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コーヒー豆の生産国と品種


生産国の特徴

コーヒーの生産国というとどこをイメージするでしょうか。地理の統計問題で生産量が多い国として覚える、ブラジルでしょうか。それともスマトラコーヒーのイメージがあるインドネシアでしょうか。はたまたコナコーヒーのハワイでしょうか。もしくは、かの有名なゲイシャのパナマでしょうか。これらの国には共通している特徴があります。

それは、暖かい(というか最早暑い)気候で乾季が存在しており一定の標高に達している、ということです。厳密には乾季がなくても生産する方法は確立しているため、乾季がなくても生産可能なのですが、伝統的なアラビカ種のナチュラル製法でいうと乾季の存在が必須の生産条件になります。ケッペンの気候区分でいうとAwです。〈ちなみに赤道直下の乾季のない気候帯は気候区分でいうとAfですので、Af(インドネシアやブラジルの一部地域が該当)から少し南北にずれた地域がAwにあたります。余談ですが、Afの"f"は"fail"の略で、乾季が欠けている(failしている)ためその呼称となっています。(wは冬が乾季という意味でwinterの略)〉また、標高が高く寒暖差が大きいほど成長が緩やかであることから、種子の密度が高くなり、風味が出やすいといった特徴があります。(香りで有名なゲイシャ品種は標高の高い地域で収穫されています)

生産国内での地域差

焙煎度の記事でも紹介していますが、標高および気候(コーヒーの世界ではミクロクリマと呼びます)によって香りや味わいが変わるので、同一生産国の中でも緯度の違いや標高によってかなり味わいに変化があります。後述する品種の話もこれに被ってきますが、標高が高いほどに酸味がありフレーバーが豊かな品種が多く、逆に低いほど質感(苦味やバターのような甘い香り)に富んだものが多い傾向にあります。そして、その酸味を有するフレーバー豊かな品種は大抵エチオピア原産のアラビカ種の突然変異によって発見された品種です。つまり、エチオピア原産の豆が世界各地にもたらされる中で、標高、気候、土壌、周囲の植物等の影響を受けてその土地に合わせて風味が変化していったという具合です。

例えば、世界で最も生産量の多いブラジルでは、標高1,000m未満の位置で育つ豆と1,000m超の位置で育つ豆が存在します。(正確にはどちらでも育つけど、どちらかの方が特徴が出やすい豆というべきかもしれないですが・・・)前者の標高の低い位置だと、やはりあまり品質の良くない豆が生産される割合が多いと言われています。そういった背景もあり、そのような地域ではスペシャルティというよりは標高や気候を問わず育ちやすいロブスタ種が収穫されることが多いです。

これはインドネシアやベトナム等の赤道付近に位置する生産国の殆どに対して言えることで、これらの国に於いては殆ど生産地域の標高によって農家が栽培する品種や風味に差が出ると言って差し支えないでしょう。

国・地域別の特性

エチオピア原産のアラビカ種から枝分かれして世界各国で誕生した代表的な品種は、各地域のそれぞれの農園でその独自の特徴を出して育っています。大きく括ると、ティピカブルボン(正確にはブルボンもティピカから生まれていますが、その二つが源流となる品種が多いことから分けています)に枝分かれし、その中で品種交配が進み様々な品種が誕生しています。ちなみに、世界で最も有名な品種のひとつであるゲイシャは、エアルームというティピカとは異なるエチオピア原種から派生していると言われています。

これだけ読むとエチオピアが大変偉大で、他の国は全て二番煎じのように見えると思いますが、実際に世界で最も流通するアラビカ種はこの二種(ティピカとブルボン)で、中南米でもこれらを中心にその他交配種も栽培されている、というイメージです。例えば、ブラジルでいうならばムンドノーボという品種がよく扱われており、標高1,000~1,200mほどの地域で生産されるものですが、これもティピカとブルボンの自然交配種です。ちなみに、よく扱われる別の種であるカトゥーラはブルボンの突然変異種ですし、カトゥアイはカトゥーラとムンドノーボの交配種であり、いずれも元を辿ればエチオピア原産のティピカとブルボンから派生したものです。

ですので、基本的には国地域別の得意品種がある、というよりは各品種が交配や突然変異によって生まれ、生まれたものを別の国の風土に持っていったら、その土地に適合して味わいや品種が進化していった、という話なのです。つまり、自然淘汰の中で生き残った種が独自に成長を遂げ、「その土地独自の味わいを出すコーヒー」となっているわけです。

この話はコーヒーが農作物であるが故に意図的に生み出せる味わいの割合が比較的低い、ということがポイントになると思います。またウイスキーの話で恐縮ですが、ウイスキーは蒸留方法、熟成樽種別、熟成年数、ブレンド割合等、人為的なコントロールで味がかなり変化しますが、コーヒーは農作物であるがゆえによりその土地の風土が味わいとして出やすい、と言えるかもしれません。ここが面白いところだと個人的に思っています。

各品種の風味と味わいの方向性

前述の通り、基本的にスペシャルティコーヒーの全てはエチオピア原産のアラビカ種に由来する兄弟分(というか息子かもしれませんが)と位置付けられており、華やかな香りで有名な品種は、突然変異としてどこかのコーヒー畑の一角で登場したものを"○○種"として育てているケースが多いです。

とはいえ、そういった"新品種"も、別の国に行けばまたその国で生まれ変わります。したがって、品種×生産国である程度風味に予想をつけていく、というのが味を理解する際の方向性としてひとつの正解と言えると思います。例えば、コロンビアで栽培されるゲイシャ種であるなら、「コロンビアらしさ」という意味では酸味と甘みが強く、ボディと力強さもそれなりにあるバランスのとれたイメージですが、「ゲイシャらしさ」でいうと酸味と甘みが際立っている種類なので、有名なパナマオリジナルのゲイシャと似ているがややボディ感や力強さが残るのでは、といった具合で予測できます。

ちなみに、各地域別の味や生産地域の概要を知りたい方は、スペシャルティコーヒー大辞典という本がおすすめです。

味の表現の仕方は人や地域でそれぞれあるのですが、スペシャルティを語るうえではフレーバーホイールなるものが存在するので、今度は改めてフレーバーホイールと各品種の味わい(とされている評価)を紹介させてもらえればと思います。



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