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人軸で物が売れる・物を作る、美容界もインフルエンサーブランド時代に
今は「消費者が動く方に企業が動く時代」と言われている。実際、インターネットの時代となり、トレンドは雑誌やランウェイ以外の場所から生まれることも多い。ではどこから発生するかといえば、かつてトレンドがストリートから生まれたように、若者がたむろする場所から生まれるのだ。つまり、SNSである。
SNSではインフルエンサーと呼ばれる人々がこれを率いている。この言葉は単にフォロワー数が多い人を指すのではない、文字通り人を惹きつけて影響を与える人のことだ。この影響力は「私もこうなりたい」という憧れになったり、「この人を参考にしたい」という信頼を得たりすることとなる。
話を戻すが、メイクのトレンドも雑誌やランウェイと別の流れが生まれている。その一つがSNSを中心とした韓国コスメや韓国メイクのトレンドだった。韓国のアイドルを好まない若者であっても、コスメ好きが発信する物珍しいティントリップやクッションファンデーションに惹かれ、または日本人には発想すらなかったノーチークや平行眉などのメイク方法が流行ったのだ(この波は今は落ち着き、一つのジャンルとして進化・定着した)。
こういった情報を持つ、物知りなインフルエンサーの情報は瞬く間に拡散され、大量に物が売れた。韓国コスメの有名インフルエンサーといえば、韓国人でありながら日本語で発信するYoutuberの会社員Aが代表的だ。彼女が紹介するものはとにかく売れるため、新大久保などでも「会社員Aちゃんが紹介」というポップをほとんどの店舗で見ることができる。
人軸で物が売れるということは、物を「作る」人も出てくる。一番有名な例でいえば、アメリカの有名セレブ、カイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)のコスメブランド「カイリーコスメティクス」だ。大規模なオフライン展開などを行わないにも関わらず、彼女は18歳で立ち上げたこのブランドで史上最年少、21歳でビリオネアとなった。
アジアの先駆け的な存在は韓国人メイクアップアーティストのPONYだ。日本や韓国のみならず、東南アジアや中国でも絶大な人気を誇る彼女は「ポニーエフェクト(PONY EFFECT)」というコスメブランドを持つ。ベースメイクからポイントメイクまで幅広く展開するこのブランドは、日中韓、東南アジアなど幅広い地域で展開している。
人軸で物を売るのは韓国だけの流れではない。特に信頼する人からの口コミを重視し、企業の広告があまり効果を発揮しない中国ではこの流れが顕著だ。アリババの中国ナンバーワンEC「Tモール(T-mall)」が3月に発表したビューティアワードでは、KOLコスメという部門があり、そこに入った「俊平(JUNPING)」は俊平大魔王という男性の美容インフルエンサーのスキンケアブランドだ。様々なブランドのアイテムを紹介する動画などがうけて、ウェイボーでは800万フォロワーを持つ。中国では男性美容家はめずらしくなく、信頼の対象となっている。
また1200万フォロワーを抱える张沫凡MOMOの「Mo Amour(美沫艾莫尔)」もスキンケアブランドだ。両者に共通するのは自分のブランドを持ちながらも、他社のアイテムも紹介し、公平にレビューすることで信頼を得ているというところだろう。
さらに東南アジアもまだ少ないものの、インフルエンサー的芸能人が立ち上げたブランドがある。例えばフィリピンの「シーコスメティクス(SHE COSMETICS)」は女優やタレントなどマルチに活動する、クリス・バーナル(Kris Bernal)自ら立ち上げた。
また韓国ではPONY以外にも、最近立て続けにインフルエンサーコスメがうまれている。日本でも雑誌で巻頭特集されるなど人気が高く、インスタグラムで160万フォロワーを抱えるモデル、カン・テリはコスメブランド「シリー(CILY)」を立ち上げた。韓国だけでなく、今秋からは日本展開も行う。
また日本の若者に韓国女子のトレンドが流行るきっかけとなった“オルチャンスタイル”のインフルエンサー、ホン・ヨンギもコスメブランド「ミルクタッチ(Milk touch)」を立ち上げた。両ブランドとも、インフルエンサー自身への人気のみならずコスメ自体のパッケージデザインや世界観の作りこみに力を入れており、ブランドのファンも生まれつつある。
見渡せばインフルエンサーコスメは取り上げきれないほどの数になっており、アマゾン(AMAZON)がレディー・ガガのコスメを専売したり、LVMH系列の「セフォラ(SEPHORA)」がリアーナのコスメを手掛けたり、さらに日本でもベイクルーズが人気インフルエンサー石田一帆のコスメとウェアのブランド「ラポドゥジェム(la peau de gem.)」を手掛けるなど、大手もこの事業に手を挙げている。
しかし、どのブランドもただ「人気」で「フォロワーの多い」人の名前を借りるなどの形式的なものではなく、実際に影響力がある人が、ブランドへの思いとストーリーを持ち作り上げている。今後こういった人軸のブランド作りは加速しそうだが、基本としてこの人の「熱」があり続けることは変わらないだろう。
(臼井杏奈 / AnnaUsui)