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星野源『不思議』結婚って不思議ですよね

やっぱり星野源は歌がうまくなっている!!
FNS歌謡祭で「SUN」を歌うのを聴いて確信した。リリース当時と全然違う。

3,4年前、確か子どもの質問に答えて、「僕ももっと歌がうまくなりたいから練習してる」と言っていた。地道に研鑽し続けてきたんだろうなあ。感動。彼は私と同世代だ。希望を感じるし、身がひきしまるな~。

そして「不思議」って本当にいい歌ですね~。しみじみ。

彼の代名詞といえば『恋』ですよね。それ以来、「家族」って彼の歌の大きなテーマのひとつだと思う。
もう少し詳しく言うなら、
「古い家族観を解体し、新しい家族観を模索する等身大の姿」というか。

『恋』(2016)では、

「意味なんてないさ ただ暮らしがあるだけ」
「夫婦を超えてゆけ」
「二人を/一人をこえてゆけ」

と歌い、甘やかな恋と乾いた結婚生活とを対照させて、どちらの既成概念からも突破をめざした。
『Family Song』(2017)では、

「出会いに意味などないけれど血の色 形も違うけれど 
 いつまでもそばにいることが できたらいいだろうな」

と歌い、血がつながっているとか「父・母・子ども」など従来の形を超えて
「ただ 幸せが一日でも多くそばにありますように」
と願う相手が家族なんだよ、という家族観を示した。

自分がお母さんに、高畑充希がお父さんに扮し、藤井隆や細野晴臣、バンドメンバーらを子どもたちに見立てた音楽バラエティ『おげんさんといっしょ』シリーズが始まったのもこの年だ。 

「ドラえもん」の主題歌に使われた同名の歌(2018)では、

「落ちこぼれた君も出来すぎあの子も」
「拗ねた君も 静かなあの子も」
「機械だって涙を流して」

と歌う。これは家族の歌ではないけれど、

「背中越しの過去と輝く未来を 赤い血の流れる今でつなごう」
「僕らつなごう」
「何者でもなくても世界を救おう」

という歌詞には、昭和の作品であるがゆえに、人物造形・家族関係・友だち関係など、いずれもステレオタイプを含む国民的アニメに、彼なりの新しい見方を付与しようとしたふしが見受けられる。

コロナ禍で発表した「うちで踊ろう」(2020)では
「うち」とは home というより inside という意味だ、と説明している。
家にいられない仕事をしている人たちとも
「内」つまり心の中ではつながっているんだというメッセージ。
(安倍晋三さんが台無しにしてくれたが‥‥)

星野源は常に「当たり前」を解体して新しいものを模索してきた。

そんな彼が、自身の結婚とほぼ時を同じくして発表した『不思議』のテーマは、まさに「結婚」! すごく納得。
結婚なんて個人的なことだから、楽曲制作ではスルーしてもいいのにね~
歌にせずにいられないんだろうね。

ファンに対して、というよりももっと大きく
音楽に、表現に対して、真摯でありたい人なんだな~と思う。
あと、やっぱり普通に「マリッジ・ハイ」なところもあるんだろうな~ってニコニコしてしまう。

『不思議』も本当に彼らしい歌詞。
結婚したいほど好きになった気持ちを「不思議」と表現する感性はとても誠実だと思う。

「幼いころの記憶 今夜食べたいもの 何もかもが違う 
 なのになぜ側にいたいの 他人だけにあるもの」

ここだ! ここだよ。
私もほんとにそう思うもん。今でもそう思う。
今でも時々、昔の恋人とつきあってる夢を見る。
どの恋人とつきあっていても、夢の中では苦しい。
実家で暮らしている夢も、どこか息が詰まる。
目が覚めて、「あー 私の夫はこの人だ、これが現実だ」と思うと、本当に不思議で、そしてホッとする。ホッとする自分が不思議w
他人と、しかも、「他の誰でもないこの人」と側にいたいと思う不思議。
それが結婚。
そういう感覚を歌にできるって、なんてすてきなんだろう。

「つまづいて笑う日も 涙の乾杯も 命込めて目指す 
 やがて同じ場所で眠る 他人だけの不思議を」

人にはいろんな関係がある。
生まれて育った場所での家族や、家族とは分かち合えないものも分かち合える友だち。
恋だって何度もできる。まぁ結婚も何度もできるけど、「命ある限り同じ場所で寝よう、この人とだけ」という関係性ってやっぱり結婚だよね。
いや実際は違う部屋で寝たりするとしても(笑)。
結婚するときは、大半の人がそう思っている‥‥というか。少なくとも「結婚するけど寝るのは他の人と」とは思ってないはず(笑)

他人と同じ床で寝る。毎晩でも。
他人と家族になる。
人類、そうやって命をつないできたわけだが、個人として体験してみれば本当に不思議なことだ。

ちなみに
「つまずいて笑う」、「涙の乾杯」という言葉のチョイスがザ・星野源ですね。普通は「つまずいて泣く」「笑顔の乾杯」だけど、逆なんです。
これも彼がずーーーっと歌ってることですね。

「命込めて目指す」っていうのもすごくわかりにくい表現で、実は私、星野源の初期の歌ってまったく頭に入ってこなかったんですよね。日本語が独特過ぎて。滝沢カレンのインスタの文章より独特だと思うw

今も、「すごい表現だな!」と感心するところと「わかりにくすぎ」と思うところ両方あります。
でも、わかりにくさをゼロにしようとしないのも彼の哲学なんだろうな~~~と今は思っている。

「好きを持ったことで 仮の笑みで  
 日々を踏みしめて歩けるようにさ 
 孤独のそばにある 勇気に足るもの」

ここは、テレビでオードリー若林に語った内容そのものですね、これも普遍的な感情だよな~と思う。

世界で少なくとも一人、この人は私の味方なんだ
そう思える人がいることで持てる勇気。

あらためて、結婚おめでとうございます。

MVは羽田空港で撮影したらしいんですが
(開通前のビッグブリッジで撮影するBTSばりに派手な場所なのに、すごく静謐な雰囲気に仕上げてるのが日本っぽい!)

私の頭の中では
「正座して額を合わせて口づけしてそっと笑う」
とか
「地獄みたいな世の中で赤子に戻って抱きしめ合った」
とか
歌詞の描写は全部ガッキーで脳内再現しています!(笑)

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