決算書には載らない会社の資産は定期的に価値の棚卸しをする
「決算書には重大な欠陥がある」
今は上場企業の社長になられている経営者がおっしゃっていました。
その経営者曰く、「決算書では会社の大事な資産であるヒトが人件費という費用項目でしか表現されていない!」
このお話を聞いた当時はまだ株式公開を目指している段階だったのですが、会社は数年後に無事株式公開されました。
人材を単に人件費として見るか、会社の大切な財産として考えるか。
売上高や利益など、決算書の数字で会社の価値を判断するのは、慣れてしまえば、それほど難しいことではありません。そして、数字という共通言語で分析するので、評価する人が代わっても、最終的には同じような結論になります。
一方で、人件費として年間500万円を支出した対象となる社員がどれだけの付加価値を生んでいるのかについては、決算書だけでは分かりません。
また、社員がチーム力を発揮して画期的な商品を毎年のように生み出していても、その価値は決算書の数字を見ているだけでは理解できないのです。
そして、これらの項目は、会社によって、また、市場によって、その価値が異なります。このため、財務分析のように一律に分析し、評価するのが難しいという事情があります。
これらはいってみれば、会社の簿外資産。
決算書の数字は少なくとも年1回、月次決算をやっている会社であれば年12回、会社としても棚卸しして見直しています。
一方、社員がどのくらいの付加価値を生んでいるのか、商品開発チームが将来に向けてどれだけ価値のあるものに日々取り組んでいるのか、といったことは、なかなか棚卸しする機会がありません。
けれども、毎月は難しくても、少なくとも3ヵ月に1回ぐらいの割合で、決算書の数字には反映されないが、自社の価値を高めているものは何なのかを棚卸しする機会は必要です。
まずは自分たちがその簿外資産の価値が分かっていないと、銀行など第三者に説明して、理解を得ることができません。ましてや、最近はAIなどを使って決算書の数字だけでお金を貸す、貸さないといった審査を行うケースも増えつつあります。
決算書の数字だけでなく、決算書に載らない会社の資産も定期的に見直ししましょう。
関連する専門コラムは「資本主義の曲がり角は自社が生み出す波及効果に着目して突破する」。
「決算書には反映されない会社の付加価値を見つけて、事業を続けていくための意義を自覚する」
です。