被災家屋に居たおばあさんの話
珠洲市内(ほかの地域でもそうだが)ではお家の玄関や勝手口にカラフルな色のついたステッカーが貼られている。
これは地震により被災した建築物について、倒壊や落下等の危険性を判定して、その結果を示した「判定ステッカー」と呼ばれるものだ。
今いる仕事場の近くにはいくつも家屋があり、きちんとステッカーも見える。
そのうち、倒壊・傾斜はないが、屋根はブルーシート、壁にはひび割れもあるお家がある。玄関には黄色の「要注意」というステッカー。
こちらに赴任した日の朝、玄関からはおばあさんが出てきて作業していた。お一人で。ほかには人が見当たらない。
仮設住宅に移っていて、もう住んでいないかもしれないが、わからない。
次の日の朝は玄関が開け放たれていた。
3日後の朝、またおばあさんが一人で作業していた。
しばらくして知り合いの人だろうか。軽トラックが止まっていて、役所関係の人が声をかけていた。しばしの談笑のようだ。
軽トラックが過ぎ去ったあと、佇んでいたおばあさん。玄関の黄色ステッカーに一瞥し、気のせいか項垂れて引き戸を引き、ゆっくりと家に入っていった。
ほかに人が居ないのだろうか、あの家に住み続けているのだろうか、そんな考えが止まらない。。
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