撮影を前にしてあらためて思う。紙の本である理由とは?
明日から新刊の撮影に入ります。めっちゃ久しぶりでワクワクがとまりません。
料理本を作っていると、撮影がクライマックス! となるので、この日を目指して料理家さんがんばる、編集者はあれこれあれこれ仕込みしてがんばる、おー! な気分です。
いや実際のところ、今まで原稿として読んでいたレシピが形になる調理工程を見ながら、完成品を盛り付けて、スタイリングしつつカメラマンさんがパシャっとした直後の、画像を見せていただいく時のワクワク、興奮度ときたらそらもう!
誰もがわっ! と声を上げる瞬間で、料理する人みんなに体験いただきたいと思うくらい。
編集担当の私は、そんなワクワクな一連を一緒に楽しみつつ、俯瞰する目を忘れないようとことん冷静になる必要があります。
誰よりも詳細に制作工程を見守り、ときに質問を挟みながら、こちらの希望を伝えながら見せていただきつつ、よし! と心の中で拳を握りながら現場の進行管理に徹します。
また、撮影時の試食も大きな仕事。
レシピを見比べながらの工程チェック、レシピ通りの味なのかの確認はもちろん、最終的にはおいしいかどうかといった感覚的なことも含めてスタッフみんなで共有します。
なんてもったいぶって言ってますが、要するに全部食べるんです。広告ではないので、ちゃんと食べて確認します。
(えへへー食べたいでしょー?)
そんな嵐のような撮影期間を終えると、いよいよ始まるのが、第4段階。
え、第1とか第2、第3ってある? て何それ、長くない?
…ですね。
これは私の場合です、他の編集者の考え方は違うかもしれません。私にとっては今が第3段階で、撮影前後の期間のことを指します。
また期間といっても、それが1日なのか1か月なのか1年なのかも、ケース次第です(版元によるとも言えるかなあ)。料理本の場合、1年もかける(かけられる)のは、プロ料理人向けの専門書で本の価格が高額なもの、あるいは季節を追うような特別な本だけになるでしょうか。
多くは長くて半年、短いと4か月以内ではないかと思います。
では、それぞれの段階で何をしているかというと、
第1が企画の精査、テーマの決定
第2が台割(本の設計)決定と制作スタッフへの依頼、ラフ案の作成
そして第3の今である、
撮影前後の仕込みと撮影当日
となります。場合によっては、第2段階をもっと分解して、2と3に分けるのもありで、最終的には第6段階ぐらいまでになるでしょうか。今の私のフリーランスという立場からすると、今回は第5段階の途中ぐらいでお役御免になりそうです。
でもね、誰がやっても本作りにおいては第1段階が肝のキモ。ここでちゃんとしておかないと、どんなにいい写真が撮れても売れるものになりません。
料理本は、文学作品やビジネス書と違って、読ませる部分と写真・スタイリング・デザインの部分がセットになっています。
読ませるとは、レシピの前に書かれている説明や著者のコラムだったり、解説ページだったりするわけですが、料理本は写真のクオリティがあって当たり前の本です。よく「写真集みたーい」とレビューをいただきますが、それは裏返せば、「写真(あるいはデザイン)しか響くものがなかった」ととることもできます。
今回の本は、この第1段階にかなり時間をかけました。詳細は別の機会にお知らせしますが、きっとよいものができる予感しかないです。
とはいえ、世の中すべての商品というのは、そのようにしてできているのではないかしら。本は流通が特殊形態をとっていることもあり、出版社だってメーカーだよという大事な部分が忘れられがちなんですが、本だって立派な商品です。
思いついてパパッと、では狙ったターゲット(読者層)に響く本にはならない。いかに情熱をのっけるか、表現するか。
なんてことを日夜考えて動いています。
発売日は10月中になると思います。また告知しますので、ぜひ応援よろしくです!
それにしても、本作りって、ほんと、非効率的だなあって思います。
手にとった人がハッピーになることを目指して、多くのプロが関わって、必要とする人に手にとっていただける本ができるというのが私たち紙媒体編集者の言い分ですが、本当にそれだけでいいのか?
もはや本という商品を売り出す理由が見つからないネット社会です。情報だけならネットで十分、むしろそっちのほうが多くの人に手が届くし、稼ぎやすい。
「料理本が好きなんです!」なんてセンチメンタルなことを言ってる場合じゃなくて、共感をいただけるよう理を磨けよ自分、です。
どうぞみなさまご教示ください、なぜ紙の本? 必要か不要か?
ありがとうございます。新しい本の購入に使わせていただきます。夢の本屋さんに向けてGO! GO!