お弁当本トレンド2021は「がんばらない」「飾らない」「作り込まない」の3ナイ弁当
毎年1月になるとぼちぼち現れ始め、2月も後半になるとぶわっと、そして3月中旬までにピークを迎える出版物は…? なーんて謎掛けしたところで、毎年3月は大量の書籍・雑誌が出版されるから、言われなきゃ気づかないジャンルかも?
とか言っても、きっと皆さんおわかりですね。
こたえは、お弁当本。
新学期や進学をきっかけにお弁当作りを始めるものですね。
でも、春からのお弁当作りのことを思うと「不安…」とうつむくお母さんが多いのも知っています。
だからなのか、コロナ禍でこれ以上のストレスはノーと叫ぶ人が大半だったからか、2021年は「がんばらない」「飾らない」「作り込まない」3ナイ弁当本が主流です。ガツンと豪快か、品数は少ないけれども繊細か、の両極といってもいいかと。
がんばらないお弁当本しかいらない
一時期流行ったキャラ弁のような、高度な手作業が必要なお弁当はもはや過去のものになってはいますが、それでも、毎朝ちゃんと起きて、栄養バランスを気にしながらも見栄え良く、衛生面に細心の注意を払って仕立てるお弁当だなんて……
ほら、こうして書いただけでしんどそうな気がしてしまいます。
そんなわけで、このところのお弁当本は、例えば、心の声そのまんまがタイトルになったYouTuberにぎりっ子さんの『頑張らないお弁当 おかずは1品でも大満足』(KADOKAWA)。
帯には「作っただけでほめて欲しい」の言葉。
うん、そうだよね、「ヘトヘトな朝」だってへっちゃらな簡単おいしいレシピが154品あれば、なんとかいけそうな気がする、という読者の声が聞こえてきそう。
実際のところ、こんなに彩りきれいじゃないけれど、おかずは1品だけ+白米なんて昼食は、テレワーク中は当たり前だものね。お弁当箱に入れるからって、なんで急に「彩り」なんて気にしなきゃいけないの? てなもんだ。
息子さんのお弁当を20年以上作り続けたという上島亜紀さんの『らく弁 メインのおかずは10種類だけ!』(主婦と生活社)はもっとストレート。
上島亜紀さんといえば、過去には『決定版! ラクラク作れて、男子も女子も喜ぶ! 中高生の大満足弁当300』(ナツメ社)という大量レシピ数を誇る本もありました。
そんな経験を経てたどりついた「おかずは10種類」だとしたら、絶対的な信頼感しかないじゃないですか。
このお弁当を食べて元気に育った実例も
家から離れてはじめて社会に放り込まれる新入園児のお弁当ならば、「かわいい」とか「好き」「食べたくなる」「食べきれる」を最優先にしたい。
2003年に出た本ですが、今も現役で版を重ねている上田淳子さんの『3歳からのおべんとう』(文化出版局)は鉄板ですよね。
お弁当というと、Instagramでは人気コンテンツだからか、多くの盛り付けは映え優先。ついつい生野菜で飾りたくなる気持ちもわからなくはないのだけれども、やっぱりね、衛生的ではない。
そういう意味でも本書の安心感。
かわいい食事はおうちで、作りたてで味わってもらうのがいいと思うの。
話は脱線しますが、上田淳子さんが作っていた双子男子の息子さんたちが母の料理を実況&解説するインスタライブが最高で。今はYou Tube「上田家」にまとまってしまってますが、ライブでは双子ならではの息の合った掛け合いが最高だったのです。
『3歳からのおべんとう』を食べてこんな大人になったと思うと感慨深い人も多いはず。大ファンの私です。
モチベアップも必要だから、プロの繊細なお弁当本
て、話をもとにもどして、と。
実用一点張りの家での手作りならではのお弁当は安心安全で、栄養満点ではありますが…
一方で、「でもさー、作り手のモチベーションアップのためにもさー、目に嬉しいお弁当がー」という声が聞こえてきそう。
わかる!
何を隠そう、私自身が娘のお弁当作り7年間で燃えに萌え、勢い余って就職してからも私が「作りたくて」「好きで」続けてしまったぐらい、ちょっとしたお弁当マニア。
お弁当箱コレクションは、人に誇れるぐらいの数を所有してます。(←何の自慢)
だから毎年、お弁当本シーズンになるとついつい何冊も手にとってしまうのですが、そんな中でも、今年も表紙だけで購入を決めてしまった本があります。
こちら、尾崎史江さんの『食堂いちじくの精進弁当』(立東舎)。
経木の折り詰めに、端正に詰められた精進料理が美しくて。
精進料理ですから、動物性たんぱく質なし、その約束事や旬の食材の香りや味を引き出す作り方、下準備や詰め方、バランスなど、隅々まで心配りのきいた構成になっています。
四季のお弁当はこれだけで十分かも。
実は気になりつつまだ購入していないお弁当本が2冊。
ロケ弁で有名な山本千織さんの『チオベンの作りおき弁当』(PHP研究所)と、おなじくケータリング弁当で人気という麻生要一郎さんの『僕の献立 本日もお疲れ様でした』(光文社)。
山本千織さんのお弁当本2冊は持っているのになあ。
『チオベンの揚げもの煮もの』(KADOKAWA)と一緒に買おうと思いつつまだ店頭で出会えていないのです。
『僕の献立』も同様。
出会ったら買う、と決めてたらすでにずいぶん経っちゃった。
こうしたプロのお弁当本は、本格的に再現するには調理の腕も詰め方のコツも段取りの良さも必要になるので万人向けではありません。
それでも、私のようなお弁当作り好きとしては、ぜったいになくてはならない本。
しげしげと眺めては妄想して台所へ立つ起爆剤として最適な教科書ですし、料理本ならではです。
バクダン級! 藤井弁当の威力
そんなわけで、プロの著書以外は、お弁当本の流行りとしては、「3ナイ」方向に落ち着いている2021年。
そうなったのも、2020年のレシピ本大賞準大賞受賞作、藤井恵さんの『藤井弁当 お弁当はワンパターンでいい!』(学研プラス)が大きく影響しているのは間違いないでしょう。
映えなし、おかず3品以内、ワンパターン万歳。
あれこれ考えるのは禁止! とばかりに卵焼き器ひとつでおかず3品を流れで作って、詰め込んで、「はい、行ってらっしゃい!」。
コロナ禍の自粛で家にいたって、このワンパターンにお昼作りが救われたって人も多いはず。
お弁当界のみならず、家庭のお昼ごはん界での大発明の一言だったんですねぇ。
そういう考え方をわかりやすく提示できた本はロングセラーになる。
それは料理本に限った話じゃありませんね。
時はちょうどこのシーズン。
今年の料理レシピ本大賞一次選考も始まりました。
これから注意深く見守っていこうと思います。
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