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靴作りの道具#8『砥石』

今回は、革包丁やナイフのメンテナンスで使用している『砥石』について述べたいと思います。

『砥石』とは?

主に包丁などの刃を研ぐための道具で、刃を鋭利に保ち、作業効率を高めるために不可欠なものです。

所有している砥石

基本的な原理は硬い砥石の表面に刃物をこすり、刃先を研ぎ直すことで、切れ味を向上させます。
製造方法により、主に天然砥石と人造砥石の二種類※1があります。
また、仕上げ具合によって、主に荒砥(あらど)、中砥(なかど)、仕上げ砥(しあげど)の三種類※2があります。


使用用途

靴作りでは、革包丁やナイフを研ぎ直す時に使用します。
革包丁やナイフは、アッパーに使用する厚み約1mm前後の革からアウトソールやヒールに使用する厚み約3〜6mmの革を裁断します。
繰り返し裁断していると、裁断しずらいもしくはできない場合や無理な力をかけてしまうことで刃先がかけてしまう場合があります。
そのような場合に砥石を用いて研ぎ直すことにより、安全に効率よく作業できるようになります。


使用方法

1. 準備:刃物や工具を研ぐ前に、砥石を水や油で十分に浸し、しっかりと湿らせます。(空気が完全に抜け切るまで)
これにより、砥石の表面が滑らかになり、刃先がより滑らかに研げます。

空気が抜ける様子(上:仕上げ砥、下:中砥)

2. 正しい角度の設定:刃物の種類や状態に応じて、研ぐべき角度を決定します。
革包丁の場合、片刃のため片面の刃裏は平らに研ぎ、もう片面のしのぎ面は角度をつけ研ぐことで刃を作ります。

3. 研磨:刃先を研ぐ際は、刃物を適切な角度で砥石の表面に対して保持し、軽い圧力を加えながら、均一な力で刃物を前後に動かします。
この時使用するのは、主に中砥です。
刃がかけてしまった場合は、荒砥から中砥の流れで使用します。

しのぎ面を研ぐ様子
刃裏を研ぐ様子

4. 確認:定期的に刃先を確認し、研ぎ残しや欠けがないかを確認します。
必要に応じて、研ぎ直しを行います。

刃先の確認

5. 仕上げ:刃先が十分に研ぎ上がったら、仕上げの工程に進みます。
仕上げ砥を使用して、刃先を滑らかに磨き上げます。
これにより、刃物の切れ味が向上し、より滑らかな裁断が可能になります。
仕上げ砥の代わりに、革の肉面側(毛羽立っている面)にピカール※3を塗布して仕上げる方法も簡単で良いのではないかと思います。

刃裏を研ぎ終えた状態
しのぎ面を研ぎ終えた状態

6. お手入れ:砥石を使用した後は、残留物を取り除き、乾燥させてから保存します。
定期的にダイヤモンド砥石を使用し修正する(面直し)ことで、均一な表面を保つことも重要です。

ダイヤモンド砥石

note : 村上紀之



※1:天然砥石と人造砥石について
・天然砥石: 天然の鉱石から採掘される砥石です。研磨力が少なく研ぎ時間が多くなるが、刃先を鋭利に仕上げやすい(返りが出にくい)メリットがあります。
・人造砥石: 人工的に製造された砥石で、より均一な粒度や硬度を持っています。研磨力が高く研ぎ時間が少なくなるが、刃先を鋭利に仕上げやにくい(返りが出やすい)デメリットがあります。

※2:荒砥、中砥、仕上げ砥について
・荒砥:欠けた刃先を修理する時などに使用します。(番手は、80〜400くらい)
・中砥:毎日のメンテナンスをする時などに使用します。(番手は、1000前後くらい)
・仕上げ砥:切れ味を最大限に高める時などに使用します。(番手は、2000以上くらい)

※3:ピカールについて
1916年創業の日本磨料工業株式会社が販売する家庭用の金属研磨剤です。
番手は、4000番に相当するようです。
https://www.pikal.co.jp/wp/>

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