行きません(ってば)」ともなりかねません。
そして私も扉が開いて数秒、アナウンスされたかな、されるかな、と、耳を澄ませている時間があります。いや、ただでさえ扉が開いたかどうか確信するまでに、晴眼者の反応スピードよりも遅れています。
だから、運転手さん側や乗客たちにとっては、時間ロスに感じてしまいます。
白杖持ちがバス停にいたら、できればはっきりと「〇〇行です」とアナウンスしていただけると本当に本当にありがたい。
また、バス停で待っているとき、もし白杖持ちがおりましたら、「〇〇行が来ましたよ」とお声がけか、もしくは独り言でも発してくださると、白杖持ちも運転手さんも乗客たちも待っている人たちも、みんな時間のロスや違和感やもどかしさなどなどが一気になくなり、みなさんにとって心地良いこととなります。
どうぞよろしくお願いいたします。
〇大変ありがたかったこと
同日に違うバスで、こんなこともありました。
バス停で待っていて、バスが来て停まり、扉が開きました。
すると、運転手さんが「はい、そのまま真っ直ぐどうぞー」と言ってくださったのです。
さりげなくここまで声をいただいたのは初めてだったので、内心、気付くのが一瞬遅れながらも感激しながら、しかしどの道バスの車体や道路は着実にん探るのですが、入り、いつも通り「〇〇行きますか?」「行きますよー」のやりとりをしました。
すると「そのまま行って右側の席(優先席があるほう)、空いてます」と言ってくださり、お礼を言ってそちらに探りを入れると、「もうちょっとです。その辺あいてまーす」と。
ありがとうございますと叫び返して座席に座っていると、この運転手さん、本当に丁寧なかたで、大きく曲がるときなども「左へ曲がります、ご注意ください」「発車します、おつかまりください」など、しっかりアナウンスしてくださっていました。
他にも杖をつく音など聞こえていたので、お年寄りなどもおられたのではないかと思います。
本当にともすれば気付かれにくいほどの、さりげない細やかな配慮、しかしながら、なぜだか乗客たちも心なしか何倍も安心材料となっているものだと思います。
本当にありがとうございます。
本当に助かります。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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