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第2部 どん底まで落ちてしまった

 私は大学院でMBA取得後も、起業ができずにいた。ただし仕事をしながら、ずっと起業の準備は続けていた。自分が悩んだリハビリ問題を解決したい。ずっと気持ちだけは変わらなかった。
 2021年夏におこなった概念実証(PoC)は大失敗に終わった。通院患者の身体的状況に合わせてカスタマイズ動画を作成し、お渡しするというものであった。リハビリの足らず分を自主トレーニングでカバーしてもらおうと思ったのだ。
 概念実証は熊本にある武蔵ヶ丘病院でおこなっていただいた。本医院の田中先生とは、少し前に知り合ったばかりであった。
 リハビリ医である田中先生のYouTubeを偶然拝見した私は、衝撃を受けた記憶がある。今まで私の周りの医者は、私からリハビリを取り上げることばかり考えていた。しかしながら田中先生は、患者のリハビリを守るために情報発信をおこなっていた。こんなチャンスは逃してはならないと、私は大学院で作成した事業計画のプレゼンビデオを田中先生にダイレクトメールしたのがはじまりであった。
 概念実証は療法士の藤井先生を中心に、全面的なサポート体制の中でおこなっていただいた。普通じゃ考えられない。藤井先生は臨床での実績はもちろん、研究の分野でも華々しい経歴をお持ちだった。人生最高。俺の思い通り。
 ただしそんな考えはあっという間に間違いだと気づいた。概念実証中から分かっていたが、終了後に体験者様から頂く厳しいご指摘。そりゃそうだ。今考えたら私だって同じことを言っていると思う。人生最低。俺はゴミ。
 体験者様から頂いた意見を元に、ない頭を振り絞った。1ヵ月以上悩んでいた。田中先生や藤井先生にもご意見をいただきながら、色々考えてみた。
なんだかもう、全く分からなくなってきた。リハビリに困っている人なんて、本当はいないのかもしれない、そんなことも考えていた。でも諦めたくなかった。
 そんな時ふと思ったのが、自宅で病院のリハビリができないかということ。素人ならではの何とも馬鹿げた発想。正直遠隔したいから、始めたわけでもないのです。
 具体的なリハビリ内容は、田中先生と藤井先生に教えていただいた様なもの。
・オンラインで初回カウンセリング
・自主トレーニング動画を患者ごとに作成
・チャットで自主トレーニングを毎日フォロー
・定期的にオンラインで状況をチェック
・各種レポートで結果を見える化
大まかにはこの形でいくこととした。
 次にこだわったのが動画。私自身動画編集なんてしたことがなかった。前回の概念実証の編集は、それはもう、とてもとても酷いものであった。今見ると虫唾が走る。
 まずは田中先生からいただいたアドバイスをもとに、エクササイズ系YouTubeを見つくした。エクササイズもせずに見つくした。ポテチを食べながら見つくした。なぜかエクササイズ動画を見ながら、私はどんどん太っていった。
 皆さん、タケマリって知っています?有名なエクササイズ系YouTuberです。私はこの作業がなければ知ることもなかっただろう。フォロワー345万人って何?もう国家じゃん。
 構想が決まり、プロに動画の基盤を作ってもらうことにした。「えっ、何この値段。払えるわけないじゃん!」もう自分で作るしかない。
 ただそれはもう、とてもとても酷い動画を作っていた私。すぐに作れるわけがない。よし学校に行こう。「えっ、何この値段。払えるわけないじゃん!」
 YouTubeを見て作り方を学ぶしかない。もうねぇ、動画付けですよ、毎日。寝ても覚めてもYouTube。下手な学生より見ていたと思う。会社行って、YouTube見て、寝る。もうその繰り返し。
 ただそのおかげで、エクササイズ系YouTubeで使われている装飾や音楽などはほぼマスターできた。興味がないことにここまで時間を注げたのは、絶対にリハビリに困っている人が沢山いると思ったから。別に動画編集で食べていこうとは思っていないのですよ、もちろん無理ですが。
 正直今でも不安だらけ。私のエゴなのかもしれない。でも患者に継続できる価格帯で、リハビリの専門家の個別レッスンを届けたい。この気持ちだけは今も変わっていない。

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