あの子とあの頃の私
「やった~!雨だ~!」 お気に入りのレインコートに長靴を履いて、とびきりの笑顔で雨の中駆け出していくあの子。 「え~?!」と言ってその軽やかな後ろ姿に早く追い付こうと走り出す私。 今日は土曜日。 幼稚園は休み。 娘がジュースが飲みたいと言うので、近くの自動販売機まで買いに行くことにした。 娘に並ぶと 「急ごう。大雨になる前に帰ろう!」 私は娘の手を引き足を速める。
雨なんて外に洗濯物も干せないし、自転車でスーパーに買い物に行くことも出来ないし、いつもよりじめっとしていて空が薄暗くて憂鬱なだけだと目線を下げて思った。 (早く家に帰りたい。) そんな私と真逆の娘はワクワクした様子で 、キラキラした瞳を見せていつもよりハイテンションで話す。どっちかと言うとジュースを買うことよりも雨の中のお散歩の方が楽しそう。
「カタツムリ、いるかな?」 「水溜まりだ~。」 「この傘可愛いね。」
話しているうちに少しずつ思い出す。 (あ~私も小さい頃は雨が好きだったかも。新しく買ってもらった赤いレインコートと長靴…雨が降るのを楽しみにしていたな。)
(通学路で学校帰りによくカタツムリを捕まえたな。)
(悲しいことがあるとわざと傘もささず雨に濡れながら歌ったりしてた…大声で。あれはちょっと近所迷惑だったな。)
もう急ぐのはやめた。
ジュースを買い家に着く頃にはもう雨は上がっていた。 二人でジュースを飲み、おやつのマカロンを食べ終えて私が洗い物をしていると、やけに静かなので娘を探すと、窓を開けてじっと空を見ている姿が見えた。 (何をしているのかな?) 少し疑問に思ったが私はまた皿を洗い始めた。
しばらくすると窓の方から大きな声がした。「ママ~!来て来て!早く!」
「何?ママ今手が離せないの。ちょっと待って。」
「早く~!」
「も~、分かったよ。今行く!」
・・・
目に飛び込んできたものは、鮮やかなダブルレインボー。
「ママ、見て!虹が2つあるよ!」
雨上がりの空に虹を探す彼女はとても綺麗な心を持ってる。あの頃の私みたいに。 娘に幼い昔の自分を重ね合わせた。 私達はしばらく空を見ていた。
すっかり晴れた青空を。珍しい光景を。 虹はすぐに消えてしまうだろう。 でも私は忘れない。この日のことを。 何か大事なものを失いかけていた私の中に、娘が見つけてくれた虹を。 そっと描いてくれた雨上がりの空を。
#雨の日をたのしく #空#sky#rainbow#虹
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