教わる側から教える側へ
日本では新年度となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
私はこのたび、個人的に大きな節目を迎えました。
実はこの春より、ドイツの音楽大学でリュートを教えることになりました。
よもや30代のうちに(といってもぎりぎり・・)教官職につけるとは思ってもみませんでしたが、昨年秋のオーディションを経て、光栄にも選んでいただきました。
赴任地はヴュルツブルク(Würzburg)という町です。
マイン川の両端に広がるヴュルツブルクは、現在はバイエルン州に属しますが、一般的にはフランケン地方の中心都市といった方が通りが良いでしょう。フランクフルトからニュルンベルクを経て、ミュンヘンとを繋ぐ幹線上に位置しています。
そしてかなり歴史の古い町で、早くも8世紀のうちには司教座が起かれたこともあって、伝統的にカトリックが強い土地柄。
丘の上から町を見下ろすとこんな感じ。左端の古い橋が今なお現役です。
観光の目玉と言えば、まずは世界遺産にも登録されている、レジデンツ。
ドイツ国内にあるバロック建築の代表に挙げられます。
お土産には、ここ一帯の特産品として日本でも人気のあるフランケンワイン(Fränkische Wein)で決まりでしょうか。
おっと、観光案内の記事を書いてるのではなかったですね・・
↑ ヴュルツブルク音楽大学の公式サイト。
ここに書かれた内容を信用すると、ドイツで最も古い音楽家養成機関の一つであるとのことです。
音大の建物は、市内の数か所に分散して存在しているのですが、そのうちの一つはなんと、先ほどのレジデンツの真ん前です。
そのうち、レジデンツの中で演奏の機会があるかも?と、勝手に妄想しています。
生活の拠点は、これまで通りスイスに置くので、引っ越しの予定などはありません。
既に先月から、隔週でヴュルツブルクに通っています。
ドイツ国鉄が誇る、都市間連絡特急「ICE(インターシティエクスプレス)」に乗って。
↑ ICEの列車。各系統の営業距離が長いため、遅延が多いのが難点・・
バーゼルからヴュルツブルクまでは、片道で4時間半かかります。
でも自分は、鉄道移動は長時間であっても基本的に苦になりません。
(昔から結構、「乗り鉄」要素あり・・)
さて、ドイツの音大はスイスのそれとシステムが違うところが多くて、なかなか慣れないです。
前任教官からの職務引き継ぎ(実は先日してきたばかり!)にはじまり、職場の同僚となる他の専科の教官たちとのコミュニケーション、生徒たちとのコミュニケーション・・とにかく不安はいっぱい。
まあ誰しもこういう場に投げ込まれると、最初は順応するまでしばらくかかるでしょう。しかも自分は外国人です・・
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ヴュルツブルクの音大は、将来的にリュートの専科を設ける予定だそうです。
ギター科の学生たちを相手に、副科の楽器としてリュートを教えたり、小編成のアンサンブルを教えたりするのが当面の役割で、仮にリュート専科ができるにとしても、自分が学んだバーゼル音大のリュート科がそうであるように、リュートを含む様々な「歴史的な撥弦楽器」を教えるというのがメインの仕事になるでしょう。
とにかく、オールマイティなことを要求されている感じですね・・
「リュート」という名前で一口に括って良いのか躊躇するほど、実はいろんな楽器そして音楽のジャンルがあるのです。
教わる側から教える側へ・・とにかく手探り状態ではありますが、こうして選んでいただいた以上は、若い世代がもっとリュートに興味を持って、あわよくばその方面の演奏を真剣に志してくれるように導けるよう、出来る限りのことをしていきたいと思います。
まあこんな感じですから、今後はひょっとしたら、移動中の電車でこちらの記事を執筆するかもしれません。
これを機に既にご紹介したバーゼルだけでなく、ヴュルツブルクという町の存在も、心に留めていただきたいです。
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