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【西成】伝説級の立ち飲みホルモン@やまき【閉店】

はじめに

 みなさんこんにちは!
惜しまれて閉店した後も語り継がれるお店ってそれ程に愛されていたのかと思う程、話す側も聞く側も心地よく語り合えていいですよね。
私も大阪旅行中に立ち飲み屋を探している際にとっても思い出深いお店に出会い、そして閉店する2024年までに数度来店したことがありました。
この記事では大阪は西成の立ち飲み屋さんで体験した事を記していきます。

お店の場所

 今回ご紹介するのは「やまき」です。
阪堺線今池駅のほぼ高架下にあり、西成のランドマークでもあるスーパー玉出の近所で、通りでいうと萩之茶屋本通り商店街の東端にあたります。
オレンジの庇に小さくやまきと書いてあるのでシャッターが下りている時に歩いても所在が分かりやすかったですね。
お店の周辺は一応商店街なので道を一本逸れた南北エリアの注意ゾーンよりは人通りも多く多少の安全が担保される雰囲気ですが、それでも初めて訪れた2012年はやはり西成の空気が衝撃的で緊張感に震えていたのを憶えています。
当時は商店街南側に位置する通称三角公園などは不用意に立ち寄らない、などと某ディープなエリアを紹介するサイトで予習していた為ちらっと見てはそそくさと商店街へ踵を返したものです。
そうそう付近交差点に謎の不動な方がいらっしゃって通る人を舐めるようにチェックしていたなぁ、これぞドヤ街の風景。

店主さん2018年当時

お店自体は私が初めて来店していた当時の2012年あたりは14時から開店していて、21時迄営業というのをマスターから聞いたことがあります。
夜は年を追うごとに挙って立ち飲みに来る来客が多くその後の西成散策で素通りしても21時以降も客足が途切れず営業をしていましたので、マスターはある程度客足が引くまではのんびりとお店を開けていたようです。
店頭での飲食だけでなくテイクアウトもあり、旅行の最終日に開店まもなくうかがってホルモン串を持ち帰りと伝えると容器に入れ新聞紙でくるんでからビニールで包んで持ち帰りができましたね。
このテイクアウトも当日知ったのではなく以前こちらで飲食しているとマスターが鉄板に並んだホルモンとは別に新しく焼き始めたのを見て「結構焼きあがった串あるのにな」と思ったのですが、焼き上がり少しすると強面の方が焼きあがったホルモン串の包みを受け取っていたのを見ていました。
これであぁお持ち帰りもできるのね、と理解したのですがあの強面の方も自宅で食べるのねとは思ったところですが、よくよく考えてみるとただのお使いだったのかも?
付近に住まう方々の性質を鑑みると兄貴分や親分が食べたかったのかな、とも思ったりして。
バックパッカーの外国人が安宿を求めてドヤ街に新しい風景として交じり始め、YouTubeで西成界隈の情報が漏れだす以前の私が歩いた当時はまだまだカメラを回したり女性が独り歩きするのも危ぶまれる状況でした。
外観だけでも撮影するにかなり周囲を気にして極力人の映り込みが少ない被写体を収めましたし、せめて取れるのが鉄板を背景に串を撮るぐらいだったなぁと、今思うと2010年代前半はまだまだ雰囲気ピリピリしていました。
それぐらい商店街も含め周囲を歩いていると誰かしらに見られている緊張感がありましたね。

いただいたお料理

 やまきのメニューはシンプルでホルモンとキモの二種、ホルモンは豚の小腸でキモは豚のレバーね。
お酒はビール、チューハイとカップ酒でビールはスーパードライ、チューハイはハイリキのレモンでカップ酒は日本酒の銘柄注文したことありましたが失念。
2020年代に入ってからは伺ったことが無かったので更新されているかは不明でしたが多分メニューはそのまま、消費税などの関係で段々と値上がりしていき壁のメニュー表で時の移ろいを感じる事ができました。
私が初めて伺った2012年はホルモンとレバーそれぞれ一串60円、お酒は250円前後でビールが少し高くチューハイの方が安かった記憶。
串4本とチューハイでワンコイン500円で収まったのを憶えています、食べ応えあるのでこれだけで満足できちゃうんですよね~。

お酒は缶でチューハイとビールが選べる

YouTubeのチャンネルで知名度が更に上がり注目されるそれまでは込んでいてもそこまで大混雑という事もなく、少し待てば鉄板前が空いてすっと入れば左右の方も常連さんで理解ある方なので大きく場所をとる事無くすんなり利用できました。
マスターだけでなく常連さんもやまきのあり方をしっかりご理解されているだけあり寛容で言葉を交わさずともしっかりと配慮してくださる優しい世界。
とはいえ年々注目を浴びる程に大人気なお店になってしまってやまきの周辺は近づく事さえおぼつかない人だかりで、最後に利用した2018年は通る度に道路に人が溢れ空いていれば入ろうなんて甘い考えでは鉄板に辿り着けない程でしたね。
夜の西成をぐるぐると散策して少し客足が減ったあたりの21時過ぎにさっと入ってちょいとつまんで宿に戻ったのが最後だと思うと人気店に上り詰めてしまう事でささやかな楽しみが失われてチョイとしみじみ。

