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今日、何を作るか

想像するに、家族のために毎日お料理をする人は、献立を考えるのが本当に大変なんだろうと思う。そもそも、人様はどんな献立の食事をしているのかも私は知らない。一汁一菜なのか、一汁二菜なのか、一汁三菜なのか。っていうか、汁はいるのか? 私は汁を作る習慣がない。

小さい頃、お味噌汁は美味しくないから嫌いだった。
なんのためにお味噌汁があるのか、さっぱり理解出来なかった。お味噌汁より美味しい汁物はたくさんあるのに、なぜ毎日お味噌汁なのか。

母は食事には必ずすまし汁が添えられる食卓で育った。
母方の祖父は生粋の浅草生れの浅草育ち。お洒落で話し上手。西洋人のような顔立ちのハンサムな人だった。捜査第一課の刑事だったこともあって、浅草の歓楽街では名の知れた人だった。

人気者だったからなのか、仕事柄なのか、本人が好きだったのか、とにかく毎日酒を飲んで帰ってくる人だった。恐らく、宴席の膳では味噌汁ではなく、すまし汁が出ていたのだと思う。私の推測だが、そんなこともあって自宅の食事でもすまし汁が出されていたのではないかと思う。

母は、味噌汁が当たり前にある家庭に嫁いだせいで味噌汁を作る毎日となった。

しかし、母は味噌汁の味を知らなかった。
彼女はお湯に味噌を溶けば味噌汁だと思っていたフシがある。というか、外食もあまりしなかった母は、味噌汁の正解を知らなかったのではないか。

子供の頃、初めて従姉妹の家にお泊りをした時、叔母が作ってくれた味噌汁が美味しくて衝撃的だった。お味噌汁って美味しいものなんだ…! という発見に私は何度も「味噌汁が美味しい」と呟いたので、叔母は自分の料理は味噌汁しか美味しくないのかと自信を喪失したらしい。

そんな経緯もあり、私は味噌汁を飲まない子に育った。

そんな私に、毎年手作り味噌を送ってくれる友人がいる。
一体、どれだけの味噌を仕込むのか知らないが、彼女は毎年たんまりと味噌を送ってくれる。最初は味噌の使い方がわからず一年間では使い切れなかった。すると翌年にまたたんまりと味噌が送られてくる。冷凍室がどんどん味噌でいっぱいになっていく。その翌年にも再びたんまりと味噌が送られてきて、私はついに味噌をこまめに使うマインドに切り替えた。

彼女の味噌はとてもとても美味しい。味噌だけで食べても美味しいくらい美味しい。これを味噌汁にしたらもっと美味しいのではないか。

私は味噌の消費のためにも、美味しい味噌汁の作り方を研究した。いろいろ試したが、結局一番手軽で一番美味しいのは ”かつおだし” なる出汁の素を使うのが一番だということがわかった。脳みそが強制的に美味しさを感じる美味しさだ。あまりにも刺激が強いので、今は出汁パックを使っている。

とはいえ、味噌汁を飲む習慣がないのですぐに作り忘れる。

いつ料理をするかもわからない私にとって、味噌汁のために前もってお揚げや豆腐を買うことはない。私の味噌汁の具は、保存の効く切干大根や乾燥野菜、岩のり等を使っている。最近では、冷凍のほうれん草やごぼうなどもたまに使う。季節になるとたくさん頂くことがあるナスやピーマン、トマトも使う。

そして私は、味噌汁を飲む習慣がないのですぐに飲み忘れる。

今でも覚えている。
中学生の頃、数学の家庭教師と勉強後に一緒に食事をしていたのだが、その時に飲み忘れたお味噌汁を一気飲みしたことを家庭教師からたしなめられたことがあった。

私はその頃から何も変わっていない。
今でも、味噌汁を飲み忘れて最後に一気飲みしている。お腹がいっぱいになった頃合いの味噌汁一気飲みはけっこう堪える。

さて、今日は久しぶりに自炊をしようと思う。
これだけ汁物について書いたのだから、味噌汁を作ろうかと考えている。味噌汁を作るのだからパスタというのもアレなので、ごはんとおかずの組み合わせにしようと思う。

今日、何を作るか。

本当はこんなことを書こうと思ったのではない。冷蔵庫にあるものでちゃちゃっと作るレシピを記そうと思っていたのだ。それなのに、こんなことを書いたせいで私の食生活の中で遠いところにいる味噌汁を作ることになろうとは。

まぁいい。
今日は、数ある冷凍庫に保存されている肉の中から、鶏ささみ肉をチョイスした。太りたくないからだ。太りたくないのに、それを揚げようと考えている私がいる。いけない。とんだ脂脳に侵されてしまっている。のりこ、冷静になって。痩せたいなら、茹でるというチョイスがあるわよ。そうだ。私は痩せたいのだ。ならば、ささみ肉は茹でてしまおう。

茹でたささみはマヨネーズとの相性がいい。マヨと和辛子の組み合わせが最高にいい。でも、今日は粒マスタード気分。あ、でも私は痩せたいのだ。危ない危ない。またしても脂脳にやられてしまうところだった。ならば、マヨの代わりにヨーグルトを使おう。ヨーグルトはにんにくと相性がいい。ならば

【鶏ささみ肉のマスタードガーリックヨーグルト和え】

でどうだろう。
…淡白 × 淡白。淡白にいくら淡白をかけ合わせても、淡白以上のものが生まれるとは思えない。 そもそも、ガーリックは油との相性がいいのだ。ならば、ここはやっぱり油を垂らすのがベターであろう。よし。

ヨーグルトの中にガーリックパウダー、更にオリーブオイルで手を打とう。粒マスタードも刺激となって美味しいだろう。ちなみに、これに塩で味付けしても美味しいが、白だしで味付けしても絶対美味しいと思う。それに青ネギでも散らせば立派なつまみだ。そうだ。冷蔵庫に無糖レモンサワーがあったな。どれ、そいつで今夜は乾杯だ。

あれ、ご飯のおかずなくなっちゃうな。そうなると、味噌汁も絶対飲み忘れるな。っていうか、レモンサワーを飲むんだからそれを汁物としてカウントして良くない? 味噌汁いらなくない? っていうかっていうか、飲むならもうご飯いらなくない? あー、カップ焼きそばが保存食箱のなかにあったよなー。それでいっか。もうそれでいいや。カップ焼きそばをつまみにもう一杯飲めそうだし。

あれ? 私は何を書こうと思ってたんだっけ。
ああ、今日、何を作るか、だ。

ということで、ささみ肉のつまみ以外はカップ焼きそばです。

こういう大人にならないように気をつけてください。

現場からは以上です。

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