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【MLC】プロローグ/本能

おそらく数年前から、ミッドライフクライシスの兆候を本能的に感じていたのだろう。それが今年になって顕在化した…ただそれだけのことだ。

2024年5月、僕は仕事をするということに対するモチベーションを完全に失ってしまった。理由はいろいろあるにせよ、とにかく仕事のすべてが馬鹿馬鹿しくなってしまった。同時に「今の働き方・生き方を根本的に見直さなくちゃいけない!」と痛烈に思った。そして…会社を辞めた。
けれど、一家の大黒柱である以上、稼ぎを止めるわけにはいかない。藁にもすがる思いで、いやそれ以上に「仕事へのモチベーションの回復」を文字通り「賭けて」転職した。仕事をしている自分と本来の自分とのアイデンティティが極めて近いと自認する僕にとって、「職を失う」とはすなわち「アイデンティティの喪失(無価値=死)」を意味するくらいに思っていたからだ。それくらい、僕は追い込まれていた。

しかし、新たな仕事は長くは続かず9月末に退職した。僕が個人的に抱えた苦悩を知る職場の同僚(キクちゃん)は本当に良い男(ヤツ)で、「ダンディ(仮名笑)、4か月もよく戦ったよ!」と最大級の労いの言葉で送り出してくれたことが本当に嬉しかった。ただ、5月末に人生のどん底にいると思っていたその先に、さらなる底が控えていようとは思いもよらなかった。

9月末で退職後、それまでひと月以上も不眠に悩まされていた(眠り方すら分からなくなってしまっていた)ので、とにかく何も考えずに寝たかった。だから10月からは「期限を決めず、働くことから離れて休養し心身の回復を図る(「キャリアブレイク」という素晴らしい言葉に出会う)」ことに決めた。職を失うことは恐怖ではあったが、それ以上に心身が…いや生命が悲鳴を上げていたのだろう。あの時、すんでのところで生命の方を選択したことだけは、自分に対して「本当によく頑張った!」と言ってあげたいし、妻や子どもたち、両親には心から感謝している。そして、ご先祖様には手を合わせる毎日だ。(職場の皆様には大迷惑をかけてしまって大変申し訳ないと思っている)

10月に入ってからも、しばらくは焦燥感で落ち着かない日々だった。何をしたって問題が解決したり、不安が解消されるわけではないと分かっているからだ。なので…とりあえず散歩をしたり、煙草を吸ったり、バナナを食べたり…とりあえず車に乗って、とりあえず右へ曲がったり、左へ曲がったり…本能…まさに動物的な本能で行動していた。
また、気の置けない人たちに会いに行って、自身の現状を話しに行くことも度々あった。彼らにしてみれば突然やってきて自分語りをし始めて迷惑な話だっただろう。「コイツだいぶ病んでるな」ときっと思いながらも、皆優しく僕の話に耳を傾けてくれた。その中の1人に僕が慕う義兄(フミヒコ)がいるが、彼は良くも悪くも楽天的な自由人で、思い詰めた僕のことを「脳ミソ増し締めマン」だとあだ名を付けて有吉ばりに笑った。それを聞いて「脳ミソのネジ緩めなきゃ」とクソ真面目に思ったものだ。

10月も半ばに入り、気持ちの良い秋の空気を感じ始めるころから、なんだか僕の気持ちに前向きな変化が表れてきた。とりあえず、転職サイトに登録してみよう、焦って転職しないことを前提にエージェントと話してみよう、前からやりたかった勉強をしてみよう…目先にやること(目標)が出てきたので、僕はホニャララ珈琲店各所に通い始めることになる。この頃には、自分が無職であることに何の抵抗も、恥じる気持ちもなくなってきていた。もとより誰も僕のことに関心なんてないんだと、当たり前だけど気が付いて、なんだかホッとした。

そして運命の(笑)11月5日、あまりにも幸せで、そんな人生の諸々が良い意味でどうでも良くなってきた僕は「【MLC】はじめてのnote…なぜだか今日はそんなことがどうでも良くなってきたので」を書き始めたわけである。(よろしければ、過去の分も読んで頂いて「スキ」って言って頂けると僕は嬉しい)


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真昼間のダンディ
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