私の昭和歌謡102 異邦人 1979
この指があなたに届くその時を子供のように信じていたの
シルクロード。
大ブームになったのがこの曲のヒットだった。
最初から異国情緒たっぷりに作られた曲だと思っていた。
でも、違った。
シンガーソングライターの久保田早紀は、並木道で有名な国立駅の風景を見て作ったという。えー、そうなの?
このイントロ。
それまでの歌謡曲では聞いたこともない、不思議な中東風の旋法で作られていた。このイントロがなければ、短調から、同主調の長調へ転調して戻るフォーク調の歌謡曲だったはずだ。
それにしても、国立の並木道とはw
このあと、このシルクロード熱は、5年後に私を、ウルムチ、トルファンへと駆り立てた。
だから40年前の旅行と、この曲はセットになっている。
🎵 子どもたちが空に向かい 両手を広げ
鳥や雲や 夢までも つかもうとしている🎵
なんていい歌詞なんだろう。
スローモーションで映像が目に浮かぶ。
歩くと、どこからか子どもたちが湧いてきて、くっついてくる。
市場でスカーフや香辛料を物色していても、すぐそばに子どもたちがいた。
編曲は萩田光雄。この曲のプロデュースをしたのは酒井政利だ。
彼らは、若いミュージシャンが作りっぱなしの曲を原石を磨くように、全く別の世界観で再現した。大したものだ。
私が好きなのは、転調から戻った時に入る民族楽器のオブリガートだ。さりげなく、聞こえる。
ダルシマーというらしい。シャリシャリした音で、これも編曲の技と感心してしまう。
昭和歌謡のプロデュースは恐れ入りやです。まいったぜ。
🎵 時間旅行が 心の傷を
なぜかしら 埋めてゆく 不思議な道🎵
いつのまにか、私は68歳になってしまった。
すごいことだ。
でも、公立中学校で定年まで教えて、再任用を終えて、今も非常勤をしている。それって、よく生きたことなのかもしれない。でも、実感がない。
私はやり遂げたことがあったんだろうか?
誕生日に、昭和歌謡を1つ選んで聴く。今年は「異邦人」にした。
聞きながら思う。
こんなに生きたのに、まだウルムチの草原や、トルファンの市場を軽やかに歩いているような気がする。
【参考資料】
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