ピンチがチェンスになってしまった
41歳で小脳梗塞になって、リハビリに困って、しょうがないから自分で遠隔リハビリをつくった人の話
日本中にいる患者様にリハビリを提供する為には、遠隔が必須となった。
実は私、1度だけオンラインでリハビリを受けたことがある。先生はとても苦労していた。私も苦労した。この時オンラインで、新しいことを教える難しさを実感した。
そこで今回、新しいことを教えることはやめてしまった。だってそうじゃないですか?例えばヨガの授業を受けるとします。先生がいきなり画面越しに「わしのポーズ」をしたとしましょう。こんなの見るだけで真似できますか?できるわけがない。できたら天才。先生になった方がよい。
その問題克服のため、動画をフルに活用することにした。利用者様1人1人に作った自主トレ動画である。この動画ならば教える側・教わる側ともによく理解している。あくまでオンラインレッスンは、この動画ができているかのチェック。できていれば新しいリハビリにステップアップしてもらった。
次は体験者様探しだ。遠隔でリハビリを受けたい方なんて、中々いないだろう。まずは近所に住む男性に声をかけた。お名前は内藤さん。近所の喫茶店に来てもらい、体験内容についてお話した。この方は休職中で就労移行支援事業所に通っていた。正直遠隔でリハビリなんて、意味が分からなかったと思う。話を聞いた内藤さんは、そんなことより私が社長になったら運転手にしろという。もちろん冗談ですよ。私も了解したと冗談で返し、参加を決めてもらった。かなり強引。ちなみに内藤さん。私の運転手にはならず、今は一流企業に復職されている。
他の参加者は、脳卒中フェスティバルのメンバーにお願いすることにした。お1人は私を脳フェスにつないでくれた恩人。なおさん。もう1人は同じグループに所属されている須藤さんであった。お2人とも私の言っている遠隔リハビリなど、正直意味が分からなかったと思う。
さらにその後なおさんのご紹介で、もう一方ご参加いただくことになる。お名前は茶太郎さん。この4人がいなかったら、今のCOPAINはなかった。4人には本当に感謝・感謝。
まず1人目の体験者は、なおさん。この方は脳フェスの主力メンバーであり、復職をされたばかり。かなりお忙しい中で参加をしてくれた。
初回のオンラインカウンセリングを、田中先生と藤井先生におこなっていただいた。事前に提出いただいたデータとオンラインでの問診で、医学的に身体的チェックをおこなっていただく。なおさんの最終目標をお聞きし、そこから何をするべきかを導き出してもらった。導き出されたリハビリメニューは5つ。この5つを藤井先生と同僚の方が撮影、私が編集という形で当初はスタートした。
動画編集は困難を極めた。まだこの時は型が上手くできていなかったので、1本作るのに7~8時間以上かかっていたと思う。特に今回送られてきた5本のうち、1本が編集をしてみると20分以上の大作になってしまった。皆さん知っています?動画編集するじゃないですか。それをビデオとして利用者さんにお渡しできるように、出力という作業をします。能力の低いパソコンの場合、この作業にかなり時間がかかります。色々な装飾をして、音楽をつけて、20分の動画を出力する。当時の私のパソコンは聞いたこともない悲鳴を4時間以上叫びながら、やっとのことでこの作業をおこなっていた。とんでもない。パソコンが潰れるか、私が潰れるか、何より仕事になんてならない…
しょうがないのでパソコンを買うことにした。こんなにも変わるものか?文明ってすごい。自転車からF1カーに乗り換えたぐらい素晴らしかった。
動画を提供し、リハビリがスタートした。まずは第1回目のWebリハまでの2週間。チャットで毎日報告をいただき、藤井先生がアドバイスと励ましをおこなう、これでうまくいくと思っていた。これがとても甘かった。この問題点をまず先にお話ししておく。
まず1点目はリハビリ量。動画は5本で50分以上の構成になってしまった。リハビリ病院でおこなうには適切な量である。しかしながらなおさんは、脳フェスの活動も忙しく、復職もされたばかり。家事もおこなう。優しく真面目ななおさんは、遅くまで1時間近くのリハビリを行ってくれていたのだった。
2点目は課題の高さ。1本の動画がご本人にとって、今まで行ったことがない領域であったのだ。この問題の対策は、最終体験者まで続いた。こちらについても触れておくと、リハビリ量を10分/日程度に抑えることと、動画完成前に必ず本人にできるかどうかチェックしてもらうこととした。
私達が求める、長く継続できるリハビリには色々起動修正があったのですよ。多くの犠牲の上にできているのだ。1番手のなおさんには、「すいません」としか言いようがない。感謝。
毎日リハビリをおこない、チャットに報告していただく。単純だが効果は高かった。大変なことを1人で行うには限界があると思う。ダイエットもそうじゃないですか。1人で戦える人って一握りだと思う。Aさんは毎日コツコツと報告を入れてくれた。それに対し藤井先生は親身に返信をしていただいた。この関係が大切なのだと思った。もちろん毎日対面で受けられるのがベスト。でもそれって現実的ではない。この小さなやり取りがとても重要なのだと思う。逆を言うとチャットボットがこの作業をやってくれれば、当社はウハウハ儲かります。でもそんなもの受ける気がします?例え100%性格な回答をする機械があったとしても、それは違う気が私はする。
1週間目のWebリハで、なおさんから1つの動画が、かなりハードルが高かったとお話いただいた。すぐにリハビリ方法を修正することにした。また長い、長い20分の動画を短縮した。私達は病院でおこなうリハビリを極力提供したい思いであった。が、生活空間でおこなうリハビリは少し認識を変えなければならないと学んだ。この時から強く意識したのが「細く長くできるリハビリ」。もちろん価格的な面ではずっとそう考えていたが、リハビリ自体もそうでなければならないと強く感じた。
それからさらに2週間。本当になおさんが、頑張ってくれた。一番うれしかったのは、お店で靴紐にチャレンジして結べたというご報告であった。もちろん今回のリハビリだけでできたわけではないと思う。日頃からの努力の賜物だと思う。ただ1つでも良い報告が聞けたことは、私達にとって大きな幸せだった。
もう1つ。このリハビリの肝は、藤井先生との毎日のチャットだとお話いただいた。1人ではへこたれるが、毎日報告しなければならないという軽いプレッシャーも必要だとのこと。大きな気づきをいただいた。
まずは1人目の体験者、なおさんが終了した。正直1番手、かなり大変だったはずだ。鬼のようなリハビリ量、自分のやったことがない領域。ご迷惑をおかけしたが、その後の大きなヒントを頂いた。
リハビリは質も大事だが、量が一番大切だと私は思っている。それは自身の経験。頭と身体が悲鳴をあげていた中で、鬼のようにやってきた経験。だってそうでしょう?大谷翔平だって毎日努力しているわけですよ。ただ、どうだろう?鬼のようなリハビリを長期的にできるのはごく1部の方。いや、いないのかもしれない。自分だって終わりが見えない特訓は受けたくない。ただ他人が期日を区切ってしまうのも、私はどうかと思う。短期集中のリハビリで良くなる方がいるのも事実。でもそうならない方がいるのも事実。そんな方に寄り添うリハビリがあっても、良いのではないかと思ったのだ。なおさんに感謝、感謝<m(__)m>
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