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シャーペンに感じた、兄の優しさ。


木軸のシャープペンシル レグノ、色はディープレッドです。
そして文庫本が4冊。以前、図書館で借りて読んだときに面白かった本たちです。

先日これらを、誕生日プレゼントとして兄からいただきました。
より正確に言うなら、買ってもらった、ということになりますか。
1万円以内で欲しいものを買ってあげるよ~とのことで、予定を合わせて行ってきたのです。

僕の兄は遠方で一人暮らしをしていまして、お互いに仕事の休みも不規則なため、会えるのは年に数回ほど。
誕生日プレゼントとは言いつつも、丸一ヶ月遅くなったのは致し方ありません。

この日も近くに来る用事があったらしく、そのついでという感じではありますが、なんにせよ有り難いものです。
そんな数少ない機会ですから、貰うものだけ貰ってさようなら~では寂しいので、ネット通販で買えば済むものをわざわざお店に買いに行ったとて誰に責められましょう。
地域経済に貢献という言い訳はできますけども。

兄には愛車の整備をお任せしていますし、たまに人生相談に乗ってもらったりもしているので、勝手に尊敬しつつも慕っています。
更には聞き上手で、一部の趣味が合うというのもあって話しの種は尽きませんから、会うのはそれなりに楽しみなのです。
そんなわけで、2人であれこれ話しながら買い物をしていれば時間が経つのはあっという間、名残惜しい気持ちに蓋をしてこの日はお別れしました。



ところで、シャーペンなら買ってもらう前から持っていましたし、そもそも一度に持って書けるのは一本だけ。
それならばわざわざ買ってもらわずとも良さそうなものではありますが、どうにもその魅力には抗えなかったのです。

件のシャーペンと出会ったのは、2、3ヶ月前に大きめの本屋さんへ行ったときのこと。
時間があったので店内を徘徊していたら、文房具売り場で見つけてしまいました。

当初はS20が気になっていたのですけれど、その左隣に並んでいたレグノを何気なく手に取って見たのです。
木軸なのはS20やS30と同じ、けれど全体的に意匠は異なっていまして、言い方は悪いですが少々地味な雰囲気。
華美な装飾は施さないシンプルな外見で、三菱鉛筆のピュアモルトと似通っています。
しかし、

──なにこれ格好いい!

そこに強い魅力を感じました。
思わず衝動買いしそうになりましたけれど、お値段もまあまあ素敵なのです。
ピュアモルトを二本買ってもお釣りが来るくらいなので、正直、シャーペン一本にここまでは出せないかなというのが本音でした。
加えて、既にシャーペンがあるところへまた新たに買うなんて無駄遣いも甚だしい、そんな思いも手伝ってこのときは購入を見送り、本だけ買って帰りました。

その後も欲しい気持ちは続いたのですけれど、なかなか買えないまま時は過ぎて11月も終わりの頃。
預けていた愛車の修理その他を終えて、兄が引き渡しに来たのです。

忙しい中をわざわざ来てくれた上に、
「誕生日プレゼントに欲しいものがあれば買うよ。すぐに思い浮かばないなら後でも良いから」
と言ってくれました。
その気持ちはとても嬉しかったのですけど、しかしその時点では申し訳なさと少しの意地なんかもあったので遠慮しようかと思ったのです。
とりあえずこの場はやり過ごして、あとは忘れた体で連絡もしなければそれで済むかな、なんて。
ところが、兄が帰った後に思いついてしまいました。

──あのシャーペンを買ってもらえばいいのでは。

なんと恐ろしい。いくら自分では買えないからって、他人に買わせようとするなんて!
でも、ある意味では理に適っている気もします。
プレゼントされて嬉しいのは、“欲しいけど自分ではなかなか買えないもの”ではないのかなと思うからです。
もちろんそれに限らずではありますが、一例として。

そう考えますとシャーペンでも十分に“あり”、欲しかったものには違いありませんからね。
そして後日、少しの打算と遠慮、喜びなどを含みながら兄にメールを送り、それから一ヶ月弱経った頃に念願叶って僕の手元にシャーペンがやってきたわけです。

それの何が嬉しいって、欲しかったものが手に入ったのはもちろんですけど、それ以上に“誰かが僕のために買ってくれた”という事実が有り難いのなんの。
何もしなくても生きているだけでいいよって、存在を肯定してくれたように感じられて、じんわりと温かい気持ちになりました。



正直に言いますと、歳が離れているのもあって小さい頃は兄のことが苦手でした。
確信は無いものの、兄も僕のことは鬱陶しく思っていたのではないかと思われます。
特に思春期の頃なんかは行動の端々に現れてましたし。

でもここ数年は、自分の都合や利益などそっちのけで度々良くしてくれていますし、僕は僕でそれが嬉しくて何かと頼りにしています。
自分だって色々と大変なはずなのに、会うときにはそれを微塵も感じさせない姿には本当に感服させられるのです。

僕に足りない部分を多く持ってもいまして、まさに目標としたい人物と言っても過言ではないくらい。
身近にそんな存在がいることは、もしかしたらとても幸運なことなのかもしれません。

今まで受けた恩と、これからも受けるであろう、その優しさ。
全てを返しきれるとは思いませんが、感謝の気持ちでもって少しずつでも還元できるように、僕も優しくなれたらいいなと、そう思うのです。

なんのはなしですか。

木軸シャープペンシルは3本に。




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