ホルモン串①

とそんなやまきで頂いたお料理をご紹介。
先ずは看板メニューのホルモンはもっちり系のモツで、全国区でいうともつ煮に入っている小腸ね。
ボイルした後串打ちして仕込んであって大きなクーラーボックスに入れお客さんの状況を見ながら少しずつ取り出してたくさん作り置きをしないスタイル、なので鉄板に置き去りにされて硬くなってしまうとかはなく常にマスターが焼く風景が楽しめるんですよね。
レバーは串打ちしてあるタイプではなく一人前ずつぐらいの大まかに切られた状態でしまってあり、オーダーが入るとデロンと鉄板に広げ焼き始めることが多かったです。
これはホルモンに比べレバーの方が火が入った後加熱が進むと水分が抜けてスカスカになったり硬くなって感触が悪くなってしまうからですね。
こちらも適宜取り出しては鉄板に並べ串と違い置くだけでなく鉄板上でへらで一人前ずつを更に一口サイズに切り分けてから調理を始めるんです。
そしてここからがやまきに立ち寄りたくなる醍醐味なのですが、どちらのお料理も鉄板に並べた後バケツからタレを掬ってざっと食材に掛けて味付けをしていくのです。
この時に立ち上るジュ~という音と共に香りが漂い周囲にとっても食指の動く美味しいもの焼いてるよ!というサインが嗅覚で嗅ぎ取れるんです。
この香りがたまらなく引き寄せられる要因にもなるのですがそれを鉄板の前に立ち目の当たりにできる瞬間が旅行中という事、西成という非日常空間にいる事と合わさりこれほど感動したことが無かったなぁ。
そして食べる際のお楽しみは「謎のたれ」なんです。

焼き台レバー、ホルモン右に謎のタレ

鉄板の隅にバットを置き明らかに辛そうな粉が乗っている赤いタレを付けるのがやまき流。
このたれを紹介している動画も有ったり、やまきが好きすぎてタレを再現しましたみたいな方がいる程の魅力あふれるたれ、これがまたおいしいんです。
しょうゆベースのたれににんにくと赤トウガラシをふんだんに入れたさらっとした液体の割にこってりした味わいが印象的。
これを付けることで焼く際のあっさり目なたれを更にコーティングしてホルモンとレバーが輝くんですよね。
衛生上二度付は禁止ですがそれは皆さん承知の上、だれもルールを守らない人いませんでした、さすが。
そして何度か来店して初体験した裏メニューも一度だけ食べたことがあるんです。
それが「アブラ」なんです。
このアブラ、私が見た風景でのメニュー表には載っておらず知っている人だけが頼んだり、偶然ホルモンの一番下に刺さっているのを食べて初めて気が付くんです。
正式にはこの部位を菊アブラというらしく、小腸の一部の脂身の部分らしいです。
とれる量が少ないせいか仕入れの関係上たくさん提供できないのかメニューに載せていないのかも、と考えてみましたが知っている方が注文するとクーラーボックスから出てきたりたまにホルモンにさしてあったりとイレギュラー感がありましたね。
かく言う私はホルモン串が明らかに大ぶりな一串を見つけこれはお得!なんて手に取ってみたのが初めて。
それを食べた時も菊アブラという存在を知らなかったので後になって調べてわかったのですが、知らずに食べた第一印象は「すごい脂の塊」でした。
ホルモンについている脂の比ではなくスーパーで置いてある天然の「牛脂」と同じように油の塊なので食べた瞬間のもったりした脂の感じがとっても印象深い。
そこまで脂っぽいものが好みなわけではないので想像以上の脂加減にこれはA5ランクのステーキ肉をたくさん食べているかのような満腹感に襲われたのは今でもよく覚えています。
これを一串全部アブラだったら食べられないな、と思って丁度良い体験ができましたね~。

ホルモン串②

たしかお値段ホルモンと同じでしたが、菊アブラのみの場合はどうだったのかしら?それは不明です。
なんて2つのメニュー3つの部位だけでこれだけ楽しめる立ち飲み店なんてそうそうないよね、とディープな世界を過ごしたのでした。
会計時は食べた串の数とお酒の銘柄でマスターがさっと計算、レバーは串に刺さって無かったよね?と思う方、大丈夫です。
レバーは焼いた後一人前をへらで寄せてくれるのですがその際にレバーに串を刺してくれるのでわかるようになっているんですよね。
更にすごいのは込みすぎて鉄板からあぶれた方々も道端で食べていますが、食した後も串を捨てずに持っていて「ずる」せずしっかりお会計している様子が微笑ましい。
お客さんとの会話には極力関わらないマスターが黙々と調理し淡々とお会計する風景がまたいい味出していました。
全体的に長居する方もいらっしゃらなかったのですが、たまにずっと飲み続けて缶の量が凄まじい方もお見受けして楽しい時間過ごしているな~って羨望のまなざしを送ってました。
やまきに憧れ同業の中でも同じスタイルで営業する方や似たようなメニューを提供したりと影響力の大きなお店だったんだなぁと閉店してから思うと感慨深いものがありますね。
そんな魅力的な西成ディープを体験させて頂いたやまきさんでした、ごちそうさまでした~。

おわりに

 いかがだったでしょうか。
2024年現在大阪旅行のついでに立ち寄ってみましたが跡地はシャッターが下りたままとなっていたのを確認しました。
どれほどの期間営業していたのかは不明でしたが、年を追うごとに西成の風物詩となって現地の方以外の訪問、ひいては遠征して迄食事に来るほどの大人気店になっていたのを大阪旅行の旅に目の当たりにしました。
西成周辺では変わらず商店街の一角にある精肉店が同じようなホルモン焼きを提供しているので、やまきの残像を追いかけたい方にもまだまだ西成に行けばそれに似た味わいにありつけるチャンスがあるかと思います。
あのピリピリした空気の中食べるホルモン串はもう体験できませんが、この記事を読んで私と同じ気分になれたら幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました🐾


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