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”信じる”とは何か。”正しさ”とは何か。  映画『正体』を観た感想 

全ての人に観てもらいたい映画

本作品は2024年11月29日に公開された映画です。
染井為人が著した小説「正体」を「余命10年」や日本アカデミー賞受賞作である「新聞記者」などといった幅広いジャンルの作品の演出や脚本を手がけた藤井道人が映画化した作品です。
そんな本作品で主演を務めたのが横浜流星です。彼もまた、役者界において幅広いジャンルの作品に出演し、活躍し続けている俳優です。
個人的に、2019年に放送されていたミステリードラマ「あなたの番です」の圧巻の演技が非常に印象に残っていたので、”5つの顔を持つ逃亡犯”としての彼の演技を見る事がとても楽しみにしていました。

あらすじ

ここで、ネタバレしない程度に大まかなあらすじを説明しておきます。
日本中を震撼させた凶悪な殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けた鏑木(横浜流星)が脱走した。潜伏し逃走を続ける鏑木と日本各地で出会った沙耶香(吉岡里帆)、和也(森本慎太郎)、舞(山田杏奈)そして彼を追う刑事・又貫(山田孝之)。又貫は沙耶香らを取り調べるが、それぞれ出会った鏑木はまったく別人のような姿だった。間一髪の逃走を繰り返す343日間。彼の正体とは?そして顔を変えながら日本を縦断する鏑木の【真の目的】とは。その真相が明らかになったとき、信じる想いに心震える、感動のサスペンス。
(公式HPより抜粋)

感想

殺人犯として冤罪をかけられた鏑木慶一の話。
建設現場。フリーライター。水産工場。グループホーム。
5つの顔を持って逃走して潜伏し続けた343日間。
ここからは私個人の見解を含むので、ご了承ください。

世間と社会に板挟みされ続けた又貫刑事の葛藤


彼の真相を追い続けた又貫刑事の様々な葛藤が終始描かれていて考えさせられました。
上司からの圧力によって途中で捜査打ち切りを余儀なくされたり最後のシーンで強制的に突入命令を指示されたり。
しかし、彼は鏑木慶一の居場所を特定した時、銃口を向けるも自ら銃を撃つ事は無かったのです。
どんなに世間が彼を犯人だと思い込んでいても又貫刑事は彼を少しの可能性から冤罪だと信じていた気がしました。
それが最も現れたシーンが、後半に鏑木慶一と最後の面会を終えた後に開催した記者会見において「誤認逮捕」である可能性があったとして全責任を負って謝罪したシーンだと思います。

一貫し続けていた鏑木慶一の人助け精神


そして鏑木慶一の人柄の良さも感じました。
それぞれの逃亡現場で接触した人達は皆が口を揃えて良いやつ。優しい人。尊敬しています。と言っていました。
高校生の頃に冤罪をかけられてとても辛かったと思います。
彼が最終判決前に又買刑事と面会した時、事件当時に逃亡した理由について「この世界を信じたかった。」と無実を証明する為に必死に生きていたんだと思いました。右も左もわからないまま、社会の荒波に揉まれながらも必死に生き抜く彼を通じて、人間としての強さを感じました。

決して他人事ではない「冤罪」問題


そして、冤罪をかけられてから誤認逮捕と判決が下されるまでにこんなにも時間がかかるんだと改めて感じました。
実際に冤罪だと判明したのは逮捕されてから819日間です。
約2年もの時間を、鏑木慶一は世間に自身の身の潔白を表明する為に、必死に生き続けたのです。
しかし、これも彼が死刑判決を下されて刑務所から逃亡して様々な人と関わったからこその結果だから人が人を裁く事の難しさも強く感じました。
冤罪問題は、当事者の尊い時間はもちろん、居場所・人権・人生そのものを奪う残酷な問題であると痛感しました。

藤井組ならではの細部まで拘り抜いた演出

そして、私は藤井道人さん独自の演出にも大きな魅力を感じました。
大阪・東京・長野。この3つの都府県を拠点に鏑木は世間からの目に怯えながら生き続けました。
大阪では砂埃が舞う建設現場が、東京では人混みの中で大雨の中、ネットカフェに向かう鏑木の様子が、長野では真っ白な銀世界に包まれた様子が描かれています。

最後に


横浜流星さんが4年間もの時間を費やして挑んだ強い思いが演技やアクションに全面に出ていてとても見応えがある作品でした。
まだまだ話したい事は沢山あるけど長くなりそうだからここら辺で。
これはこのnoteを閲覧してくださった方全員に見てほしいです。
おすすめです。

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