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映画「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」に隠された謎を徹底解説!

 Netflixで配信が始まった映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は、チョコレート職人ウィリー・ウォンカの起源を描いた作品です。ウォンカはこれまで、監督ごとに異なる解釈で描かれてきました。1971年版では、風変わりな魅力を持つ年配の男性として、また2005年のジョニー・デップ版では、エキセントリックでクセの強いキャラクターとして登場しました。最新作では、ティモシー・シャラメが演じるウォンカが、人間味あふれる思いやりを持つ人物として描かれており、この違いが物語のテーマやトーンにも大きく影響を与えています。

 特筆すべきは、ハリー・ポッターやファンタスティック・ビーストのプロデューサーであるデビッド・ハイマンが製作に関わった点です。そのため、作品内にはハリー・ポッターをオマージュしたエッセンスが散りばめられており、普通に鑑賞しただけでは見落としがちなポイントが多数存在します。これらを掘り下げてみましょう😎

物語の時代背景とデザイン

 映画の時代設定については、小道具から第一次世界大戦前と推測されます。例えば、作中に登場する電話交換手のシーンでクローズアップされるポスターは、実際に存在した映画館キノ・ラジウムのものでした。
 また、ウォンカにそそのかされてブリーチャーが着用した衣装は、ドイツ・ババリアの民族衣装「レーダーホーゼン」で、農民や労働者が着る服装です。決して貴族が着用するものではなく、笑いのツボを含んでいます😂

ハリー・ポッターへのオマージュ

ウォンカとヌードルの関係

 ウォンカがヌードルのために、初めて作ったチョコレートは「雷」をテーマにしています。これは、ハリー・ポッターの額に刻まれた稲妻のシンボルを連想させます。両者の共通点として、ハリーもヌードルも孤児であり、虐待をうける境遇で育っています。

 ヌードルが持っている指輪には「Z」という刻印があり、これは父親ゼベダイの名前に由来しています。ゼベダイは聖書に登場する人物で、息子の使徒ヨハネは『黙示録』を執筆しました。「Z」はアルファベットの最後の文字であり、終わりや成就を象徴する重要なモチーフです。

ウォンカの母親と仲間との絆

 ウォンカの母親が重要な役割を果たしている点も注目すべきです。最後の金のメッセージカードに「仲間との絆を大切にすること」が強調されているのも、ハリポタに通じるテーマです。
 ハリー・ポッターは救世主的な役割でしたが、ウォンカはモーセのような解放者です。ウォンカの機転で宿屋の地下で強制労働をさせられていた全員が解放されることは、モーセがエジプトで奴隷として働かされたイスラエルの民の解放と重なります。

地下聖堂の秘密とフリーメイソン

 地下聖堂に秘密があるというのは、秘密結社フリーメイソンに好まれるプロットです。この作品ではカトリックの聖堂の地下48フィートの深さの場所に、チョコレート・カルテルの事務所とチョコレート貯蔵タンクがありました。

 会計士がこの組織の説明をするシーンで、「何年も日光を見ていない地底人 A subterranean sentinel who hasn’t seen sunlight in years」という箇所がありました。鍵番をしている女性(Mistress of keys)以外に誰かがいるように説明しているのに、映画に登場しません。これはなんなのでしょうか。

映画「マトリックス」

 「センチネル」という言葉で思い出されるのは、映画『マトリックス』に登場するタコのようなロボットです。また、ハリー・ポッターでは、秘密の部屋にいた大蛇バジリスクが「センチネル(守護者)」と捉えることもできます。
 鍵番のグィニーの名は、アーサー王伝説の王妃ギネビア(Guinevere)に由来しており、これはハリー・ポッターのジニーの名前の由来と同じです。ジニーはバジリスクに殺されそうになりました。
 ウォンカの映画には描かれていないものの、「地底のセンチネル」の謎を知る人々に何かを感じさせるよう、仕込まれたイースターエッグではないかと思いました。こうしたシークレット・コードは、ハリウッド・エリートのお約束事のように感じます🤔

キリンのアビゲイルと「天の裁き」

Mr.ビーンズだ~!

 映画の象徴的なシーンの一つに、キリンのアビゲイルが聖堂に侵入し、神父たちがそれを「天の裁き」として恐れる場面があります。このキリンは、絵本『キリンのアビゲイル Abigail the Geraffe』を元にしている可能性がありますが、キリンの柄が板チョコレートの破片のようであるため、選ばれたのではないかと考えられます。

 アビゲイルという名前はヘブライ語で「神は喜んでいる」という意味を持ち、「聖堂(Abbey)」という言葉とも関連しています。この名前の選択は、物語のユーモラスな要素を強調しつつも、皮肉を込めたものだといえます。ユダヤ系の名前を持つ獣がカトリックの聖堂に現れ、神父たちの悪事を暴くという展開は、単なる滑稽さを超えて物語に深みを与えています。

まとめ

 映画『ウォンカ』は、聖書的なテーマや象徴が多く隠されているだけでなく、ハリー・ポッターシリーズからの影響も随所に見受けられます。ロアルド・ダールの原作とは質の異なるメッセージ性が含まれていることに気付かされました。西洋文化において聖書的な要素は切り離せないものであり、この作品もまた、多様な解釈の余地を提供しています。

 最後に、ウォンカが美しい桜の巨木の下で歌う場面は、日本人に向けた一種のサービスシーンとも受け取れますが、日本映画公開日をアメリカよりも早めて真珠湾攻撃の日に設定した、ハリウッド・エリートの意図も忘れてはならないでしょう。冒頭でチェリー味のチョコレートについて、「皇居で摘んだチェリー cherry picked from the Imperial Gardens in Japan」とウォンカが説明した伏線があり、後に日本の象徴である桜が燃える悲劇の裏側を読み取ることは大事です🤨

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