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「ささやかな合理的配慮」の話(2025年1月4週)
毎週土曜、シニアの皆さんを対象にZOOMを通じ、時事ニュースや科学ニュース解説を行っています。
2025年1月第4週はニュース報道で知った「ささやかな合理的配慮」というフレーズについてのお話をしました。(タイトルは週間手話ニュースより。NHKプラス(スマホ版)画面を撮影)
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1月20日(月)夜のNHK手話ニュース(NHK-E)がトップで伝えたのは『聴覚障害児の「逸失利益」減額せず』という話題でした。25日(土)の週間手話ニュースでも『トランプ大統領が就任』『イチローさん米野球殿堂入り』に先立ち、このニュースが詳報されました。事件と判決の概要は以下です。
まさに手話ニュースが伝えるべきニュースでした。
ニュース9(NHK-G)でのニュースの締め(一連の映像クリップの最後)は専門家のコメントでしたが、手話ニュースは違っていました。
遺影を抱いた被害女児の母が、肉声と、そしておそらく娘さんとのコミュニケーションのために習得したのであろう手話で同時に、「娘の願いとして、すべての障害者が生きやすい社会になってほしい」と語るシーンでした。
以下は大阪聴覚障害者協会による、裁判支援活動のクロニクルです。
判決文の中に「ささやかな合理的配慮」というあまり耳にしたことのない文言がありました。「合理的配慮」は、2013年に制定された障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)の複数の条文に出てくる「社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。」を踏まえたものです。
あらためて話題にのぼるようになったのは、法改正により2024年4月から、「負担が重すぎない範囲で障害者の求めに応じ合理的配慮を提供すること」が、事業者の義務となったから。以下は合理的配慮について、具体的なケースを示しながら解説する政府広報のページです。
https://www.gov-online.go.jp/article/202402/entry-5611.html
この「合理的配慮」に「ささやかな」という形容詞を組み合わせたのは、裁判官のオリジナリティに思えます。検索しても判決以前にはほとんど見当たらず、また見つかっても違う文脈でのものでした。
ニュースに映っていた裁判長は女性。ひょっとして朝ドラ『虎に翼』のスピンアウト版だったのか、とも。
また、逸失利益は平均賃金から算出されますが、検索すれば具体的な数字を示す表が見つかり、職業によっての違いなども見て取れます。厳然と存在するのは男女の賃金差。これが争点となるようなケースも出てくるのでしょうか。交通事故そのものは起こってほしくはないですが。
(了)