チームラボに宿る”感覚”
※このnoteは武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科クリエイティブリーダシップコースの「クリエイティブリーダシップ特論」という、クリエイティブの力をビジネス・社会に活用しているゲスト講師の方々による講義のレポートです。
5/17の講義では、チームラボ取締役 堺大輔さんにチームラボで大切にしていることなどのお話を伺いました。
Profile
堺大輔 SAKAI Daisuke
1978年、札幌市出身。東京大学工学部機械情報工学科、東京大学大学院学際情報学府修了。大学では、ヒューマノイドロボットのウェアラブル遠隔操作システムついて研究。チームラボでは主に、ソリューションを担当。
(引用:チームラボ https://www.team-lab.com/about/)
このnoteでは堺さんのお話の中から印象的だったことについて書いていきます。
選択と集中を “しない“
チームラボは、Digital ArtとDigital Solutionの二つの事業があるそうです。
不勉強でデジタルアートの事業しか知らなかったのですが、デジタルソリューション事業では、みんなが知っている以下のようなサービスの開発案件も多く手がけているそうです。
▼りそなグループ 「りそなスマート口座」のスマホアプリ
▼JR東日本ウォータービジネス社とアキュアのスマホ対応自販機「イノベーション自販機」
他にもたくさんの案件を手がけられています。→(WORKS)
実はチームラボの社員約700人のうち、約7割がエンジニアだそうです。そして多くのメンバーがクライアントワークをしているのだとか。
色々なソリューション事例をご紹介していただいた時に率直に思ったのは、「なぜチームラボ ”でも” やっているのだろう」ということでした。
デジタルアートでもエンジニアリングは必須だと思うので、デジタルアートでやっていることと、デジタルソリューション事業に親和性はあるとは思うものの、アプリケーション開発やWebサイトのデザイン、UI/UX設計などは多くの会社がやってる分野だと思うので、デジタルアート事業に一本化してしまってもいいのではないか?リスク分散とか収益構造の問題なのかな?などと思いました。
そんな時、別の学生さんが「アートとデザインの両軸をやる理由はなんでしょうか」という質問して下さいました。
堺さんの回答は驚くことに、特に戦略があったわけではなく、“選択と集中“をしなかったから、とおっしゃっていました。立ち上げ期に二つの事業を初めてそのまま今に至るそうです。
結果としてデジタルソリューションで得た大規模開発の知見が、大規模なデジタルアートを実現する時に活かされているそうですが、狙ってやってきたことではないとか。ここまで大きくなった組織だからこそ戦略的にやってきたことなのかと思っていたのでとても驚きました。
堺さんは、”未来はわからないのでそれぞれがその時のベストをつくす”ということを心がけているとおっしゃっていました。
もちろん選択と集中をしない結果共倒れをしてしまっては意味がないですが、両方ともベストを出すことができるなら挑戦してみてもいいのではないか。その共倒れしないギリギリラインの見極めをすることが大事なのではないか。そんなことを思いました。戦略的ではないとはいえ、堺さんにはこの見極めの感覚があったのかなと個人的に感じました。
数値化しない品質
デザイン性を評価するにあたり、どのような項目・基準で判断しているのかという質問に対し、”あえて項目にしない”ということをおっしゃっていました。評価基準としては、「使いやすさ」などがあるそうですが、この使いやすさを数値化したり項目化するようなことはあえてしないようにしているそうです。
チェックシートのように落としてしまうと言語化できない質を落としてしまう恐れがあるということなのかなと思いました。
チェックシートがなくても、チームラボのメンバーはイケているデザイン/イケていないデザインを経験則や感覚的に判断できるそうです。そして良い・悪いの判断がメンバーみんな同じになることが多いとか。
項目として存在しないからこそ各自の感性を磨き、チームラボのクオリティを感覚として体得することが仕事をしていく上で大切なのだろうなと思いました。だからこそ、高いレベルの感性に引き上げるために会社として、個人として、どんなことをしているのか気になりました。
(自分だったらクライアントに納品をするとなると見落としないかな?と心配になってしまいそうなので、項目が無いというのはある程度自信がつくまで結構心理的にしんどそうだなと思いました。笑)
最後に
堺さんのお話を拝聴していて、とても鋭い「感覚」を持っているメンバーが沢山集まっている会社なのかなと感じました。
未来という不確実なものに対して判断するときの感覚、質という言語化できない・時と場合によって変わってくるものに対して判断する時の感覚、どちらも個人に紐ずくある意味科学的ではない感覚なんだろうなと思いました。
そんな感覚がある一定のラインは揃っていて、そして微妙に違う。そんなメンバーが集まるからこそ、クオリティが担保され、さらに高みに登るようなチームとしての感覚が生まれるのだろうな、と見えていない空気感のようなものを想像しました。
あえて言語化しないと堺さんはおっしゃっていましたが、私はそんな感覚を可視化してみたいなと思いました。笑 でもきっと”言語”ではできないのかな。言語以外のメディア・表現方法についてもっと勉強したいなと思いました。
チームラボの展示にまだ足を運べていないので、今度行ってみたいと思います。
20210517 こっぺ
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